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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
32/496

山の魔物溜消滅

 周囲に散らばった狼の死体を全て取り込んだ霧はブヨブヨとしたスライムの様な何かに実体化して来たわ。

 とりあえず、それまでは彼女は見ているだけだったけど、グニョグニョと動くのが見えたから、その場を蹴って後ろに下がったわ。すると、彼女がさっきまで立っていた場所へとモンスターは触手のように身体を伸ばして攻撃をしてきたの。

 触手は簡単に地面に突き刺さり、伸びた触手は更に茨のように自身の表面に長い針を出してきたわ。きっと、命中したら相手の身体を容易く貫く上に、針が中から飛び出して身体を風船を爆発させたみたいに木っ端微塵にしたと思うわ。


「うわ……、騎士団もだけど、フォードとサリーを絶対に連れて来たくないなこれは……」

『GYYYYYYYRRRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!』


 普通の人間がこれと戦ったときの悲惨な光景を思いながら、彼女は苦笑しつつ剣をもう一度鞘から抜いたわ。

 正直言うと、見た目がスライムっぽいけど何処か嫌な気配を感じていた彼女は少しだけ力を引き出したの。ちなみに今までは現在のレベルのステータスで戦っていたけど全然苦にはならなかったわ。

 そして彼女は一気に距離を詰めると、ブヨブヨとした身体を剣で切り裂いたわ。

 そのときの感触はゴムの塊を殴りつけたような感じだったみたいよ。……ああ、ゴムっていうのはね、落下とかするときに衝撃を抑えてくれる素材のことよ。

 斬られた場所からは血や粘液といったものはまったく出ず……斬られたというのが分かるようになっているだけだったわ。

 どういうことかと戸惑った瞬間、ブヨブヨの体に無数の目が出て、ギョロリと彼女を見始めてきたわ。それらがいっせいに彼女を見つめた瞬間、ゾワッと身の毛がよだつ感覚を覚えた彼女は本能のままに一瞬で魔力を体内に循環させると即座に≪土壁≫を形成して目の前に出しながら、素早く後退したわ。


『GOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARYYYYYYYYYYYYYYYYYYY~~--~=?!=~=~-』

「うわっ!? ちょ、ま――まじっ!?」


 激しい金属が擦れるような音とともに、無数の目から熱線が放たれ……出来るだけ強固に創っていたはずの≪土壁≫に次々と穴を開けていったわ。

 その光景に驚きつつも、彼女はより魔力を循環させると、早く、硬くと心から願いつつ熱線が届くよりも早く≪土壁≫を形成して行ったわ。

 けれども≪土壁≫は作るたびに穴が空けられ、形成、穴、形成を繰り返し……そして、最後に創った黒光りする鉄みたいに硬い壁が赤熱し始めたところで熱線はやっと止まったわ。

 いきなりの行動に驚いたけど、反撃するチャンスと考えながら、握った剣を見たんだけど……綺麗に刀身が無くなっていたわ。多分、切り裂いたときに溶けたか折れたかしたんでしょうね。

 きっと、もっと強い剣を出したとしても……あのモンスターには効果がないだろうと考えながら、彼女は折れた剣を放るとモンスターとの距離を一気に詰めたわ。でも、丸腰のまま飛び掛っても死のうとしてるようにしか思えないわよね?

 でもね、彼女は距離を詰める間に身体の中で魔力を狂おしいまでに循環させると、両方の手に別の属性を纏わせ始めたのよ。右手に火の属性を、左手に風の属性をね。


「思いついて、ぶっつけ本番でやるけど……かなりきついかも……っ! でも、これなら効くだろっ!!」


 荒れ狂う魔力を無理矢理押さえつけながら、彼女は両手に宿る魔力をひとつにしてモンスター目掛けて解き放ったわ。

 解き放たれた魔力はモンスターを中心にして……神々しいまでに燃え盛る炎の竜巻を造って、夜空を大きく照らし出したの。多分、その炎の竜巻は魔物溜をも貫いて周辺を明るく照らしていると思うわ。

 しばらく燃え盛っていた炎の竜巻は徐々に狭まり始め、ブヨブヨとした塊をぎゅうぎゅうに押し潰し始めたの。ちなみに魔力を解き放った彼女だからか……中がどうなっているのか理解していたわ。中では神をも焼き殺す炎を纏った嵐が下から上へと舞い上がり、ブヨブヨとしたモンスターの表面を徐々に焼き焦がしていたわ。

 そして、そのモンスターの身体の中に溜め込まれていたと思う、淀んだ空気は炎によって燃やされていっているけど、周囲には未だ淀んだ空気が溜まり続けているのを彼女は感じたわ。というよりも、紫色の煙がまだ見えていたものね……。


「正直、効果があるかなんて分からないけど……やらないよりもやったほうが良いよね」


 小さくそう呟きながら、彼女はもう一度魔力を体内に循環させ始めたわ。多分、これを使ってすぐにこの場から逃げないと村から騒ぎに気づいた人が来ると思うしね。

 深く静かに目を閉じて、荒れ狂う魔力の波を優しく抑え……彼女は2つの属性を再び両手に纏わせたの。『風』と……癒しを司る『聖』の属性をね。

 ゆっくりと属性を宿した魔力を解放して、周囲に優しく広がるように念じながら彼女は合わせた属性の魔法を口にしたわ。


「周囲を清めろ――≪浄化の光風≫」


 その言葉とともに、風に乗って周囲に優しく広がり始めた浄化の光は淀んだ空気を消しさり、魔物溜を破壊し……荒れ果てた岩山に花を咲かせ始めたわ。

 きっとそれを見た人が居たとしたら、奇跡と言うかも知れないわね。そして、その浄化の風は炎によってすり減らされていたモンスターの肉体を更に消し去り……灰すらも残すこと無く消滅したわ。

 それを見届けた彼女は農村に向かう山道の方から話し声が聞こえてくるのに気づき、急いでその場を離れたわ。


 そして、素早くサリーの家の窓に飛び込むと、さも寝ていましたと装うように布団に潜り込んだわ。

 って、彼女がベッドに潜り込んだけど、あんたも凄く眠そうね。それじゃあ、一度昼寝しようか? 起きたら話の続きをしたげるし、甘いおやつも用意しておくから……うん、良い返事。

 じゃあ、ベッドに行こうか。…………それじゃあ、おやすみ……。

ぬるげーなんかじゃつまらない。

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