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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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気絶してから

 ……目が覚めると、何時の間にかアタシはベッドではなく畳に敷かれた布団に寝かされていました。

 いったいどうしたのかと思いながら、起き上がるとそこは畳張りの6畳ほどの小さな和室でした。

 あれ? アタシついさっきまで、暴虐のエレクと戦っていたはずなのに……。

 そう思っていると……。


「目が覚めたようじゃな……」

「え……?」


 突然声がしたので、振り返ると一般的な巫女装束に身を包んだ狐の獣人が……あ。

 見覚えがある姿に思い出し、アタシは目の前の人物の名前を口にしました。


「キュウビ……。と言うことは此処は……」

「うむ、お主の心の中じゃな」

「戦いは……、暴虐のエレクはどうなったのですか?!」


 心の中ということは現実のアタシは寝てしまっているに違いありません。

 そして寝ているのは地面なのか、それとも何処なのか不安ですが……それ以上に倒すことが出来たのかが気になりました。

 だからそれを問い質すためにキュウビの肩を掴んでユサユサと揺らしました。


「ぬ、ぬおおおぉぉ~~っ!? こ、これっ! 揺らすでない!!」

「は――っ! す、すみません……」

「うぅ……、まだクラクラするぞ……。まあ、兎に角結論から言うとじゃな、お主が戦っていたエレクなる者。それは倒すことには成功したぞ」

「そ、そうですか……」


 キュウビの言葉にホッと息を付いてアタシは安心します。

 ですが、話はまだ終わっていないように感じ、待っていると話の続きが始まりました。


「お主が剣技でエレクは倒れた。しかし、お主も神気の使い過ぎで同時に気絶したのじゃが……そこにエレクの影から黒尽くめの存在が表れたのじゃ」


 そう言うと、アタシの目の前に丸鏡が置かれ……そこにそのときの映像であろうものが映し出されました。

 交差した傷跡から血を噴出しながらフラフラと倒れるエレク、そして同じようにフラフラとするアタシの姿。

 必死に立っていようとしたアタシだったけれど、最終的に倒れたのを思い出した瞬間……映像のアタシも見事に倒れてしまいました。

 それを見ていると、倒れたエレクの身体が作り出す影からズズズッと何か黒いなにかが這い出してくるのが見えます。

 アレは……人? いえ、人のかたちをしているけれど……ひとじゃない……?


「……お主もわかるか?」

「あれは……?」

「……わしにもわからぬ。じゃが、神気を纏ったお主だとしても……きっとあっさりと倒されたことじゃろう」


 その言葉を聞きながら、映像を見ていると……周囲を黒いなにかは見渡します。

 そして、一通り見渡し終えたのか……、突然エレクの身体を掴むと自らが現れた影の中へと引き摺り込んでいきました。

 それを呆気に取られながら、アタシは見ていましたが……黒いそれは更にアタシも影に押し込もうと考えたらしく、倒れるアタシのほうへと近づいて来ました。

 ……あれ? もしかして、アタシ……連れ去られました?

 そう思っていましたが、違ったみたいです。何故なら……。


『キサマ! いったい何者ダ!! それに……この者を捕えようとしているように見えるナ……』


 猪みたいな魔族……ついさっき、エレクと戦う前にアタシが助けた人ですね。その魔族がアタシと黒いそれの間に入ってきました。

 黒いそれはアタシとの間に入ってきた猪魔族に視線を合わせていましたが……何を考えたのかはわかりませんが、地面の中へと沈むように消えて行きました。

 そして、猪魔族さんはしばらくそこをジッと見ていたようですが……気を失ったアタシを担ぐと歩いていきました。

 そこで映像は途切れました。


「……なるほど、間一髪……と言ったところでしょうか?」

「そんなところじゃな。で、今お主は、あの者が用意した一室で眠っているところじゃな。ちなみにシストたちもあの者が保護してくれとるぞ」

「そうですか……。良かったです」


 ついさっき飛び出すように出て行ったので、シストさんたちが無事か気になってはいたんですよね。

 それじゃあ、とりあえずとっとと目覚めて彼女たちに色々と話さないといけませんね。

 …………あれ? けど、何でアタシは此処……と言うか心の中で話をしているのでしょうか? 普通に話すだけなら頭の中で出来るはずですよね?

 そう思っていると、半ば困ったような顔をしたキュウビがアタシを見ていました。


「あー、それはじゃな……お主が無理矢理神気を使ったから身体が完全に眠りに落ちておるからじゃよ」

「そういえば、ついさっきから神気神気言ってましたけど、それは何ですか?」

「簡単に言うとじゃな、神の気じゃ。本来なら神々が使うのじゃが……馬鹿高い魔力を持っているからか、それともどういう理由かはわからぬが、お主は人の身でありながらそれを纏ったんじゃよ」

「え? アタシはただ、エレクの真似をと考えながら行っただけだったのですが……」

「つまりは奴のそれも神気に良く似たもので、しかも下の下だった。というわけじゃろう」

「そうなんですか……」


 そういえば、エレクはアタシがその神気……を纏ったときに、驚いていましたよね。確か邪神がどうとかって……。

 そんなことを考えていると、キュウビは話を続けます。


「今回は緊急事態じゃったのじゃろうが、いくら神使であるわしの肉体を使ったとしても神気に耐えれるはずがないのじゃ。耐えることが出来る者と言ったら神の器か神そのもの。それぐらいしか纏うことが許されぬもの……それが神気じゃ」

「なるほど……つまりは、ハイパー化とかスーパー●サイ人みたいな感じと思えば良いと……」

「何というか訳の分かり難い上に、パチモン臭い名前を口にするのお主……。まあ、そんなところじゃ。

 で、現在は神気を纏って痛んだ身体を自然治癒行っていると言うわけじゃ。じゃから、今は死んだように眠っておけ」

「そういうことなら……わかりました。ちなみにキュウビ、あなただったらあの力をどれくらいなら負荷無く出せますか?」


 いや、だってこの力は切り札だとしても、使えたほうが便利じゃないですか?

 そう思いながらキュウビを見ると、半分嫌そうな顔をしながらムムムと目を閉じていました。

 そして、しばらく悩んでから……結論が出たらしく、アタシを見ました。


「……あ、あえて言うならば、神気に変える前の複数の属性魔力を纏わせた神気もどきを10分……というところじゃな」


 そう本人は恥かしそうに答えました。

 ちなみに恥かしいものなのでしょうかね?

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