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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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救いの手

「ぐはぁっ!!?」


 重たい拳がポーク将軍の腹を打ち抜き、衝撃が彼の身体を突き抜けていく。

 その衝撃により、腹の中が掻き回され……口から血が吐き出され、膝を突いた。

 そんなポーク将軍を嘲笑うかのように、暴虐のエレクは腕を振り上げる。


「さあ、貴様を殺してから反乱分子を排除するとするか。残念だったなぁ、我は先に進むことになるぞ?」

「くっ……! うご、ケ……動け……、わしのから……ダ」


 ポーク将軍は必死に立ち上がろうとするが、身体からは逆に力が抜け落ち始め……身体は地面へと倒れてしまった。

 そして、朦朧とする意識の中……ポーク将軍は自身へと迫ってくる拳を見ていた。だが、自分を覆う影に気づき――直後、ぶつかり合う音が聞こえた。


「――――。申し訳ありませんが、阻止させていただきますっ!!」

(くっ……? ダ、れだ……? いや、だれカは問わヌ。頼ム……街を、救ってクレ……)


 聞こえた声に、ポーク将軍は心の中で助けを求め……温かい光を感じながら、その意識は途絶えた。


 ●


 目の前の魔族と対峙をしましたが、やはり猪みたいな魔族の傷が気になったのでアタシは今の内にと考えて、《回復》を使い傷を癒すことにしました。

 大扇を広げて体内と大扇に魔力を循環させ……、軽く一振りすると温かな光が背後の魔族を包み込み、苦しそうな表情が和らぐのを感じました。

 ですが、対峙する魔族はアタシのその行動を好機と感じたのか雄叫びを上げながら突撃してきました。


「我と対峙していると言うのに余所見とは! それは我に対する侮辱! 死ぬが良いッ!!」


 突撃と共に拳を後ろに下げて、殺意を込めて一気に前へと突き出してきましたが……アタシとの間に突如土が盛り上がり、壁を作られました。

 ドゴンッ、という激しい音と共に土の壁へと巨人魔族の拳は吸い込まれていきましたが、土壁は打ち抜かれず……それどころか、衝撃がそのまま自分の返ったらしく巨人魔族は押し飛ばされていきました。


「ぬぅっ!? な、なんだと……!? 我の拳で、打ちぬけない……? 貴様、いったい何をしたッ!!」

「何って……、ただの《土壁》ですよ」

「なん……だと……? ククッ、魔法だったか……。なら話は早いっ!」


 そう言うと、巨人魔族は凶悪な笑みを浮かべると後ろへと跳んで距離を取ると……両の拳にグローブのような物をはめました。

 いったいなんだろうかと疑問に思いつつ見ていると、再び駆け出してくるのが見えました。

 それを見ながら、今度はこちらに近づけないようにするために《土壁》を少し先から出すことにしました。

 魔力をワンダーランドに込めて、『土』の属性を与えて解き放つと迫ってくる巨人魔族の足元へと《土壁》が飛び出しました。これで正面衝突か顎を殴りつけられるか出来ますよね?

 そうアタシは思っていましたが、信じられないものを目にしました。


「ふんっ、猪口才な!!」

「な――っ!? 砕かれた……? いえ、魔力が散らされた……?!」


 飛び出そうとしていた《土壁》に気づいた巨人魔族が地面を殴り付けた瞬間、《土壁》はザアッと砂へと代わり、飛び出すことはありませんでした。

 それを見てアタシは驚愕しましたが、すぐに理由を考えました。

 飛び出るのに気づいて砕いたのかと初めに考えました……ですが、そうではないと理解したと同時に砂になった《土壁》から魔力が感じられないことに気づき、《土壁》からは魔力が散らされたためにただの砂と土へと変化したのだと理解しました。

 ……つまりは、ついさっきこの巨人魔族がはめたグローブのような物は魔力を散らす効果がある。と言うことでしょうか? いえ、すぐに決めるのはいけません。


「だったら、これはどうですかっ!! 彼の者を燃やせ――《火炎》!!」

「無駄だッッ!!」

「ならばこれはっ!? 穿て――《氷槍》!!」

「無駄だと言っている!!」


 拳によって……炎が散らされ、氷が砕かれ、段々とアタシへと巨人魔族は近づいてきます。

 本当、こういうタイプの敵ってやりづらいですよね……!

 心で舌打ちをしつつ、目の前の敵の特性を見極めようとアタシは魔法を使います。けれど、グローブに秘密があるのか巨人魔族は魔法をすべて消し飛ばして行きます。


「いい加減、無駄だと知るが良い。…………さあ、もう後が無いぞ?」

「だったら、これで行きますッ!!」


 巨人魔族はアタシを挑発するようにそう言いましたので、アタシも挑発に乗ってみることにしてワンダーランドを畳み両手で構えると、一気に駆け出しました。

 狙うは、巨人魔族の胴体ッ!!


「はあああああぁぁぁぁっ!!」

「くはっ!? …………残念だったな。我には攻撃は通用しない。そして捕まえたぞッ!!」

「くぅッ! ――あ、危なかったですね」


 力を込めた一撃で巨人魔族の腹を殴りつけましたが、そいつには痛みというものが無いとでも言うかのごとく、笑いながらアタシを掴もうと手を伸ばします。

 ですが、間一髪の所で後ろの跳んで掴まれるのをやり過ごしました。ただし、代償として外套が剥がされてしまいました。

 アタシがそれに気づいたのは、驚いた顔をしつつも巨人魔族がアタシの外套を手に持っているというところでです。


「貴様は、獣人か? ……何故こんな所に…………いや、その容姿はアークが愚痴に出していた物と一致する!! 貴様、ゆうしゃアリスだなっ!!」

「……ばれましたか。けれど、それが何だというのですか?」

「アークの奴は貴様を八つ裂きにしたいと怒り狂っていたが、我も今戦ってわかった。貴様はちょっとやそっとでは死なない。だったら、好き放題に甚振れることが出来る! さあ、だから我を――このエレクを楽しませてみせよ!!」

「くそっ! この戦闘狂がッ!!」


 笑いながら走り寄ってくる巨人魔族……いえ、暴虐のエレクを見ながら、アタシは叫びます。

 きっとこの戦闘狂はアタシをボコボコにするのを期待しているのでしょうね!

 そう考えながら、アタシはどうするべきかを考えました。

 ……とりあえず、全身は物理攻撃無効といった感じの特性を持っていて、はめているグローブは魔力を散らす効果がある。そんなところでしょうか?

 問題はどう戦うべきか……ですね。

 心の中でそう思いながら、アタシは目の前に迫る暴虐のエレクを相手にしました。

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