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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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告白

「ぜえ、ぜえ……ぜえ……」

「え、えぇっと……ごめんね?」


 叫びすぎてぐったりとするボクを見ながら、ルーナ姉は苦笑しながら頭を下げていた。

 いや、分かってる。分かってるよ? ルーナ姉だって、ボクを困らせたくてあんなことをしたわけじゃないって……。

 でもね……、あれははっきり言って忘れたい黒歴史なの!

 ライトをおにい……あにきと同じように見てたってどういうことだよ。というかライトに甘えるなんて恥かしすぎるじゃん!

 ああもう、穴があったら入りたいぃぃ!

 そんな風に頭の中で悶々と色々悩んでいたんだけど、怒っている風に思われたのかますます心配そうにルーナ姉はボクを見てきた。

 ……とりあえず、こっちを何とかしないとね。


「はあ、もう良いよ。けど、その話題はやめてよね?」

「ええ、なるべくしないようにするわ。なるべく」

「絶対に、だよ?」

「もう……わかったわよ。それで、具合はどう?」


 あ、絶対にこれをネタにしてボクをからかうつもりだったね、ルーナ姉……。

 うぅ……やっぱりボクのほうもルーナ姉をからかうというか脅迫する材料を手に入れたほうが……げふんげふん。

 一瞬浮かんでしまった考えを霧散させてから、ボクはルーナ姉たちの問い掛けに答えることにした。


「うん、何とも無いよ。大丈夫大丈夫」

「そう。なら良かったわ……それで、聞きたいんだけど……」

「……ボクが、魔方陣に居た男の人をあにきって呼んだ件。だよね?」


 ボクが言うと、シターとルーナ姉は戸惑いながらも頷き……サリーとフォードは成り行きを見守っていた。

 ティアたちはまだ関わるべきではないと判断してくれているのかあまり気にした様子は見られなかった。

 アリス……、多分というか絶対あにきのアレだろうから分かってるはずだ。

 そう思いながら、ボクは話す決心をした。けれど、時間を置いたのが放したくないと感じたらしく……。


「ヒカリちゃん……、話したくないなら別に良いのよ?」

「えっ? あ、いや、話し辛いとか話したくないとか言うんじゃないよ?!」

「そ、そうなの? じゃあ……」

「うん、話すよ。それと……話したからって今までの関係が壊れるってボクは思っていないからね」


 ボクがそう言うと、ルーナ姉はホッとした様子を見せた。……心配させてたみたいだね。

 まあ、この世界で仲良くなった人ってライトとルーナ姉が初めてだし、ボクもちょっと怖かったかも。

 そんなことを思いながら、ボクは改めてルーナ姉とシターを見た。


「ルーナ姉、シター。ボクはね、この世界の人間じゃなかったんだ」

「「――ッ!?」」

『『ッ!?』』


 ボクがそう言った瞬間、2人から息を呑む音が聞こえた。多分、サリーたちからも驚きの声が聞こえるだろうけど、今は2人に集中していたい。

 そう思っていると、ルーナ姉はどう言えば良いのか言葉を選んでいるのか右手を口元に当てていた。

 その一方でシターは恐る恐る手を挙げてきた。


「あ、あの……ヒカリ様がこの世界の人間ではないなら、その……何処から来たのですか?」

「あー、やっぱりそこから聞くよね?」

「は、はい、その……すみません」

「謝らなくてもいいよ。それで、何処から来たかって言うと……」

「あにき、と呼んでいた男性と同じ世界から来た。そう言うことで良いのかしら?」


 ボクが口を開こうとした瞬間、考えが纏まったらしきルーナ姉がそう言った。

 ……その言葉に、ボクは首を縦に振った。


「うん、ボクはあにきと同じ世界からやって来た。そして、あにきと言ってるから分かるだろうけど……あの人はボクの死んだはずの兄で間違いないよ」

「……え、死んだ? じゃあ、あの人は……魂だけの存在ということでしょうか?」

「それは分からない。けど、ボクは両親と一緒にあにきの葬式を行ってるから間違いないよ」

「じゃあ、どうしてそのあにきさんは……魔方陣の中にアリスさんと一緒に居たのでしょうか?」

「それは……」

「それについては、当事者に聞いたほうが速いでしょ」


 あにきは死んだはず。それなのに、こんな異世界に居るというのが全く理解出来なかった。

 そのためどう言えば良いのか分からないボクだったけれど、アリスさんが前に出ると突然そう言い出してきた。

 というか、当事者?

 困惑するボクらだったけれど、フォローしてくれる気は無いらしく……話を続けていた。


「というよりも、ヒカリがこの世界に来た理由もそれで分かるだろうしね。ってことで、どうせ見てるんでしょ! この世界のアタシのスペアボディ創ろうとしてるって理由で引き篭もりしてるんじゃないわよ!! 聞こえてるんでしょ、人間の神!!」

『『『は――――?』』』


 え、えーっと……神? 神って言った今。

 神って言うとアレだよね? ゴッド、GOD。……うん、ボクは今混乱しているね。絶対にこれは……。

 心からそう思っていると、突然フィーンがピクリと何かに反応したらしく天井を見て「あ」と呟いたため、全員の視線がそちらへと向いた。


「どうしたんだ、フィーン?」

「えっとねー、森の神様が獣人の神様と一緒に引き篭もりを連れて来るってー」

『『は?』』

「フィ、フィーン、それはいったいどういう……」

「あ、来たよー?」


 来る? 来るっていったい何が? そう思っていると、フィーンが見ていた天井辺りの空間に黒い円が現れ……中から、2人の女性が出てきた。

 一人は狐タイプの獣人と思しき女性だけど、着ている服装は薄い生地を幾重にも重ねたような感じのドレス。

 もう一人は緑色の髪をして、木葉で創られたような妖精が着るようなドレスを着たフィーンほどの少女。

 そんな2人が家の床へと降りると、全員が驚いた顔をしていた。


「やっほー、少し振りだねフィーンにティア。ロンたちも元気そうでなによりだよー♪」

「も、森の神様……。す、少し振りです」

「やほー、少し振りー♪」

「お元気そうで何より」


 手を挙げた少女のほうへとフィーンが駆け寄り、ティアは恭しく頭を下げ……ロンたちは軽く頭を下げていた。

 で、もう一方の女性に対しては……サリーとケモロリアリスがどういうわけか跪いていた。

 えーっと……多分、2人とも神様?

 そう思っていると、ボクの視線に気づいたらしく2人してこっちを見たけれど、すぐに何かに気づいたかのように目を見開き始めた。え、どういうこと?

 困惑しそうになっているボクだったが、未だ開き続けている黒い円の中からの声に一気に周囲の緊張感は崩された。


『いやーーっ! ゆったりと空から現世を眺める神様ライフをまだまだ楽しみたいのよーーーーっ!!

 しみったれた現世に降り立つなんて嫌よ~~~~ッ!!』

「往生際が悪いですね。早く降りて来てください」


 そう言いながら、獣人の神であろう女性が黒い円まで繋がるロープを力いっぱい引っ張っていった。

 その度に穴の向こうから「ぐげっ」だの「ぐえっ」だのと残念すぎる女性の声が聞こえてきていた。……いったい何が中に居るんだろう。

 物凄く疑問に思っていると、穴の向こうで抵抗する女性に堪忍袋の緒が切れてしまったらしく獣人の神は最終手段に出たようだ。


「ああもう、まどろっこしい! いい加減引き篭もり生活は終わりだッ!! ――どっせい!!」

「ぐええええええぇぇえぇぇええっ!! もげらっ!?」

「あー……やっちゃったよー。神の威厳って物がまったく無いねー。ってぼくもかアハハ♪」


 蟲をつぶしたような悲鳴と共に穴の向こうから女性が引き抜かれ、獣人の神がパワー系過ぎる行動に出たことに周囲はシンと静まり返っていた。

 ……えーっと、なにこれ?

 そうボクは心の中で思っていた。

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