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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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逃亡

「こ、こいつ、我らに逆らうつもりか! おいお前! 至急、学者さまを連れて転移して王都にこのことを伝えろ!」

「はっ――はっ! い、糸よ、我らを彼の地へと誘え!」

「え、消えた? いったい何処に?」

「転移アイテムですっ、今頃2人は王都に辿り着いています!」


 転移アイテムなんてあるんだと思いつつ、多分王家御用達とかそういうVIP待遇の人だけが使えるアイテムなんだろうと思いつつ、剣を抜いて騎士たちは彼女たちを囲んだわ。

 ちなみに周りに居た人たちは関わりたくないといっせいに蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったわ。一応商人のほうも隙を見て獣人の国のほうに移動して行ったのが見えたわね。

 そして、フォードは顔を引きつらせて、サリーは焦りを見せつつ真剣な顔をしていたわ。もしかしたら、王都に飛んで行った2人が彼女たちのことを知らせて、ギルドとかから命令で情報を聞き出すのも時間の問題なのかも知れないわね。

 そう思った瞬間、彼女の行動は早かったわ。


「2人とも、ちょっと空跳ぶから注意してね」

「え? それってどうい――うおおぉぉっ!?」

「へ、ししょ――きゃあああぁぁぁぁっ!!?」

「なっ!? 何だあの力はっ!!?」

「「白か!」」


 彼女はサリーを抱き抱え、フォードの首根っこを掴むと脚に力を込めて一気に――跳んだわ。あと、下から聞こえたふざけたことを言った騎士たちにはお仕置きとして種火で髪をアフロにしておいたの。

 当然よね、見たんだもの。え、なにを見たって? んー……乙女の秘密かな? あんたも大きくなったら分かるわよ。

 そして、跳び上がった彼女は2人の悲鳴を聞きつつ、自身の背中辺りに≪突風≫を巻き起こらせて一気に獣人の国に向かって飛んだわ。上を見てそのことに気がついた人が居たけど、驚くよりも先に飛んでいったから何を言ってるのかは分からなかったの。

 しばらく……と言っても2分ほど経つとスピードも衰えて徐々に減速し始め……荒野のど真ん中に彼女たちは落ちたわ。


「ふう、ここまで来れば安心よね?」

「あ、ああ……って、なんだよそれはっ!?」

「師匠!? どうしてあんなことをしたんですかっ!!」

「え……えっと、まあ……少しだけ本気を出した結果……かな」

「そんなことを聞いてるんじゃありませんっ! なんであんなことをしたんですか!? あの人はあんなクズだけど貴族なんですよッ!」

「あー……うん、そう……なんだ。えーっと、えっとね……」


 荒れ果てた荒野のど真ん中で怒られるってどういう状況と思いつつも、あの髭チビデブを殴った理由を彼女はしどろもどろにどう言うべきか悩んでいたわ。

 だってそうでしょ? よく話す相手……多分、女友達なのかな……? まあ、サリーを凄く馬鹿にしている上に、本人が何も言えないからって調子に乗って図に乗り続けていたのよ。ついカッとなって殴ってしまったなんて言えないわよね。

 けれど、そんな空気をまったく読めないのがフォードだったらしくって、いかにも気がつきましたといった風にポンと手を叩いたの。


「ああ、もしかしてアリスはサリーが馬鹿にされたのが堪らなく嫌だったから殴ってしまったとか? って、そんなわけな――マジ?」

「な、ナンノコトカシラ」

「師匠……。ありがとう……ございます」

「だっ、だからお礼を言われる理由なんかないって言ってるじゃない! と、兎に角早く移動しましょう……で、ここは何処なの?」


 涙ぐみながらお礼を言うサリーに対して彼女は顔を真っ赤になっているのを感じながら、大声で否定して顔を背けたわ。いわゆるツンデレねツンデレ。ツンデレって何かって? とりあえず、野菜とかの一種とでも思えば良いと思うわ。

 それで、彼女の大声でようやく2人も周囲を見渡し始めたわ。3人が立っていた場所は……さっきも言ったけど、何も無い荒れ果てた荒野だったの。周囲を見渡していると、サリーが獣人の国の特徴を言ってくれたわ。

 獣人の国は緑が少なく荒れ果てた荒野が多い国なんだけど、水には事欠かないらしいの。何故なら突発的な大雨が多いため、低い地面に生える草花は流されてしまうからなの。

 荒野だけど、水には事欠かない土地。それが獣人の国の特徴だとサリーは言ったわ。そして……。


「この辺りは……多分ですけど、山を越えた辺りの雨が溜まって湖になる場所だと思います。でも変です……この乾き具合から見て、ここしばらくはまったく雨が降っていないようにしか思えません」


 ……なんだろう。凄く嫌な予感を彼女は感じたわ。こう……フラグが立った的な、ね。

ということで、唐突ですけど次から獣人の国編が始まります。

まあ、お偉い人ぶん殴ったらやばいですよね。

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