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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
358/496

盗賊団

「そんな頭から外套スッポリと被っててもヒョロイような奴に頼ったって無駄無駄!」

「ってことで、先にそこのヘタレを殺してやるから指を咥えてみてなぁ!!」

「くっ!! そ、それ以上来るな!! お嬢様には拙者が指一本触れさせはしない!!」


 ゲラゲラと笑いながら、豚コウモリ魔族たちは青年へと襲い掛かりました。

 けれど青年も必死に応戦しようと震えを押し殺して、襲い掛かる豚コウモリたちを相手取ろうとしました。

 ですが……、豚コウモリの1人が握り締める棍棒が剣の腹に当たると、剣は弾かれて向こうへと飛んで行きました。

 握りが甘かったから飛ばされたんでしょうか? まあ、折れなかっただけ良いと思いましょう。

 けれど剣を弾かれた衝撃が手に残っているのか青年はその場で唖然としており、無防備となっていました。


「え、あ――」

「無防備すぎるだろぉ? そらっ!!」

「へ? ――おぐっ!?」


 豚コウモリの声に唖然としていた青年は顔を上げたが直後、棍棒の一撃が横腹に減り込み……青年は地面を刎ね飛ばされて動かなくなりました。

 そして、それを見ていた馬車から顔を出すお嬢様から布を切り裂いたような絶叫が放たれました。


「い――いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁっ!! ウボア、ウボアしっかりしてウボアァァァァァッ!!」

「お、お嬢様! 出てはなりませんっ!! 早く中に入ってください!!」

「いやぁ! 放してっ! ウボア、ウボアァァァァッ!!」

「ブハハハッ!! 弱いのに歯向かおうとするからこうなるんだよっ! さってと、次はお前だけどあっさり片付くだろうな」

「で、次はそこの馬車の中だ……ブハハハハハッ!!」

「早くしろよぉ。メインディッシュ味わいたいんだからよぉ」


 下品な笑いを上げつつ、豚コウモリが2人ほどこちらへと近づいてきます。

 とりあえず、アタシは2人でも十分と判断したんでしょうね……。

 ああ、うん……。何だか腹立ちますよね。


「アナタがた……、いったいどういうつもりですか?」

「ん? お、もしかしてコイツ……女だ!」

「ブハッ!? あいつら気づいていないから俺たちで好きに出来ちゃうんじゃないか?!」

「答えなさい。アナタがたはどういうつもりであの馬車を襲ったのですか?」


 アタシが女性だと気づいて、2人の豚コウモリは興奮していたみたいですがもう一度アタシが問い掛けるとキョトンとした顔をして2人で顔を見合わせていました。

 そして……。


「決まってんじゃねぇか! 俺たちは泣く子も黙るバットーク盗賊団!」

「欲しい物は殺してでも奪い、狙った奴らも問答無用で殺す。そんな残虐非道の集団さ!!」

「だから、女は観念して俺たちに弄ばれてから、奴隷にされろ!!」


 そんな感じに、ゲラゲラと笑いながら豚コウモリ……バットーク盗賊団の2人はアタシへと近づいてきます。

 そして、アタシに近づけてきた腕を掴むと……握り潰しました。

 直後、腕を握り潰された男から豚みたいな悲鳴が上がりました。


「ブギヒギャアアアアァァァァッ!!? う、腕が、俺の腕がぁぁぁァァッッ!!」

「ブ、ブハッ!? て、てめえ、いったいな――オグルッ!?」


 腕を潰された男が腕を押さえ蹲り、呆気に取られていたもう一人はすぐに激高しアタシへと振り向きました。ですが、顔をこちらに向けたと同時にアタシはソイツの顔に向けて拳を放ちました。

 拳は顔に減り込み、殴られた男はアタシの拳痕を残して倒れました。

 そこで漸く、他の盗賊団の団員たちもアタシの様子に気が付いたらしく、声を荒げてきました。


「なっ!? て、てめぇ、いったい何をしやがったっ!!」

「何って……抵抗しただけですよ?」

「抵抗、だと? おもしれぇ……だったら、完膚なきまでにぶちのめして抵抗する気力を無くしてやるよ!! お前ら、掛かれ!!」


 リーダー格であろう男がそう叫ぶと、アタシに向かって盗賊団は襲い掛かってきました。

 ゼブラホースに乗ったまま襲い掛かってくる者、地を蹴って襲い掛かる者、上空から襲い掛かろうとする者。そんな様々な者たちがおり、彼らは棍棒やナイフを手にしています。

 あー、これはあれですよね……。数で押せば倒せると思っている感じですよねー……。

 そんな迫り来る盗賊団を見ながら、アタシは溜息を吐きつつ……。


「《泥沼》」


 小さくそう呟き、密かに循環させていた魔力を地面に向けて解き放つと一瞬でアタシを中心に地面が泥濘始めました。

 突然のことに盗賊団は驚きましたが、すぐに飛び上がろうとしているようです……ですが、泥に脚や身体を取られて上手く飛び上がれないようでした。

 そしてそんな仲間たちの様子を見た空を飛んでいた団員は急降下で背後からアタシを狙おうと飛び掛ってきましたが……。


「「な――っ!?」」

「遅いです、《突風》」

「「ふげっ!?」」


 襲い掛かられるよりも先に空中に跳び上がると、驚愕な表情でアタシを見ていましたが慈悲深いアタシは彼らを《突風》を使って泥沼と化した地面に叩き付けてあげました。

 殺さないだけマシだと思ってほしいものですね……。

 そんなことを思いながら、地上を見るとボス格であろう馬に乗った男と目が合いました。

 アタシは普通に見ていただけなのですが……、何故か化け物を見るような表情で一目散に逃げようとし始めました。


「……逃がす。と思っているのですか?」


 誰にも聞こえないように呟きましたが、そんな雰囲気を感じたのか男はよりスピードを上げて行きました。

 だから、逃がさないって言ってるじゃないですか。


「《氷槍》」


 体内で魔力を循環させ、『水』の属性を与えて解き放った――直後、逃げようとしている男の目の前に地面から巨大な氷柱が飛び出し、逃げ道を塞いでいった。

 とりあえず、飛ぼうにも空間が狭いから上手く飛べないと思いますし……捕まろうにも高さはかなり高いです。そして、アタシが解除しない限り壊れる心配はありません。

 つまりは氷で造られた檻ともいえる代物です。

 「出せーッ」と叫ぶ声が聞こえますがそれを無視して、地面に降り立つと泥沼で動けない盗賊団を見ました。

 ……、とりあえず体力が尽きたら沈むでしょうね。

 ですが、生かさず殺さずという感じにしておけば良いでしょう。

 そんな風に彼らをどうするかを考えていると、馬車から従者の止める声も聞かずに飛び出す人物が居ました。

 ……というか、お嬢様ですね。


「ウボアッ! しっかり、しっかりしてウボア!!」


 お嬢様は倒れた青年に近づくと、彼を抱き締めて反応を聞こうとしているようでした。

 アタシも釣られて顔を覗きましたが……あ、これあかんやつや。

 ぐったりと顔を蒼ざめさせる青年の顔を見て、アタシはこれはマズいと心から思いました。

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