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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
332/496

魔族の集落

 男たちの後に続きながら、アタシは針葉樹林を抜けました。

 針葉樹林を抜けると、山道から見えていたように荒地と草原といった両極端な光景が目に付きました。

 そんな光景を見ながら、アタシは下手ながらに舗装された道を踏み締めます。

 時折、申し訳なさそうに近くに居た男がアタシを見て頭を下げ……。


「すみません、もう暫く歩くことになるので……」

「いえ、気にしないでください」


 そう言って、アタシは彼らの後を歩きますが……彼らが言ったようにモンスターが生息していないのか歩いている姿がまったく見えません。しかも気配を探ってみてもそれらしい気配も見当たりません。

 更に草原で時折生えている草を《鑑定》で見てみると、恐ろしい結果が見えました。


 ――――――


 名称:殺人草

 効果:服用時、致死性90%

 説明:見た目は美味しそうに見える草だが、中身はその逆で食べたら一発であの世逝きとなる。


 ――――――


 見えた鑑定結果に顔を顰めつつ、またも別の草が見えたので《鑑定》を行った結果……。

 これまた酷かったです。


 ――――――


 名称:絶死草

 効果:刃を突きたてられた瞬間、範囲1メートルに死を招く絶叫をあげる。

 説明:見た目は根菜類みたいだけれど、調理するために刃を突き立てた瞬間に本性を現す草。悲鳴を聞いた者は皆死ぬ。


 ――――――


 その他にも、食べたら胃の中が焼け爛れる木の実や……食べた者を苗床にして新しい木となる果実が別の森に実っているのが見え、アタシは口元をひくつかせます。

 ……なんですかこの知らずに食べたら最悪な人生のゴールに辿り着きそうな野菜や果物は……。

 そう思いながらチラチラと周りを見ているのに気づいたのかリーダーが苦笑しながらアタシに近づいて来ました。


「あの、もしかして……周りに見える果物などが何であるか、貴女様には見えるのですか?」

「え? えっと……」

「いえ、言わなくても構いません。ですが、これらを取って食べようとした者たちも居たのですが……彼らは皆無残な姿と成り果てました……」

「そう……ですか。その……詳しくは言えませんが、暫くはこの辺りに生えている食べれそうな物は食べないことを進めさせていただきます」

「……そうですか。村に帰ったら皆にそう伝えておきますね」


 そう言ってリーダーは頷いてから再び向こうに歩いていきましたが……、もしかすると身体を張った結果効果を知った人たちが村に居たということでしょうか……。

 だからその結果、村近辺に生えている物とかを取らずに居た。そう考えるのが妥当ですね。

 そんな風に考えながら暫く道を歩き続けると、集落と思しき藁葺きの屋根が幾つも見えました。

 その屋根がある建物を目指して暫く歩くと……、木で作られた柵がある集落へと辿り着きました。

 集落には十にも満たないほどの藁葺きの家があり、柵ギリギリの辺りには畑が見え……他にも家畜などを飼っていたと思しき掘っ立て小屋もありましたが……外には人の姿が見えませんでした。

 もしかすると体力が減るのを抑えるために家に篭ってじっとしているのでしょうか?

 そう思いながら、このまま進めば良いのだろうかと悩んでいると、男たちが申し訳なさそうに頭を下げてきました。


「その、すみません、一度村の者たちに事情を説明して来たいので……貴女様は、ここで待っていてもらえないでしょうか?」

「別に構いませんが……大丈夫ですか?」

「はい、安心していてください。ですが……出来ることなら畑とかを見て見たいとか思ってたりするのですが……無理ですよね?」

「…………いえ、それぐらいなら大丈夫、でしょう。おい、畑のほうに連れて行ってくれないか?」

「ああ、分かった。――どうぞ、こちらです」


 このまま待つ、というのも別に良かったのですが……素人ながらに一度畑がどうなっているのか見てみようと思いつつ、アタシはそう頼むとリーダーが一瞬悩んでいましたが、すぐにその中の歳若い男に頼み……アタシを畑へと案内してくれました。

 クマ肉の入った皮袋を他の男に渡して、案内を頼まれた男は集落の中には入らず、柵の外周を周るようにして畑へと向かいます。暫く歩くと、畑のある場所の柵の側に到着しました。

 そこから見える畑はあまり耕されていないのか、あまり掘り起こした様子が見受けられず……石などもバラバラと落ちているようにも見えました。そして、その畑には育てていたであろう作物が等間隔に置かれていましたが……そのすべては枯れていました。


「えっと、この畑の作物は枯れていますが……どうしたんですか?」

「ああ、それですか……。副集落長の話にも出てた突然枯れ出した作物がこれらです」

「これが、ですか?」


 話には聞いていたけれど、実際目の前で見てアタシは驚きました。

 何故なら、白菜とかキャベツに良く似たような作物は中に一切の水分を残していないような感じにカサカサになるまで枯れていたのですから。

 自然現象なら分かるでしょうけれど、これはどう見ても異常です。そう思いながら、アタシは《鑑定》で枯れた作物を見てみました。


 ――――――


 名称:枯れたキャベ

 状態:水分無し

 説明:根から水分が吸い取られた結果、中の水分が無くなってしまったキャベ。


 ――――――


 ――――――


 名称:枯れた土

 状態:水分無し

 説明:土中に含まれているはずの水分がまったく無くなっている状態。例え水を上げたとしても即座に乾いてしまうだろう。


 ――――――


 作物だけじゃなくて土も鑑定してしまったらしいのですが、どう見ても異常すぎる状態でした。

 というか、土の中にも水分が無くなっているってどういうことですか?

 そんな感じに疑問に思っていると、リーダーが集落の中から近づいてくるのが見えました。

 そういえば、あの人って副集落長だったんですね。


「お待たせしました。父に許可を貰おうとしたところ、是非とも我々を助けた礼をさせて欲しいとのことです」

「そうですか。では失礼して集落に入らせていただきますね。……それと、礼は別に構いませんので、御礼をするために用意しようとしている物は皆さんで使ってください」


 集落に入る許可を貰っただけで十分と考えながら、アタシはそう言うとリーダーは驚いた顔をしていましたが……すぐに頭を下げてきました。

 ……こうして、アタシは魔族の国に入ってから初めて集落に入ることになりました。


 砦? あれは忘れたい記憶です。

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