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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
334/496

異常の原因

「お、お義父さん……大丈夫、ですか?」

「親父、身体に異常とかは無いのか? ……あ、いえ、貴女様を信用していないというわけではないのです」


 唖然としていたリーダー夫妻だったが、すぐに現状を認識して集落長が無事かと心配そうに問い掛けていました。

 ちなみにリーダーのほうは言った直後に、失礼なことを言ったと思ったのかアタシに向けて謝ってきました。

 まあ、それは普通の反応だと思いますよ? 回復して貰ったけれど、アタシが何者なのかわかっていない状況なんですから。

 そう思っていると、集落長が水瓶から水を掬うとリーダーたちへと差し出しました。


「お前たちもすぐに飲みなさい。そして、飲み終えたら他の者にもすぐに与えよ」

「え? お、お義父さん……?」

「親父?」

「早く飲め! 手遅れにならない内に!!」

「「――ッッ!?」」


 集落長の大声に驚きながらも、夫妻は差し出された器を取って中に入った水に口を付けたが……すぐに一気に飲み干しました。

 もしかすると、身体が無意識に求めている要素とかがあったりする的な感じでしょうか?

 いえ、創り出したのは自分ですけど、色々と不安になります。

 そう思いながら《識別》すると、器を口から放した夫妻たちの状態は『健康』となっていました。


「これは……」

「重かった身体が……軽く……」

「そういうことじゃ。早く他の者にも飲ませよ!」

「「は、はいっ!!」」


 集落長の言いたいことを理解したのか夫妻は急いで集落を駆け回り始めるために外へと出て行きました。

 それを見ていたアタシですが、集落長に呼ばれました。


「お客人、貴女が創り出した水はただの水ではないというのは分かります。何せ水を飲んだ途端……毒と得体の知れない何かに蝕まれていた身体が軽くなったのを感じたのですから……」

「身体のほうは何ともありませんか?」

「はい、ついさっきまでは息子たちの前で強がって痛みを堪えていたのが嘘のようです」

「そうですか……。あの、他の者とも言ってましたが……集落長様以外にも良く似た症状の者たちが居たのですか?」


 気になったのでそう問い掛けると、集落長は答えてくれました。

 何でも、若い者たちにはそれといった様子は見られないけれど、年老いた者や生後間もない者には目の下の隈や肌の血行が良くないように見えるといった感じの症状が起きていたらしい。

 その話を聞いていると、疑問に思ったことをアタシは聞いてみることにしました。


「あの、一人とか数名がそんな症状になるのは分かりますが……、集落全体でそんな風になることに思い当たることとかあったりしますか?」

「思い当たること……か」

「はい、思い当たることがあれば些細なことでも構いません。同じものを食べていたとか、全員で何かをしていた……とか」


 アタシがそう言うと、集落長は目を瞑り……顎に手を当てて考える仕草をし始めました。

 一分、二分と過ぎて行き……集落長は思い当たることがあったらしく目を開けました。


「ひとつ、あった……。しかし、それが間違いないのかは分からないがな」

「それでも構いませんので、教えてもらえませんか」

「ふむ……分かった。集落の者全員が口にし、更にはそれを与えた作物が毒を持ち始めたことから……井戸の水、それしか思い浮かばん」

「井戸水……ですか。えっと、見せてもらっても構いませんか?」

「構わぬ。とりあえず息子たちは……居らんかったな。どれ、ワシが連れて行こう、付いて来い」


 そう言うと、集落長は立ち上がりゆっくりとした足取りでアタシを井戸まで案内するために歩き出しました。

 道すがら集落を見ていると、ここで暮らす住人たちがフラフラとしながら集落長の家に向けて歩いているのが見えました。

 子供やお年寄りは親や若い者に付き添われながらでしたが、彼ら全員創り出した水を飲むでしょうね。

 ……一応足ります……よね? 少しだけ不安に思いながら、足りなかったらまた増やせば良いと頭の中で結論付けていると井戸へと到着しました。


「ここ、ですか?」

「そうじゃ。水は普通に溜まっているし、枯れている様子は無いから大丈夫だと思っていたのだが……」

「ちょっと失礼しますね。……よい、しょっ!」


 井戸の側に置かれた縄が結ばれた木桶を掴むと、アタシはそれを井戸の中に入れて……井戸水を汲み取りました。

 見た目は、少し土が混じっているのか汚いですが……料理をするときは一度沸騰させてから行うのが基本となっているらしいです。

 その話を聞きながら納得しつつ、アタシは汲み上げた水を《鑑定》し始めました。


 ――――――


 名称:井戸水

 説明:汲み上げたばかりの井戸水。このままだと土臭いので、沸騰させないと飲めない。

 成分:土、砂、微量の毒、微量の瘴気


 ――――――


 ……これは、間違いないですね。

 見えた鑑定結果に心からそう思いつつ、アタシは集落長を見ます。

 アタシの様子を見て、何かあったのだろうと思ったらしく集落長は向き直りました。


「どうしましたかな?」

「えっと……暫く、井戸水は使わないほうが良いと言わせていただきます。それと……、この井戸は何処の水源から水を引いているのでしょうか?」

「水源、ですか? それでしたら……」


 アタシの問い掛けに、集落長は答えてくださり……その話を聞いて新たに判明した事実は、周囲の村の井戸も同じ水源から水を取っているということでした。

 ……これは、水源に何かありますよね。

 嫌な予感を感じつつ、アタシは集落長に水源に立ち入るための許可を貰えるか訊ねましたが……どうやらそこは誰でも立ち入ることが出来るようでした。

 とりあえず……明日は水源調査、ですね。

 そう思いながら、アタシは集落長のあとに続いて、集落長の家へと戻りました。

 ちなみに家の前は、水を貰いたい住人が多いのかかなり人が多かったです。

あかん、すごく眠い……。

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