表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
336/496

伐採の時間

 駆け出したアタシを狙うかのように、造水花は複数ある袋状の花弁からドロドロの水を玉のようにして撃ち出してきました。

 その水玉をアタシは右へ左へと跳ぶことによって回避し、湖へと近づいていきます。

 けれど、相手の攻撃は水玉だけではないようで、水玉を回避して進もうとしたアタシだったけれど……周囲の地中には造水花の根が張り巡らされているらしく、進もうとしたアタシの足に巻きついてきました。


「っ!? 根が張りすぎですね!!」


 怒鳴りながら足を引っ張って根を引き千切りましたが、放たれた水玉は回避できない距離まで近づいていました。

 接近してくる水玉に少しだけ焦りながら、水玉を防ぐためにアタシは大扇を広げた。その瞬間、水玉が大扇に命中したのかズシンと重い衝撃が腕に来ました。

 粘性のある水って当たると結構重いんですね……。それに、広げた大扇にまだベッタリと着いてますし……。

 まあ、払っておきましょうか。そう考えてアタシは大扇を振ると、付着した水玉はベチャリと地面に落ちました。

 そしてその間にも、造水花はアタシに向けて水玉を放ってきます。そういえば、あの水って毒あるんですよねー……。


「とりあえず……、燃やしますか」


 呟いて、アタシは素早く身体の中で魔力を循環させると即座にワンダーランドを通して『火』の属性を与えて、《火炎》を撃ち出しました。

 直後、アタシを起点としてこちらに迫ってくる無数の水玉に向けて巨大な火の塊が突き進んで行きました。

 火の塊が水に命中すると、水はジュッと音を立てて一瞬で蒸発していき、そのまま造水花へと向いていきます。

 そして、造水花もジリジリと熱くなってきているのが分かっているのか必死に炎を消そうとしているのが見えますが、焼け石に水のようです。そして……。


「あ、命中しましたね」


 アタシがそう呟いた直後、水玉を撃ち続けていた造水花は一瞬で燃え尽きました。

 これは炎が消える頃には消し炭しか残りませんね。

 そう思いつつ見ていると、地面に違和感を感じました。


 ――何だか、地面が脈動しておらぬか……?

 して、いますね……。あの、何だか嫌な予感がするんですが……造水花の特徴って知ってたりしませんか?

 ――あんな魔族の国近辺原産の花の特徴なぞ知るわけがなかろう。じゃが、何となく何が起こるかは……解るぞ?

 ああ、そう……ですか。アタシも何となく予想はしています……よッ!!


 キュウビと心の中で会話をしていたアタシですが、話を終えた瞬間に一気に地面から跳び上がり、上空に行った瞬間――地面から予想していた物が出てきました。

 ボコンボコンと音を立てながら、今燃やしたサイズの造水花とほぼ同じサイズの造水花が頭を出してきたんですよ……。

 株分け成功ですか、そうですか……。

 まあ、アレだけ地面に根を張っているのに1株だけなんておかしいですよねー……。

 心からそう思いつつ、上空から下にゆっくりと落ち始めると地上に頭を出した造水花は一斉にアタシに花弁を向けました。


「うわっ!? ちょ――っ! 一斉に向けるってありですかっ!? まあ、防げますけど!」

 ――焦っておる割には余裕じゃなー。

「うっさい、黙っててください!! っと、うわっ!?」


 素早くワンダーランドを大扇を広げて半円にしましたが、そこから更に広げて満月のようにするとアタシはそれを地上に向けました。

 直後、ドスンドスンと水が大扇に当たるのを感じましたが……それ以上に厄介なことが起きていることに気づきました。

 厄介なこと、それは粘性のある……まあ、剥がれ難い粘液がベッタリとついて行くと重くなります。そしてアタシは今宙に浮いています。

 結果、宙に浮いていたアタシは一気に地面に向けて落ち初めて行きました。――って、落ちる落ちるぅぅぅぅぅぅぅっ!!


「ごめん、ワンダーランド! あとで回収しますから!!」


 叫びながら、アタシはワンダーランドを手放すと妖精の靴に魔力を通して、空中を蹴って再び宙に飛び上がりました。

 ちなみに宙を駆け上がりながら見たワンダーランドは素早く白兎型に戻ると、《異界》の中へと飛び込んでいくのが見えました。

 そしてそのまま視線を違う方向に向けると、造水花がアタシにむけて水玉を撃ち出しているのが見えました。まあ、高さが届かずに放物線を描いて地面に落ちているのが大半ですけどね。

 そんな下からの水玉連続発射を見ながらアタシは考えます。


「とりあえずどうしますか……。いえ、まあ決めてはいますけど……ね。根も邪魔ですし」


 呟きながら、体内で魔力を素早く循環させると素早くアタシは下に見える湖を起点にして《泥沼》を使いました。

 直後、水の失われた荒地に水分が戻り始め……、水分はドンドンと増え続けて砂と土は泥となり、やがて泥は沼となりました。

 砂と土の大地に根を張っていた造水花は緩み始めていく大地に対応しきれず、ドンドンと斜めに傾き始めて沼の中へと倒れ始めていくのが見えました。


「これで大体の根も浮き上がっている……と思いたいですね。そして後は、一箇所に集めるだけ!」


 そう言いながら、アタシは再び魔力を体内で循環させると今度は《津波》を沼の外から内に向けて使いました。

 すると、沼の端が揺れ始め……その揺れは激しさを増して行き、最終的には波を造り出し始めました。

 その波は沼に溺れる造水花を一気に中心へと押し流し、辛うじて耐えている造水花も何度目かの波で流れて行きました。

 そして、アタシが見える範囲の造水花はすべて沼の中心に集まったのを確認し、アタシは魔力を再び循環させました。

 《泥沼》と《津波》を使ったときよりも、魔力を高めて循環させ……アタシは『火』の属性を与えるとそれを一気に地面に向けて解き放ちました!!


「吹き飛べ! 《爆炎》!!」


 叫び声と共に、《爆炎》は沼の中心を基点として一気に爆発をし始めました。

 ドゴンと爆発すると造水花が1株燃え上がり、ズゴンと爆発するとまたも造水花は1株燃えて行きました。

 根を焼き断ちながら、《爆炎》は地上を揺らして行き……造水花がすべて消し炭になっても爆発は完全には収まりませんでした。

 ……少し、やりすぎましたか?

 不安になりつつそう思いながら地面に降り立つと、ズズッと地面が揺れるのを感じました。


「まさかまた……?」


 不安そうに呟きながら、いったい何が起きるのかと身構えていたアタシですが……予想は外れたようでした。

 何故なら、暫く揺れが起きていたけれど……それは水が勢い良く地面から噴出した途端、ゆっくりと揺れは収まるのを感じました。

 どうやら、造水花が何かをしていたのか詰まっていたみたいですね。

 そして、アタシの《爆炎》でその詰まりが解消されたというわけです。

 結果的には、オーライという奴ですね。

 そう思いながら、アタシは勢い良く噴出す水を見ながら頷いていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ