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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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荒野での昼食・調理編

 倒したアリゲードの前に立つフォードへとフォードの荷物を持ちながら彼女が近づくと、同じようにサリーも近づいてくるのが見えた。そしてその手には彼女が倒したモンスターのフェネークが握られていたわ。

 倒したのだからそのまま放置しておけば良いと思ったんだけど、サリーはある意味刺激的なことを口にしたわ。

 刺激的ってどんなことかって? んー……未知の食事っていうか、寄食ハンターって感じね……。


「フォード君、お疲れ様。それと師匠、そろそろお昼だと思うので食事にしようと思うんですけど大丈夫ですか?」

「ん。あんたらも凄いのね――え? 別に構わないけど……保存食を出せば良い?」

「いえ、丁度新鮮な肉があるので、それを食べようかと」

「えっ? サリーさん、こいつらって食えるんですか!?」

「……え、えー? だ、大丈夫なの?」


 驚きながら、フォードと彼女は2人してアリゲードとフェネークを見つめたわ。羽の生えた蛇の様な外見のモンスターと、鰐みたいな口をしたトカゲなモンスター……味がまったくイメージ出来なかったわ。

 けれど、サリーはあっさりと言ったの。これらのモンスターは獣人の国では比較的食べられる食材のひとつであると。

 未だ信じられないような表情をしながら、3人はそれらの食材を持ってその場から移動して腰掛けることが出来そうな大きさの石の辺りに向かったわ。


「調味料はカバンの中に幾つか入ってますし、薪も入っていますから焼くことは問題ありません」

「えっと、サリー? ちなみに何を作るのかしら……?」

「はい、こっちのフェネークは塩焼きとスープにします。それでアリゲードのほうは……大分筋とかボロボロになっていますから、ひき肉にした物をフェネークのひき肉と一緒に捏ねて焼きます」

「ああ、塩焼きとスープにハンバーグなのね」

「ハン……? まあ、よく分かりませんがそんな感じです。フォード君も黒パンを出しておいてくれますか?」

「わ、分かりましたっ」

「あと師匠は……≪飲水≫を使えるなら、この鍋に入れて欲しいのですが……」


 多分、ハンバーグって言葉じゃなかったんだろうけど、彼女が言ったのがそう感じたからサリーは頷いたみたいね。

 それを聞きながら、サリーが出してきた鍋へと少しだけ体内を循環させた魔力に『水』の属性を与えて、彼女は手から飲み水を作り出したわ。

 初めて使ってみた魔法だったけど、こういう荒野ではかなり重宝出来そうな魔法だと彼女は思ったわ。

 水が溜まった鍋をサリーに渡すと彼女は礼を言ってから、包丁を取り出したの。その包丁はよく見たら彼女が冒険者ギルド2階で初めて≪創製≫で作り出したアダマンタートルの甲羅で作った物だということに気がついたわ。

 サリーに聞くと、どうやら旅立つ前にギルドマスターが鞘に入れたそれを渡してくれたらしい。まあ……上手く切れるなら問題ないか。そう結論付けて、サリーが下拵えを終えるのを見ていたわ。


 下拵えを終えて、食べても良い部分と食べたらいけない部分に分けられた2つのモンスターの肉。それを見ていた彼女だったけど、サリーから食べたらいけない部分の処分を頼まれたので、とりあえずそれを持つと少し離れた場所で処分したわ。ちなみにこの国……と言うか冒険者の暗黙としてだけど、食べれない部分は地面に埋めて自然に帰すのが基本らしいんだよね。本当なら消し炭にしたほうが良いだろうけど、並大抵の魔力を持ってないと無理だろうしね。

 サリーたちのところに彼女が戻ると、サリーは腹を裂いたフェネークの切身3つにに塩と乾燥させた香草だと思う物を振りかけて、網の上に落としていたわ。網の上で焼かれたフェネークの切身からは香草の香りが漂ってきて、食欲をそそらせたわ。

 それが終わると、切り崩したアリゲードの肉とのフェネークの切身を包丁で軽く叩きながらミンチにしていったわ。ちなみに包丁よりもまな板代わりにしている岩がやばい音を立てていたけど、気にしないほうがいいわよね。

 サリーは信じられないという驚きに満ちた顔を一瞬したみたいだけど、気にしないほうが良い……というか包丁の刀身の色からして誰が作ったか明白だったからか、気にしない方向にしたみたい。

 赤色と乳白色の肉が混ざり合い、そこに軽く塩を振って砕いたチーズを混ぜて捏ね始めたわ。

 それをじっと見ていると、サリーが彼女に声をかけて鍋を掻きまわすように指示してきたの。蓋を開けて掻き混ぜながら中を見ると、野菜を刻んだ物とフェネークのブツ切りが放り込まれていて、何処か良い匂いを出し始めていたわ。

 鍋を掻き混ぜているとジュワッという音が聞こえたので、隣を見るとサリーが熱したフライパンへと平たく丸めた肉を入れていたわ。

 フライパンから脂が弾ける音が聞こえ、良く見ると肉の周りにぷつぷつと脂が弾け始めて肉の焼ける匂いが漂い始めたわ。


「チーズが脂代わりになってる? どっちの肉も脂がありそうに見えなかったんだけど?」

「いえ、アリゲードは赤くて硬く見えますけど、実は脂も赤いので硬く見えてるだけなんですよ師匠」

「へぇ……じゃあ、脂がいっぱいでジューシーになるって期待しても良いのね?」

「はいっ、期待しててください師匠。っと……師匠、鍋にこの調味料を入れてください」

「わかった。……けど、何か変なにおいね」


 サリーに渡された赤い色をした調味料を鍋に入れると、白く濁っていたスープが赤く変色し始めてツンとした酸っぱい匂いが中からしてきたの。王都ではまったく見なかったような色合いに少し顔を引きつらせながら、鍋を見るフォードを見つつ……美味しく出来るのだろうかと不安に思いながら、彼女は鍋を掻き回したわ。

 それからしばらくして、料理が完成してカバンから取り出した木の容器にサリーはそれらを置いたわ。

 黒パン、フェネークの香草焼き、ハンバーグもどき、そして……赤い色をしたスープがね。


「さ、出来ましたよ。それじゃあ食べましょうか、師匠、フォード君」

「え……ええ」

「い、いただきます……」

次回、実食!

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