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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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ヒカリとの出会い・前編

ルーナ視点です。

「ヒカリちゃん、良く眠っているわ」

「そうですか……、何があったかは目覚めてからですね」


 未来から来たアリスさんに地下へと連れられ、魔方陣の中央で眠る男女を見て倒れたヒカリちゃんをベッドに寝かしつけてから、わたしは皆が居るリビングへと向かった。

 わたしも皆と同じように置かれた椅子に座ると、アリスさんをじっと見たわ。

 その視線に気づいたのか、アリスさんは笑みを浮かべていたけど……聞くことは聞くことにしたの。


「ねえ、アリスさん。ヒカリちゃんはあの魔方陣の中央で寝てた男性をあにき……つまりはお兄さんと口にしていたけど、貴方は何か知ってるんじゃないの?」

「そう見えるの?」

「ええ、少なくとも。……わたしとシターちゃんはヒカリちゃんにお兄さんが居るだなんて聞いたことは無いわ。もしかしたら、失った記憶の中にあるのかも知れないけれど……」

「そうね。結論から言うと、アタシは判ってる。というよりも理解出来たって言うほうが正しいわね」


 やっぱり。そう思いつつ、わたしはアリスさんを見たわ。

 けれど、彼女は静かに目を閉じ……ゆっくりと首を振るったの。


「アタシは理解出来た。けれど、寝ている彼女が知らない中でアタシが勝手に喋るのはいけないことだと思うの。それぐらいは判るよね?」

「え、ええ……。そう、よね。目覚めてから聞かないと、ヒカリちゃんに失礼よね」

「そうですっ、それに……アリス様の口よりも、ヒカリ様からの口ですべてを聞きたいと思いますっ!」


 寝ているヒカリちゃんに心で謝りつつ、シターちゃんのそう言う姿を見ていると逆にアリスさんから質問が来たわ。

 質問……というよりも、時間潰しと言ったほうが良いのかしら?


「それじゃあ、こっちも色々と聞きたいんだけど? ……例えば、貴方たちとヒカリについて。とかね」

「シターたちとヒカリ様、ですか?」

「そうそう、例えばどんな風に出会ったか。とかね?」

「出会いですか? えーっと、シターの場合はライト様たちと最後に出会ったので、ヒカリ様とはルーナ様とライト様のほうが詳しいですよね? ルーナ様?」

「……アリスさん。それは、どういう……意味かしら?」

「別に? どうという意味は無いわ。ただ、ちょっとアタシの目ってこの家の中だと過去とか未来とかすべて……とまでは行かないけど、見ることが出来るみたいなの」


 息を呑みながら、わたしはアリスさんを見たけれど……彼女は悪びれも無く、そう言って自身の目の下に指を当てたわ。

 ……要するに、判ってる。そう判断したら良い、と言うことよね。

 そう考えて、わたしは溜息を吐いた。すると、視線がわたしへと一斉に注がれたわ。

 まあ、そっちのほうが良い……って思っておきましょう。


「シターちゃん、わたしとライくん、そしてヒカリちゃんとの初めての出会いはね――暗殺者と暗殺対象だったの」

「え? あ、暗殺……ですか?」

「そ、それは穏やかじゃないですね」

「て、ていうか暗殺? え、暗殺ってあの暗殺?!」


 わたしの言葉に驚く3人を見ていると、ティアさんたちのほうも色々とその言葉に思うところはあったようだった。


「暗殺……基本的には毒殺がメインだったな、あたしの国は」

「魔族が襲って来たからそれどころじゃなくなってたよねー?」

「暗殺か……、自分には無理な戦いかただな」

「男なら正々堂々拳で殴りあえよ!」

「あん、さつ?」

「暗殺って……、これだから人間は……」


 何だか色々と凄い言葉がティアさんから出てくるし……、暗殺されそうな立場に居たのかしら?

 そしてとりあえず、魔族4人の言葉には突っ込まない、突っ込まないわよ。

 そう思いながら、わたしは話をすることにしたわ。


「まあ、どうして暗殺されそうになったかって言うとね……、その頃のライくんってゆうしゃとしてはまだまだ弱かったけれど、王様からの指示でモンスター討伐よりも悪徳商人とか汚職貴族とかの悪事を暴くなんてことをしてたの。

 ちなみにわたしはそんなライくんの護衛役だったわけ」

「そういえば、シターも修道院に居た頃によくライト様のご活躍を耳にしていましたっ」

「そうなの? ……ああ、だから初めて会ったときにもう凄いくらいに目を輝かせてたのね」

「はいっ!」


 初めてシターちゃんに会った時のことを思い出したけれど、本当に懐かしいと思うわ。

 っと、今はシターちゃんの話じゃなくて、ヒカリちゃんだったわね。


「まあ、悪事を暴いて行き続けてたら、色々と怨まれることになっちゃったのよ。今になって思うけど、そういうのもあるからあの王様はわたしたちに任せてたんでしょうね……」

「……ああ、本当にあの王様って過去でも未来でもロクでもない人間ね……」

「そうなの? まあ、それで怨まれているって言うのを完全に知ったのは夜にライくんを家に送ろうとしていたときに待ち伏せを喰らっていたからなのよ」


 そう言いながら、わたしはあのとき……月明かりの光の下で見たヒカリちゃんを思い出し始めたわ。

 けど、思い出そうとしたところでアリスさんが思い出したように声を上げたの。


「ああ、そういうのに打って付けの翼人の島製の道具があったわ」


 席を立ち、アリスさんが席を外すと……すぐに、良く分からない平らな板のような道具を持ってきたの。

 そして、それを皆が見えるようにして置くと、そこから伸びる1本の線をわたしに差し出したわ。


「えっと?」

「じゃ~ん、おもいでテレビ~♪」

「あの、何で声を変な感じにしながら喋ってるんですか?」

「……あー、やっぱりヒカリじゃないと伝わらないネタかー……」


 変な声を出して、平らな板の名前を口にしたアリスさんだけど、すぐに不貞腐れたように頬を膨らませてから顔を普通に戻したわ。

 というか、ヒカリちゃんなら分かるの?


「これはね、転生ゆうしゃの人たちが元々居た世界にあったテレビという物を創ってみようって行って創った物なの。アタシは知らないんだけど、テレビって言うのはこの画面に映像を映すって言う物らしいんだけど……結局のところ、この線を持った人の記憶を読み取って、的確にその記憶を引っ張り出して映像で映すって道具なの」

「つまりは?」

「その線を握り締めて、思い出したい過去を思うとそのときの記憶を引っ張り出して映像に映してくれるって道具よ。試しにその待ち伏せの記憶から思い出してみて」

「は、はあ……」


 アリスさんの言葉に半信半疑ながら、わたしはその当時のことを思い出し始めたわ。

 そう、あれは………………。

「青狸!」

「タヌキじゃなくて、ネコ!」

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