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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
328/496

一夜明けて

 あはは~~、世界がぐるぐるしましゅ~~!

 さけじゃ~! さけをもっとよこしぇ~~!!

 ほしにくおいひ~! え~、あのカニャヘビのにくにゃの~?

 ち~ずもどきへんなあじ~! でもそれがたまらな~い!!

 クスクスモドキは、くにゅくにゅにゅ~~!!

 えんかいげ~? それじゃ~いちばん、アリじゃなかったソバうたいま~っす!!

 ふう、あつくなってきちゃった~……よいし――ちょっろ~、め~せきむ~ぬがしなしゃいよ~!!

 え~? いやらと~!? しゅじんのめ~れ~がきけにゃいのきゃ~~!!

 よ~し、よ~し、それでいいろ~~。

 ビョ~ンビョ~ン!


 ……


 …………


 ………………


 ……あ~…………頭がガンガンする……。

 ズキズキと痛む頭を抱えながらアタシは起き上がりました。

 昨日はスキヤキさんの話に乗って酒を呑んでしまいましたが……そのあとのことは覚えていないんですよね。

 いったい何があったんでしょうか……。

 そう思いながら、自分が寝ているところを見ると……昨日酒盛りを始めた食堂となっている場所で、アタシ以外にも多分参加していたと思しき魔族の方々が床やらテーブルやイスの上で雑魚寝をしていました。

 そして、アタシの前辺りで倒れる人たちは……何故か鼻から血を流して倒れてたり、拝むようにして倒れていました。

 えっと……いったい何が……? そう思いながら、若干嫌な予感を感じながら首を下に動かし、自分の身体を見た瞬間――固まりました。

 着ているはずの物が見当たらなかったのです。いえ、多分、着ている物が変化しているのでしょう。

 それは分かりました。ですが……何でアタシ……面積の少ない下着姿になってるんですか?!

 自分のあられもない姿を見て困惑すると同時にアタシを前に倒れている人たちは悩殺されたということかと思いました。

 即効で身体を縮込ませながら、アタシは必死に記憶を呼び覚まします。


「お、思い出せー……思い出せ、アタシ……いったい何がありましたか……?」


 えぇっと、たしか……お酒を呑んでから、一気に意識が途切れて……。


『まあ、そこから先はわしが説明するわい』

 ――ッ!? だ、誰ですかっ!?


 いきなりの声に驚き、声が口から洩れそうになりましたが必死に押さえ込みながら、聞こえて来た声に問い掛けました。


『誰だとは失礼な奴じゃなぁ。ほんの少し前に一緒に話をした仲じゃろう?』


 すると、アタシの問い掛けに聞こえて来た声が返事を返してきました。……って、一緒に話をした仲?

 それにこの声は外からではなく中から聞こえてくる声……ああ、もしかして。


 キュウビ、ですか?

『うむ、その通りじゃ! 暫くぶりじゃのう、アリスよ!!』

 は、はい、暫く振り、ですね? あれ、ですが……。

『どうしたのじゃ? アリスよ』

 いえ、あの……キュウビは基本的には眠っているのでは?


 基本的に身体の主導権をアタシに渡して、キュウビは眠っているという話だったのに起きていることに疑問を抱きながら訊ねました。

 すると、暫く無反応でしたが……凄く言い辛そうにしながら、キュウビが声を発しました。


『あ、あー……っと、その……じゃな、酒に起こされたというか、酒のにおいに釣られたというか……じゃな』

 ああ、つまり飲兵衛なんですね、キュウビ。

『は、はっきりと言うでない! まあ、その通りじゃが……』

 それで、何があったんですか?

『……お、怒らぬか?』

 ……内容次第によります。

『じゃあ言わぬ! わしの秘密なんじゃ!!』

 怒ること確定の内容ですか! ちゃんと喋ってください!!

『怒ると言ったのじゃから言わぬ!』


 い、いったい何をしたんですか、この狐は……?

 というか、本当に何をしたんですか?! ……って、何時までもこの服装は恥かしいのでいい加減元に戻さないと。

 明赤夢、お願い……できますか?

 アタシがそう心で願った途端、明赤夢は待ってましたとでも言うかのように仄かな光を放ち、面積の少ない下着姿から何時もの着物ドレスへと変化しました。

 元通りに戻ったことにホッと安心していると、鼻血を流して嬉しそうな顔をして気絶していたタダノモーブが目を覚ますのが見えました。


「あ~……良く寝たッス……あ! 姐さん! 昨日は色々とごちそうさまでしたッス!!」

「え、えっと……タダノモーブ。アタシはいったい何をしていましたか?」

「何って……、いやぁ……思い出しても良い飲みっぷりでしたッス! 浴びるほど酒を呑んだ上に、干し肉やチーズもどきとかもばかすか食べて、一頻り満足したら今度はアニソンとか歌い始めたッス!

 で、はっちゃけたからっていきなり脱ぎだしたときには何名かは鼻血を流して倒れたッス! ちなみにじぶんは飛び跳ねておっぱいがバインバイン揺れたところで満足して鼻血を出して倒れたッス!」

「そ、そうですかー……。そんなことがー……」


 乾いた笑いを口から漏らしながら、アタシはタダノモーブの言葉を噛み砕きます。……おのれきつね。

 心の底からキュウビにギリリと思っていると、焦った様子の声でキュウビが語りかけてきました。


『わ、わしのせいじゃないぞ! 酒じゃ、酒がいかんのじゃ!』

 ええ、お酒がいけないんですよね?

『う、うむっ、酒は呑んでも呑まれるなというわけじゃな!!』

 ソウデスネー……、ってことで金輪際お酒は出されても呑みませんよ。

『なん……じゃと……?』


 心の中で笑みを浮かべると、同じように心の中で orz といった感じに崩れ落ちるキュウビの姿が頭の中に浮かびましたが、自業自得だとアタシは判断します。

 そして、一方で酒の席の様子をありありと語っていたタダノモーブは静かになったアタシがどうしたのかと疑問に思ったのか顔を近づけてきていました。


「えーっと、姐さん? 何か問題でも?」

「いえ、特にありませんよ。ただ……今後はお酒を控えるべきだろうなと思っただけです」


 そうアタシは笑顔を浮かべて答えるのでした。

酒は飲んでも呑まれるなー。

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