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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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お嬢様が見た戦い(前編)

ちょっとシスト視点でアリスの戦いを別方向から語らせていただきます。

「すみません、一足先に街まで向かわせてもらいますっ!!」

「ソ、ソバさんっ!?」


 停車した馬車から外の様子を見ていたわたくしたちでしたが、突然切羽詰ったような声でソバさんがそう言うと、馬車を飛び出し街に向けて駆け出して行きました。

 いきなりのことで車中で呆然としていたわたくしたちでしたが、慌てて外へと飛び出しましたがソバさんは居ませんでした。

 いったいほんの一瞬で何処に消えたのかと思いながら御者席で呆気に取られているウボアをわたくしは見ます。


「ウボア、ソバさんはっ!?」

「え――え……?」

「ウボアさん、早く答えなさい。そして、お嬢様……少し落ち着いてください」

「え、あ……そ、そう、ね……。すぅ……はぁ……」


 シトリンの言葉でわたくしはかなり慌てていたということに気づき、少し落ち着くために深呼吸をすることにしました。

 ……数度ほど吸って吐いてを繰り返していくと、混乱していた頭の中が冷静になってくるのを感じ……ウボアを見るとわたくしと同じように深呼吸をしているのに気づきました。

 わ、わたくしもそんな感じに呼吸をしていたのかしら?

 そう思うと何だか恥かしくなってきて顔が熱くなるのを感じ……ウボアも同じだったらしく、恥かしそうに照れています。


「……コホン。お嬢様、兎に角今はソバさんが何処に行ったのかを聞かないといけないのでは?」

「そっ、そうでしたっ! ウボア!」

「は、はい! ソバさんでしたら、飛び出したと思ったら突然足元を光らせて……気づいたときには向こうのほうに走っていきました! いや、アレは走るって速度じゃない……」


 ウボアはソバさんの移動して行った方向を指差しながら、何かを思い出すようにしてポツリと呟きます。

 いったいどういう意味なのか首を傾げていましたが、直後――向こうから、ソバさんが向かったといわれる場所であり、街がある方向から甲高い音が響きました。


「な、何ッ!?」

「お嬢様、落ち着いてください。……じぶんが今から確認してきます」


 シトリンがわたくしを落ち着かせると、そう言って歩き出し始めます。

 ですが、わたくしはそんなシトリンの袖を掴みました。

 袖を掴まれたシトリンは驚いた顔をしつつも、わたくしに視線を向けます。


「……どうかなされましたか、お嬢様?」

「わ、わたくしも一緒に向かいます」

「いえ、お嬢様に何かがあれば、じぶんの責任となります。ですので、この場で待っていて――」

「お願いです、シトリン。わたくしは、向こうの様子を見なければならない……そんな気がします」


 またも勘、と言ったら終わりかもしれません。ですが、本当に見なければ行けない。そんな気がしてならないのです。

 ですが……、同時に見るべきではないとも感じています……。

 きっと、今まで通り逃げ続ける日々を送るだけなら、見ないほうが良いのかも知れません。

 けれど見たら、わたくしは……わたくしたちは先に進むことが出来る。そんな気がします。それに……、向かったソバさんが心配だということもありますし。

 そう思いながら、シトリンを見ると……迷った様子を見せつつも、折れてくれたのかわたくしを見ました。


「……わかりました。ですが、じぶんと同じくギリギリの辺りから見るようにしてください」

「わ、わかりました……!」

「ウボアさん、貴方は馬を落ち着かせるようにしてください。万が一何かが起きた場合にすぐに逃げ出すことが出来るために」

「わかりましたっ。どうどう、落ち着け落ち着け……」


 シトリンの指示にわたくしは頷き、ウボアも興奮する馬を落ち着かせるために優しく首筋を撫で始めました。

 撫でられて落ち着き始めているようで、鼻息が荒かった馬も少し落ち着きを取り戻して行きます。それを見ながら、わたくしはシトリンと共に移動を始めました。

 スタスタとシトリンは周囲を警戒しつつ歩きますが、わたくしは着ているドレスが重いからかやはり少し動きが鈍いです……。

 もう少し、軽い服装を着るべきですよね。

 そんなことを思いながら、ふぅふぅと息を荒げながらシトリンと共に音が響くところが見える場所に位置取りました。

 直後、向こうから甲高い音が再び響き渡りました。


「ソバさんっ! ……そ、それにあれは…………」

「お、お嬢様ッ!? しっかりしてくださいっ!!」


 何か巨大な武器を手にしたソバさんが敵へと接近するのが見え、その方向を見た瞬間――わたくしは身体がガクガク震えるのを感じました。

 黒光りした巨大な胴体、背中を見ないと分からない程小さい翼、凶悪なまでに太い腕……その姿を見たわたくしの脳裏には家族の……一族の悲鳴が、死体となり石と化した身体を砕かれる者たちの姿が思い出されて行きます。

 そして、乾いた唇が震えながら、ソバさんが立ち向かう相手の名前をわたくしは呟きました。


「ぼ、う……ぎゃくの、エレ……ク」


 直後、震えるわたくしとは違い、ソバさんは暴虐のエレクへと手にした獲物で腹を殴りつけました。

 けれど、ソバさんの一撃は暴虐のエレクには聞かなかったのか、笑いながらソバさんの身体を掴もうとします。

 逃げてください! 心でそう叫ぶわたくしですが、ソバさんは後ろへと跳んで掴まれるのを回避したようでした。けど、外套が掴まれたらしく……ソバさんの姿が露わとなりました。


「え――」


 キラキラとした金色の長い髪、見たことも無い服、それに包まれるわたくしやシトリンが持ち得ない豊満なもの、そして……お尻のほうから覗く同じく金色の数本の尻尾。

 その容姿にわたくしは目を奪われると同時に、驚きました。

 何故なら、どんな種族の魔族なのかと思っていたソバさんですが……獣人だったからです。

 更に……。


「――――貴様、ゆうしゃアリスだなっ!!」


 そう、暴虐のエレクの発した声がこちらへと届きました。

 ゆ、ゆうしゃ? しかも、ソバではなく、アリス……?

 色々あり過ぎて、わたくしの頭の中が混乱する中で、ソバさん……いえ、アリス……さん? は暴虐のエレクとの戦いを行っていました。

☆クラスター族の特徴その1

 クラスター族は死んだら身体は額の水晶と同じ材質へと変化していくぞっ!

 そのため、墓荒らしにもあったりするので、集落は一部の者しか知らないぞ☆

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