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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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調査団と騎士

 朝食を食べ終えた彼女たちは荷物を纏めると、サリーの家から出たわ。彼女が山道のほうに目を向けると、両国を行き来しているであろう行商や旅人、冒険者が列を作りながら山道に向かって行くのが見えたの。

 きっと数日間、立ち往生していたのが一気に流れ始めているからだろうと思いつつ、フォードを見るとのんきに青空を眺めていて、サリーを見ると近所に住んでいる住民に挨拶をしているのが見えたわ。きっと、彼女が居ないときに管理をしてくれているんだと思うわ。

 そんなサリーをしばらく見ていると挨拶を終えて、小走りでこっちに戻ってきたわ。


「お待たせしました! それじゃあ、行きましょうか師匠、フォード君」

「別に良いけどさ、国境越えるときに手続きとか必要無いの?」

「そういえば……どうなんだ?」

「それについては問題ありません。元々国越えは特に問題されていません、犯罪者で無い限りは追われる心配も無いとワタシは記憶していますので」


 何処か緩い国境問題に心の中で苦笑しつつ、大丈夫だと言うことなので3人は気にせずに山道を歩くために列に並んだわ。

 山道の入口前では村の自警団だと思う青年2人が立っていて、彼らに対して軽く頭を下げると連れがサリーであることに気づいた彼らは軽く手を振って返事をしたわ。

 そして農村から山道を歩き始めると、初めは岩や石ばかりだった道だったけれど……徐々に地面に草が生え始めていたの。

 しばらく歩いて行くと、昨夜彼女が飛び込んだ魔物溜があった場所へと辿り着いたわ。昨日は暗かったし、いろいろと急いでいたから周りを見る余裕なんてなかったけど……明るくなっている今だからこそ分かる。これは……異常だったと。


「うわぁ……話には聞いてましたけど、これは凄いですね」

「まるで巨大なモンスターが暴れたみたいだな、いったい何が起きたんだ?」

「モンスターが暴れたみたいって言うのは同意しますけど、何だか凄く空気が新鮮ですし……花も咲き乱れていますよね」

「まるで天国みたいね」


 土地は魔物溜越しだったとはいえ、かなり荒れてしまっていたけど……それ以上にこの道の前の状況を知っている者が見たら別の場所ではないかと思うようになっていたわ。

 だって、目の前の光景は荒れ果てた大地ではなく、新緑が生い茂っていて何というかアル●スの少女が住んでいそうな山のようになっていたんですもの。アル●スの少女って何かって? んー、彼の世界の有名なお話よ。

 そして……空気も、どこか物悲しいような殺伐とした物ではなく……むしろ、清々しいほどに心地良い聖域と錯覚させるようなほどだったわ。

 そんな中、後ろからざわつく声が聞こえたの。振り返ると、煌びやかな装備に身を包んだ兵士……多分騎士だろうと思われる集団が人を掻き分けながら歩いてくるのが見えたわ。


「この場所を調べるために調査団が入る! 道を開けろ!!」

「なっ!? お、横暴だ!!」

「なんだと? 侮辱罪で連行するぞ!」

「うっ……。……く……くそっ!」

「……なにあれ?」


 正直言うと、王都で見た衛兵の人たちは人情に溢れるような感じの人が多かったのに、目の前で権力を振り翳している騎士たちは何というか……蹴りを入れたくなるくらいに彼女はムカついていたわ。

 そして、彼女の呟きを聞いたサリーとフォードの2人があの集団の説明を行ってくれたんだけど……呆れたわ。

 簡単に言うと、あの騎士団は調査団直属の一団らしく、その全てが貴族で構成されていて自分たちのお陰でこの国は分からないことを解明出来てると調子に乗っているみたいなの。

 しかも騎士団が騎士団なら、調査団の連中も……ね。


「うむ、ご苦労。それでは調査を開始しようか、チミたち山道の封鎖を頼むよ」

「「はっ! 了解しました!!」」

「おい、貴様ら! たった今からこの山道は調査団が調査を行うため、封鎖することとなった!! とっととこの場から立ち去れ!」

「そ、そんな! 待ってくれ!! 魔物溜が無くなって早く仕入れに行きたいんだワシらは!」

「仕入れだとぉ? どうせ貴様が手に入れてくる商品は汚らしい獣人どもの作った物だろう! この売国奴が!」

「なっ! なんだよあれっ!?」


 封鎖された道を通してくれと言った商人を騎士が怒鳴りつけて、更に殴りつけたのを見て、フォードは信じられないといった表情を取ったの。正直、彼女も呆れてものも言えなかったわ。

 でも自分たちに今は被害が及ばないからか、彼女は黙っていたの。ちょっと薄情だと思うけど……関わりたくない人種だったのね。

 けどその行動も空しく、獣人であるサリーに視線が行って……まるで汚いものを見るような表情をしたわ。その瞬間、サリーの身体が強張ったように見えたけど……多分気のせいじゃない。


「ん? 臭い臭いと思ったら、獣人が居るからかぁ? ……って、おいおい、よく見たらこいつは狂った研究者の子供じゃないか?」

「狂った研究者って言えば、あの馬鹿げた理論を出して、お隣さんが追放されたって言うあの伝説の?」

「ああ、チミはルドくんが馬鹿をやった結果産まれた子供なんだね? いやぁ、残念だったね獣人なんかと結婚して、チミを産んだ上に、狂った理論を発表して最後にモンスターに殺されたんだってね? いやぁ、残念残念」

「………………っっ」


 そうサリーを馬鹿にするように言いながら、調査団のリーダーであろう髭のチビデブと騎士たちが笑い声を上げる。その間、サリーは何も言わず俯くだけだったけど、歯を力いっぱい噛んで拳を握って……怒りを必死に抑えていたわ。

 フォードもその言葉にかなり苛立ちを感じているみたいだったけど、貴族とあってか手を出したら駄目だというのは理解していたようだったの。

 でも、彼女は我慢できなかったみたい。


「へぶっ!?」

「なっ! き、貴様なにをす――ぐはっ!?」

「いったいなにも――がご!」

「我らがいったいだ――ふんっ!」

「あ、ごめん」


 気がつくと、彼女は髭のチビデブと騎士たちを殴り飛ばしていたわ。

本気で殴ったら、ミンチの完成なので一応は自制をしてるアリスさん。


普通に国境渡れるはずだったのに、どうしてこうなったんだろうね……。

あと、どうしてこんなに手早く来れた理由は、本日投稿2本目で少しだけ出します。

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