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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
337/496

品種改良

 勢い良く空へと噴出す水を見ていたアタシですが、そろそろ戻るかと考えて回れ右をして――。


 ――ちょ、待つのじゃ! このまま放っておいたら、毒とか瘴気とかが水源に残ったままになるぞ!!

 …………あ。

 ――忘れておったよな? 今完全に忘れとったよな?

 き、気のせいですよ。わ……忘れているわけが無いじゃないですか……!

 ――ソウジャナー、オヌシガワスレルワケガナイヨナー……?


 きっと声だけじゃなくて人とかの形をしていたら、キュウビはきっと死んだような瞳でアタシを見ているでしょうね……。

 兎に角忘れていないですよ、アタシは忘れていt――いませんからね!!

 でも、どうしましょうか……初めは一度一気に浄化を使って周囲を綺麗にしたらいいでしょうけど……あ、それとあの集落で創った《聖命水》も混ぜるのも良い感じですよね。


「けど……、アタシが去った後も持続させるようにしたほうが後々にも良いですよね」

 ――そうじゃろうが、どうするつもりじゃ?

「そうですね……。湖の真ん中に樹とか水草とか育ててみたりしますか?」

 ――ほう? じゃが、樹とか水草と言っておるが、用意するための方法は……あったのう。

「はい、ですが……用意した後は抜かないようにとか色々と周りの集落にも言わないといけませんよね」


 キュウビと話しながら、アタシは不機嫌そうな様子のワンダーランドを一度水で洗ってから、ごめんねと言いつつ頭を優しく撫でながら、アタシとワンダーランドへと魔力を循環し始めました。

 魔力を循環させながら、頭を撫でられている白兎型のワンダーランドはブウ。と鳴きつつ気持ち良さそうに鼻をスピスピと動かしています。

 更に魔力を循環させるにつれて、ワンダーランドの白い毛並みは銀色に輝き始め……段々と光が強くなっていきました。

 そして光が最骨頂に達したところで、アタシはワンダーランドを掲げました。


「お願い、ワンダーランド! 穢れを祓え――《浄化》!! そして、水を浄化せよ――《聖命水》!!」

『ブウ!』


 格好良く魔法を唱えた瞬間、ワンダーランドから光は解放されアタシたちを中心に周囲を明るく照らし出しました。

 光に包まれたアタシの周囲の大地と湖はすぐに変化が訪れました。

 荒れ果てた砂地となっていた地面は段々と潤いを取り戻し始め、砂は土へと変わり……土の上にポンポンと音が出ているとでもいうように緑色の草が生えて来ました。

 そして、湖のほうでは少し濁っていた水面へと光の中から雫が落ちて行き、雫が落ちる度にその箇所から濁った水面が透き通っていきました。

 それを見ながら、アタシは懐から持っていた種を数種類取り出しました。


「<成長促進>……の前に、<品種改良>も行っておきましょうか」


 呟きながら、アタシはリアードが明赤夢に与えていた植物系の能力を利用することにしました。

 確かやりかたは……取り出した種を握り締めて、念じれば……。


 ~~~~~~


 アップの種


 あまみ  :5

 しぶみ  :1

 さんみ  :2

 からみ  :0

 かれにくさ:4

 はんしょく:3

 とくせい :なし


 説明:普通のアップの種。植えて数年掛けて美味しいアップの実をつける。


 ~~~~~~


 頭の中にステータスが表示されました。

 というか、こんな感じになるんですね。それとも、アタシが分かり易いようにそう表示されているのでしょうか?

 ……まあ、今は気にしてもしょうがないことですよね。そう考えながら、アタシは調整を開始してみることにしました。

 えっと、ここを動かしていけば……ああ、最大は10まで上げれるけれど、それはひとつまでで……しかもそれをすると他の上がりが悪くなるみたいですね。

 じゃあ……枯れにくいようにして、そして枯れたらすぐに新しい若木を増やせるようにするようにして……特性は……水生とか陸生とかの設定ですか。

 それに後は、《錬金術》で実に《浄化》が起きるように改良をして……っと。

 こんな感じですね。満足の行く仕上がりになった<品種改良(魔改造)>したアップの種をアタシは見ました。


 ~~~~~~


 ウォーターアップの種


 あまみ  :6

 しぶみ  :0

 さんみ  :1

 からみ  :0

 かれにくさ:7

 はんしょく:7

 とくせい :水生


 説明:品種改良されたアップの種。水のある土地でも育つことが出来る。実には何故か《浄化》の効果がある。


 ~~~~~~


「さてと、後はこれをどう植えるかですね……」

 ――もういっそのこと湖の中心に投げ込めば良いんじゃないかの?

「良いですね。それじゃあそうしますか」

 ――ぶぅえっ!? ちょ、ちょっと待つのじゃ! 冗談、冗談で言っておるからの!!

「大丈夫ですよ、大丈夫……ってことでそれ!」


 あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! と心の中で悲鳴を聞きながら、アタシは手に握ったアップの種を湖の中心に投げ込みました。

 ですが、中心に進むに連れてアップの種は芽を出し始め、水面に落ちた途端に一気に成長を始めました。

 アタシが何もせずに投げ込むと思いますか? 勿論、<成長促進>をアップの種に掛けて投げ込みましたよ。

 その結果、アタシの目の前でアップの種は急成長を始め、見る見るうちにアタシの背を越えて、森の国の大樹とまでは行かないけれどある程度の大きさの樹へと成長して行きました。

 そして、成長していったアップの樹は木葉を青々と生い茂らせ、木の葉の間に緑色の実を実らせて行きました。

 暫くして、漸く光が収まると……滾々と綺麗な水を作り出す湖の中心には巨大なアップの樹が生え、更に湖の周囲は草花が生い茂るという、心地良い空間に変化していました。


 …………あ、これやりすぎました?

 心からそう思いつつも、過ぎてしまったことは仕方ないと考えてアタシは一先ずその場で休憩することにしました。

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