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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
333/496

集落長の家にて

 リーダーの案内で集落に入ると、アタシは初めに集落の藁葺きの家の中でひと際でかい家へと招かれました。

 そこは集落の中の身分が高い者が住んでいると分かるような室内で、椅子の上に老人が1人座っており……その後ろには介添え人と思しき女性が立っていました。


「おお、貴女が息子たちを助けてくれた方ですか?」

「結果的にはそういう風になりましたが、助けることが出来て良かったです」

「それでもです。本当に、本当にありがとうございました」

「主人を助けていただき、本当にありがとうございます」


 老人……集落長と、主人と言ったことからリーダーの妻であろう女性はアタシへと頭を下げました。

 恥かしさもあって、あまり顔を見れませんでしたが……少し勇気を振り絞ってアタシは集落長たちを見ました。

 リーダー(副集落長)は30代中盤に差し掛かった年齢ほどで、その父親である集落長は70代ほどの年齢に見えました。

 老いもあって老けているように見えますが……それ以上に顔色があまり良くないように見えました。

 アタシの視線に気づいたのか、集落長がアタシを不思議そうに見てきました。


「あの、何かありましたか?」

「い、いえっ、その……えっと……、何だか顔色が良くないように見えたので……すみません」

「お気になさらず、ここ最近食べ物をあまり食べれていないので、そんな風に見えるだけだと思いますので……」

「でも、お義父さん。この間から、身体が痛いと言ってましたよね?」

「それは歳のだろうな。はっはっは……」


 そう集落長は言っていますが……、かさかさな肌は血の巡りが悪いのか色合いが悪く、目の下には隈のようなものが出来ていて元気な様子が見られませんでした。

 ……とりあえず、見てみるだけ見てみましょうか。そう考えながら、アタシは集落長を《鑑定》というか、《識別》してみました。

 ちなみに《鑑定・極》には《識別》も統合されているらしく、それに気づいたのはつい最近だったりしますけど……同じ物と思っていたんですよね。《鑑定》と《識別》……ととっ、状態を確認確認。


 ――――――


 職業:集落長

 体力:24/100

 魔力: 5/ 20

 状態:疲労(重)、毒(微)、瘴気汚染(弱)


 ――――――


 ――――――


 職業:副集落長の妻

 体力:56/ 80

 魔力:10/ 30

 状態:疲労(軽)、毒(微)、瘴気汚染(微)


 ――――――


 自分たちをジーッと見ているが気になっているのか、少し困った顔をし始めるのをアタシは見つつ……ゆっくりと言葉を選び始めました。

 だって、いきなり初対面で体内に毒が溜まっていますよなんて言われたくないでしょうし……。

 でも、遠回しって嫌なんですよねー……。うん、やっぱり聞きましょう。


「あの……、見たところ集落長様たちの体内に毒が溜まっているように見受けられるのですが……」

「えっ!?」

「な、なんだってっ!?」

「……なんじゃと?」


 アタシの言葉に、3人は驚いた様子を見せながら様々な反応を見せます。

 そんな彼らを見ながら、アタシは話を続けます。


「今はまだ完全に効果は出ていないみたいなのですが……、少しだけ治療を行いたいのですが宜しいでしょうか?」

「治療……ですか?」

「ふむ……」

「親父、さっきも言ったけどこの方は凄い回復魔法を使ったんだ。だったら、一応診てもらったらどうだ?」


 アタシがそう提案すると嫁のほうは躊躇し始め、集落長のお爺さんは自分の頬を軽く撫で、リーダーはアタシの腕を知っているからか支援してくれました。

 そんな彼らを見ながら、アタシは何も言わずに返事を待ちます。……まあ、その間にどうするべきかを考えます。

 解毒のための《治癒》と体力回復のための《回復》、それと瘴気も祓いたいですよね……。

 そう思っていると、結論が出たらしくアタシへと集落長たちが視線を向けました。


「話が纏まった。と見るのが良いでしょうか?」

「はい、親父も納得してくれましたので……お願い出来ないでしょうか?」

「しかし、礼をさせてもらうために集落に招いたのに、更に手間をかけさせるのが迷惑ではないのか?」

「いえ、大丈夫です。それに放っておいたら助からないかも知れませんが、今なら何とかなるかもしれません。ですから、これはアタシの自己満足なだけです」


 そう言うと、アタシは水瓶を用意して貰うように頼みました。

 リーダーは首を傾げながらも水瓶を用意し、アタシはその前に立ち……外套の下に隠していたワンダーランドを構えて、魔力を循環させ始めました。

 リーダーとその嫁は大扇を構えてるだけのアタシを不思議そうに見ているけれど、集落長のお爺さんは顔を引きつらせていました。……もしかすると、何かが見える人なのでしょうか?

 そんな風に疑問に思いながらも、魔力を循環させると同時に純度を上げて行った結果……高純度の魔力がワンダーランドの中に溜まっていくのを感じました。

 アタシはその高純度の魔力へと『聖』と『水』の属性を与えると解き放ちました。

 とりあえず、この魔法の名前は……。


「湧き起これ――《聖命水》」


 魔法名を唱えた瞬間、ワンダーランドの先から水が湧き出して水瓶へと注がれていきました。

 そして、水瓶に並々と注がれて行き……暫くして水は止まりました。

 いきなり水が湧き出たことに驚いている様子でしたが、何故だか喉から唾を呑む音が聞こえました。

 もしかすると、飲水もまともに飲めていなかったりしていたのでしょうか?

 そう思いながら、アタシは木の器へと水瓶に溜まった水を掬うと、集落長へと差し出そうとしたが……。


「どうぞ……って、いきなり訳のわからない水を差し出されても飲みませんよね……。と言うことで、先に危険はないということを保障するためにアタシが飲みま――」

「いや、いただこう……!」

「え――あ…………」


 自分の手元に戻そうとした木の器を引っ手繰るように掴むと、集落長は一気にそれを飲み始めました。

 よっぽど喉が渇いていたのでしょうか?

 そう思いながら見ていると、集落長は木の器の水を一気に飲み干したらしく……中身は空になっていました。

 そして、改めて集落長の顔を見ると……カサカサしていた肌に艶が戻り、目の隈も消えてスッキリといった雰囲気を纏っていました。

 ……それには、リーダーとその嫁さんもびっくりだったようで、唖然としていました。

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