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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
373/496

眠るゆうしゃと滅入るお嬢様

今回短めです。

 要塞都市……そう呼ばれる街にある大きな屋敷の中にある一室。

 元々客間として使用されているであろうその部屋はその屋敷の持ち主の性格を現しているのか、豪奢な飾りや調度品など存在はせず……あるのは大き目の衣装箪笥と簡素な丸テーブルと椅子一脚、そして客人が眠るために用意されたクィーンサイズのベッドだけだった。

 そして、窓から差し込む光は厚手のカーテンに遮られているのか、部屋の中は何処か暗く感じられていた。

 ……いや、暗いからこそベッドの上で眠る少女の様子をありありと周りに伝えさせているとも言えた。

 何故なら、今死んだようにベッドで眠っている獣人の少女はその身体からぼんやりと光を放っているのだから……。


 一方、別の客間の一室ではシストが椅子に座っており、彼女の斜め後ろではシトリンがメイドとしての本分を忘れていないからか目を閉じた状態のまま立っていた。

 こちらの部屋はカーテンが開けられているからか、窓越しに光が差し込み部屋を明るく照らし出していた。

 けれど、彼女の顔色は暗く……部屋を重苦しい雰囲気に変えてしまっていた。

 そんな中、部屋の扉が叩かれ……彼女が「どうぞ」と口にすると、扉が開かれ……中へと、この屋敷の主であるポーク将軍が入ってきた。

 そして、入ってきたのがポーク将軍であることに気づいたシストは慌てて立ち上がると頭を下げた。


「ポ、ポーク将軍ッ!? ご、ご苦労様ですっ!!」

「そんなに畏まらなくてもイイぞ、シスト殿」

「い……いえ、そういうわけにも行きません。仮にもわたくしは貴方様の屋敷にご厄介になっている身……ですので、この屋敷の主たるポーク将軍に敬意を払うのは当然のことです」


 シストはそう言うが、堅苦しいことが苦手なポーク将軍は困った顔をしながら頭を下げる彼女を見ていた。

 ちなみにシストの斜め後ろにいるシトリンはただ目を閉じて、その場でジッと立ち続けているだけである。

 そして、しばらく頭を下げてからシストは恐る恐る顔を上げ、ポーク将軍を見た。


「あの……ポーク将軍、お尋ねしたいのですが……」

「わかってイル。あの者のことだロ?」

「はい……、ソバさんは……目が覚めましたか?」

「いヤ、今日で十日目となるガ、目覚める様子はまったく無いようダ」

「そう……ですか」


 ポーク将軍の言葉にシストは顔を曇らせながらそう口にする。

 それを見ながら、ポーク将軍は問い掛けてきた。


「心配カ?」

「心配ではない……と言えば、嘘になります。けれど、あのかたはゆうしゃで、それも……貴方様から聞かされた話だと、異常過ぎる力を持っているかも知れないゆうしゃ……」

「ウム、そうだな。しかシ、そういう些細なことはドウでもイイと言っていたではないカ?」

「はい……、ですが、毎日部屋の中でジッとしていたら悪い方向に考えてしまっていて……」

「ふむ……そうダナ。ならば、しばらく振りに外にでも出てみるカ?」


 ポーク将軍の言葉を聞いて、シストはすぐに驚いた顔をしたが……すぐに険しい表情に変えながら恐る恐る訊ねてみることにした。

 何故なら、彼女は客分という立場ではあるのだが、いきなり助けてくれと言って身の安全の保証が出来るはずも無く……、軟禁に近い状態で置かれていたのだった。


「え!? ですが、わたくしは軟禁されているのでは……?」

「そうなのダガ、気が滅入ってしまってハ駄目だろう! と言うわけで、ゆうしゃアリスの様子を見に行こうではないカ?」


 そうポーク将軍は言うのだが、気が滅入っているシストは頷くべきかどうするべきかと悩み始めているようであった。

 だが、そんな彼女へと背後から声が掛けられた。


「……お嬢様、折角ですのでポーク将軍様のお誘いを受けてみてはどうですか?」

「シトリン……。そう、ですね……わかりました。ポーク将軍、案内をお願いします。それと出来れば……」

「わかっている。シスト殿の彼氏とも会いたいのダロウ? ゆうしゃアリスの様子を見てから案内するので、存分に会うとイイ!」


 言おうとしていることが当てられたからか、それとも面と向かれて言われているから恥かしそうにシストは顔を赤らめていた。

 そして、少し身支度を整えてから、彼女はシトリンを連れてポーク将軍に連れられ客間のひとつへと案内され、眠るアリスを見舞い……そのあとに数日振りに会うウボアと抱擁をするのだった。


 それから数日後……、アリスを包む光は徐々に弱まって行き……すべての光が収まりしばらくすると、彼女は目を覚ましたのだった。

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