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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
321/496

国境と血煙

暫くアリス視点です。

 ティアたちと別れて、一人旅を開始してから4日が経過した。

 それまでの間、アタシは木々を妖精の靴と明赤夢から放たれる糸を使いながら国の境目を目指して移動をし……夜は無理をせずに木の上で休んだり、ケニーとティタが創った妖精の隠れ家に泊まって一夜を過ごしたりしていた。

 ちなみに旅立って1日目に見つけた妖精の隠れ家に泊まったときに予想通りというか案の定というか、ケニーがアタシの前に顔を出して森の国の脅威が去ったことに礼を言ってきた。

 まあ、暫くしてからティタも現れたことにはケニーも驚いていたようだった。詳しく聞いてみたら、地下で妖精の管理をするのがティタの役割みたいだけれど、ほんの短時間だけなら別に構わないらしかった。

 それから3人で小さいながらも豪華な晩餐を楽しみ、その日は眠った。

 そして、そんなこんなで漸くアタシは国の境目へと辿り着いたけれど……。


「改めて思うけど、この世界ってこの山を中心に出来てるわよね……」


 誰からの返事も無いけれど、アタシはそう呟きながら荒地から目の前に聳え立つ山を見た。

 というか、標高どんだけの山なのよこれ……、天辺なんて雲に隠れてるじゃない。

 天辺に向けて段々と尖っていく山を眺めていると、遠くのほうから地響きが聞こえてきた。

 いったい何の音だろうかと思っていると、アタシの前へと巨大なモンスターが姿を現した。

 その姿を見て、アタシは思わず呟いた。


「……トカゲ? それともカナヘビ?」


 姿を現したモンスターは、巨大な爬虫類みたいな外見をしているけど……どう見てもドラゴンとかじゃないと分かる感じだった。

 というか、もっと根性を出してドラゴンみたいに翼を生やすとかみたいな感じになりなさいよ。


『SYAAAAAAAAAAAAAAA~~!!』

「まあ、どっちでも良……あれ? 何だか膨らんでる?」

『SYUAAAAAAAAAAAAA!!』

「――ッ!? ッビックリしたぁ! アレって空気を取り入れてる動作だったのね」


 でもって、一気に吐き出す。

 空気を撃ち出したと気づいた瞬間、横に跳ぶとアタシが立っていた場所が抉れたのが見えた。

 それを見ながらアタシは……何ていうか、空気を撃ち出す工具みたいだと思ったわ。


「あえて名づけるなら……、エアブロカナヘビってところかなぁ。まあ、別に良いけど」


 そう呟きながら、エアブロカナヘビと頭の中で名づけたモンスターを見ると再び空気を取り込み始めているのか、膨らむのが見えた。

 もう一度撃ち出して来るのかぁ……。うん、めんどい。


「空気を吸い込むのも吐き出すのも口だけなんだから、吐き出そうとしている口を塞げば意味が無いですよね」


 考えながらアタシは、エアブロカナヘビが再び空気を口から吐き出そうとする瞬間を見計らってエアブロカナヘビの眼前に《土壁》を創り出した。

 ……本当は自分の足元周辺しか無理みたいですけど、アタシはある程度離れた距離でも出来るみたいなんですよね。

 とか思いながら《土壁》が創り出された瞬間、ボンッ! と大きな音が周囲に響いた。


「え?」


 呆気に取られながら、アタシは音がした場所……というかエアブロカナヘビが居る場所を見て固まってしまった。

 何故なら、エアブロカナヘビの頭はあったけれど……頭だけしかなかったからだ。

 要するに胴体が完全に無くなって、後ろのほうでは真っ赤な血煙を作り出していた。


「……つ、つまり、出口を塞いだ結果……弾けたってことでオーケー?」


 多分、オーケーだろう。

 というか、尻から出るとかいう馬鹿みたいな対処方法でも良いから無かったのかなエアブロカナヘビ……。もしくは口のほうに開閉出来る空気穴とかさあ……。

 そう思いながら、アタシは血煙を見るがこれ以上進みたいかと聞かれると絶対にNOとしか言えなくなる。


「…………仕方ない。折角だし人間の国がどうなっているのかって一度見に行ってみますか」


 見てきて戻ったら血煙も霧散しているだろうし。

 そう考えながら、ロンたちに聞いた話とティアたちの話で黒い結界みたいなのが張られているという話を思い出しつつ、森の国側の山道を魔族の国へと向かわずに逆方向の魚人の国へとアタシは歩き始めた。

 だけど、3時間ほど歩いて森の国から魚人の国に入ったと思うのだけれど……先に進むことが出来なかった。

 何故なら、魚人の国の山道のある場所から道を分断するかのように大きな崖が出来ており、その下を轟々と水が流れていたからだった。


「これは……渡れませんね。それにしても、此処は……戦いでもあったのでしょうか?」


 周りを見ると、鎧を着た骸骨が何体も転がっており、アタシが来た道を見るとついさっき爆散させたエアブロカナヘビよりも大きなサイズの……やっぱり同じエアブロカナヘビだと思う骸骨が地面にあった。


「ああ、そういえば……馬鹿王が魔族の国に攻め込んだんだったっけ。ってことは、この骸骨って人間の国の兵士?」


 そうじゃないかなーってよりも、むしろそうとしか思えなかった。

 でも色々と骸骨が多すぎると思う。これなんて、両足が無い骸骨だし……いったいどんな死にかたをしたんだか。

 それに、他にも武器とかもいっぱい落ちてるし……って、あれこれって……。


「クロモリブレード、じゃなくて、ブラックスチールブレードの刀身? でもこれって、獣人の国に置いてあるはずじゃ……もしかして、サリー様もここに居たとか?」


 もしかして、この骸骨の中にサリー様やフォード様も? そう思うと、ゾクリと怖くなり始めたけれど……とりあえず、これはサリー様が誰かにあげたと思っておくことにしましょうか。

 というかそうしましょったら、そうしましょう。


「……けど、ここまで来たのに人間の国がどうなってるのか分からないっていうのは癪ですよね。……妖精の靴で跳べませんかね」


 やってみるだけやってみようと考えながら、アタシは脚に力を込めて一気にその場から空高く跳び上がった。

 ……どうやら森の国とは違って100%の能力は引き出せていないけれど、70%ぐらいは出ていると感じながら、目を細めて人間の国があると思われる場所に目を向けた。

 ――黒かった。一言で言うなら本当に黒かった。

 結界というからには黒くても透き通っていると思っていたけれど、アレは何ていうか……黒い繭そんな感じに見えた。


「……中はどうなっているんだろう? 見る方法は無いけれど、何時かは見てみたいかも……」


 そう呟きながら、アタシは身体が下へと落ちていくのを抵抗せず身を任せていった。

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