表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
322/496

国境を目指して

 下から吹き上がってくる風を感じながら、下に落ちていくアタシだったけれど……明赤夢が身体から魔力を少し吸い上げていくのを感じ、すぐに靴へと魔力が流されていくのを理解した。

 その直後、フワッと身体が軽くなるのを感じ……吹き上がってくる風の勢いが弱まり、見える景色が段々とゆっくり変化していくようになっていった。

 空中で体勢を整えて、足を下に向け……トンッと足元から地面に降り立つとアタシは息を吐いた。


「ふう……。とりあえず人間の国の現状はああなっていますか……。さてと、そろそろ血煙も散りましたよね」


 小さく呟いて、アタシは歩き出そうとしたけれど……ふと思い立って、その場で立ち止まり周りを見渡した。

 さっき見たように鎧を着けた骸骨や朽ちた武器がたくさん転がっていた。

 ……誰も見ていないし、このまま朽ちさせるっていうのも良くないよね?

 そう思いながら、アタシは近くに落ちていた槍を掴むとマジマジと見てみた。

 それは鉄で作られた槍で作り手の技術が高いのか性能は良く見えた。……もしかすると、アタシが人間の国に居たときにボルフ様に渡した金床と金槌で作ったのかな?

 何となくそう思いながら、アタシは決意してそれを口にした。


「ワンダーランド、……召し上がれ」


 すると、《異界》から白兎型のワンダーランドが飛び出し、ブウブウと鳴きながら槍を咥えた。

 直後、眩い光が一瞬で周囲を包みこみ……、すぐに散って行った。

 きっとこれを見た人が居たら何が起きたか分からないだろうけど……一応これってワンダーランドが周辺の金属系統を一気に捕食してるのよね。

 そう思いながら、光が消えた後の周囲を見ると鎧を着た骸骨とか盾や剣を持った骸骨がただの骸骨に早変わりしているのが見えた。

 彼、または彼女がどんな人生を歩んでどんな死にかたをしたかは分からないけど……とりあえず、手を合わせてからアタシはその場を離れた。


 ●


 数時間前にエアブロカナヘビを爆散させた辺りまで戻ると、空中に浮いていた赤い霧は無くなっていて赤い(・・)岩肌とかが見えていた。

 それが何なのか理解できるけれどしたくないアタシは、スタスタと魔族の国側へと歩き出した。


「うん、血煙は散ったみたいだね。よかったよかった。……けど、弾けた肉っぽいものが落ちてるのが目立つね……」


 呟きながらアタシは周囲に落ちた赤黒い肉を見てしまったが、見なかったことにして先に進むことにした。

 あー、あー! 見えてない見えていない。

 元々普通の岩肌だったけれど、今は紅い塗料がドベチャと塗ったくられているとか、足元に蛇革っぽいけど実は蜥蜴革が地面とかに張り付いているのとかなんて見えていないからね!

 そんな感じに少しばかり現実逃避をしていると、子供が見たらトラウマゾーンを抜けたらしく……魔族の国への国境と思しき場所へと辿り着いた。

 そこは元々は関所的な場所だったんだと思うけど……、何かが遭ったらしく見るも無残な光景となっていた。


「これは……元々ここで見張りが置かれていたと見るべきなのかな? けど、人間の国の攻撃で壊れたまま放置とか?」


 呟きながら周囲を見渡すと……、この場所の隅のほうに墓があるのに気づいた。

 ……もしかしなくても、ここで死んだモンスターの墓だったりするんだろうな……。

 そう思いつつも、モンスターにもそんな感情があるんだなと、アタシは改めて驚きつつも感心した。

 とりあえず、先に進めば何か見つかるだろう。そう考えて、立ち上がろうとしたところで――アタシは囲まれているのに気づいた。

 ……全部で、6体? 6匹? もしかしたら、斥候とか音が聞こえたから近づいてきたとか?

 そんな感じに思っていると、アタシは如何にも怪しかったのか誰かとか聞くよりも先に弓を持つ仲間に命令したのか、いきなり矢を撃ってきたみたいだった。

 けれど、矢はアタシに刺さること無くアタシが展開した《土壁》に突き刺さっただけで終わった。


「いきなり撃ってくる……か。魔族の中でアタシが有名なのか、それともこの周辺に自分たち以外が居たら即殺すようにという国からの命令なのか……どっちだろう?」


 呟きながら立ち上がり、《土壁》の影からそっと顔を出して周辺を眺めてみると……矢を放ったであろうモンスターが物陰に隠れているのが見えた。

 ザラザラとした皮膚を持ち、隆々とした筋肉を見せ付け、細長い瞳孔を持った爬虫類独特の瞳。

 ……リザードマンだった。


『シャアアアアーーーーッ!!』

「あー、何だか怒ってるわね……」


 妙に気が立っている彼らを見ながら、アタシはどうするべきかと溜息を吐いた。


 ……まあ、やるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ