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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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トラブルの連続・2

「さて、それでは行かせてもらうッ!!」

「わたくしの風魔法を受けなさいなっ!!」


 声を上げながら、ダブルさんが二対の腕に1本ずつの計4本の剣を握り締めると、迫り来るモンスターへと駆けて行き、その後を追うようにしてパスタさんも駆けて行きます。

 それを見ながら、アタシは隣でジッとしているボルとライの2人組みに目を向けました。

 妙な気配を放っていますが……魔族じゃないみたい…………ですよね?

 一応《鑑定・極》はかけているのですが、何故だか認識が出来ません。どうしてでしょうか?

 そう思っていると、ボルさんのほうがアタシに声をかけてきました。


「……君は行かなくても良いのか?」

「はい?」

「彼らや兵たちははモンスターへと向かったが、君は行かなくても?」

「まだ行きませんね。……ああ、面倒臭いとかじゃなくて、モンスターがどんな感じのものが居るかを観察してからのほうが対処出来やすいと思いますので」

「なるほど……な」


 アタシの言葉に納得したように、ボルさんが頷きますが彼らも同じでしょう。

 そう思いながら、アタシはモンスターを観察し始めました。

 ゴブリンみたいな小鬼タイプのモンスターとスライムがメインとなっていて、蟷螂みたいな姿をした虫型のモンスターにオーガと思しき鬼の姿をしているけど理性の欠片も無さそうなモンスター。

 オーク……もいるみたいですが、パスタさんを狙って一目散に飛び掛っていましたが……逆に纏めて吹き飛ばされていました。

 空を見ると、フェネークの群れが飛んでいるのも見えます。……というか、あのモンスターって獣人の国限定じゃなかったんですね。

 他にも、ヘビにしか見えないドラゴン……所謂、東方の龍といった感じのモンスターが飛んでいるのも見えますが……兵士たちの様子を見る限り、今回は何時も以上に異常な状態になっているようですね。

 そう思いながら、再び視線を地上に向けるとダブルさんが高笑いしながら4本の腕を駆使して、群がるゴブリンもどきを蹂躙しているのが見えました。


「ははははははっ!! もっとだ、もっと楽しませろッッ!!」

『『GYAAAAAAAAAAAAA!!』』

「そうだ! その調子だ!! ぬうおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!」


 雄叫びを上げながら、ダブルさんは仲間を倒された怒りに燃えているのか飛び掛ってくるゴブリンたちに向けて剣を大きく振り被って斬りかかっています。

 ちなみに力任せに斬っているからか、ゴブリンはズバッと斬られると同時に地面に叩きつけられていました。

 何というか、力が有り余っている感じですよね。

 そう思っていると、別のほうでは大量のオーク相手にパスタさんが風魔法を使って相手をしていました。


『ブヒィィィィ! お嬢様キャラぁぁぁぁぁっ!!』

「何を言っているのか分かりませんけど、聞く必要なんてありませんわ! 何故なら貴方たちはここで死ぬのですから!! ――風よ、目の前の豚どもを吹き飛ばしなさい! 《突風》!!」

『『ブヒィィィィィィィッ!!』』

「今だ! 倒れている隙に攻撃せよ!!」

「「「うおおおおおおっ!!」」」


 鼻息荒く、パスタさんに飛び掛ってくるオークでしたが風で吹き飛ばされ……その隙に兵士たちが一斉に攻撃を与えて、行動不能へとしていくのが見えます。

 ちなみに煌びやかな衣装と杖を持つパスタさんの容姿は、黄緑色の髪をクルクルカール……いわゆるドリルにした気の強そうな一つ目の美少女といった感じでした。

 あれってサイクロプスとかそんな感じでしょうか?

 そんな風に思っていると、空中からフェネークと龍もどきが地上に向けて攻撃しようとしているのが見えました。


「これは、まだ気づいていませんね……。というわけで、観察はそろそろ終わりにして戦いに出てきます。それでは――」

「そうか……。ライ、行けるか?」


 アタシがそう言うと、ボルさんも動くことにしたらしく……隣に立つライさんに語り掛けました。

 するとライさんはコクンと頷くだけでしたが、動くようで……見ると黒い気が上がるのが見えました。

 というか、あれって……瘴気? いえ、むしろ……ティアのものに近い?


「ッッ!!」


 そう思い始めた瞬間、小さく息を吐くとライさんたちは一気に駆け出していきました。

 その速度は素早く、普通の人間が出せるような速度ではないとアタシは思いながら見ていました。


「あ……。いえ、今は空の敵です」


 迷いを振り払うと、アタシは空中から降下して来るモンスターたちに視線を合わせます。

 ……ここは一気に魔法で? それとも……。

 いえ、ここはあえて、あれを行ってみましょうか。

 そう考えて、アタシはワンダーランドを大扇型で呼び出すと……骨を固定している要を引き抜き、空高く投げました。

 すると、要を失ったワンダーランドは空中でバラバラになって飛び散りましたが……、直後ばらけた1本1本が光り輝き……変化が起こりました。


「さあ、新しい姿を見せてください! ワンダーランド!!」


 アタシが声を上げた瞬間、光り輝いていたワンダーランドの姿が剣の形となって浮いていました。

 その全てが朱金色に輝き、ロングソードだったり、刀だったり、大剣だったり、小剣だったりと様々な形を取っていました。

 その全ての剣がアタシが手を挙げた瞬間、宙を踊るようにして空の敵へと襲い掛かりました!

 ある剣は、振り下ろすようにしてフェネークの首を落とし、ある刀は力むこと無く一定の動作で縦一文字に龍もどきを斬り、ある曲刀はクルクルと回転して敵の間を通り抜けると方向転換して背後から切り刻んでいき、大剣は空中に衝撃波を生み出して大量のフェネークを吹き飛ばしていました。

 初めは気づいていなかった地上の兵士たちでしたが、ぼとぼとと落ちてくるモンスターたちによって漸く気づき、驚いた顔をしながら空を見上げていました。

 って、よそ見していたら危ないじゃないですか!


「ワンダーランド!!」


 アタシの掛け声に小剣が地上に向かって落ちて行き、無数に分散すると余所見をしていた隙を突いて兵士たちに攻撃をしようとするモンスターたちを穿っていきました。

 そこで漸く兵士たちも戦闘中であることを思い出したらしく、戦いを繰り広げて行きました。

 それを見てから、アタシは再び空中の剣を操り、空のモンスターたちを殲滅することにしました。


 ……ちなみに、このときの光景が色んな人の目に映っていたらしく、何時の間にか『ソードダンサー』とか呼ばれていることになっていたらしいのですが、アタシが知るのは大分後になってからでした。

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