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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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山の魔物溜

 ビッグウルフと彼女が心の中で名づけたモンスターは、口を斬っているからか大きな口を開かずに鋭い爪を光らせながら後ろ足で地面を蹴って襲い掛かってきたわ。

 けれど彼女はその攻撃を身体を屈ませることで回避すると同時に、背中に担ぐようにして持っていた剣をビッグウルフの前足の爪と爪の間に潜り込ませると振り下ろすようにして剣を前に押し込んだわ。振り下ろした剣はスッと爪と爪の隙間の肉を斬り、勢いを止めないままビッグウルフの片方の後ろ足を斬り落としたよ。


『GURRRRRROOOOOOOOOOOO!?』

「……うん。実戦に初めて使ってみたけど、良い感じに斬れるね」


 殺そうと襲い掛かった相手から逆に自慢の足を斬りおとされたビッグウルフは、痛みに唸り声を上げながら地面を転げまわっていたわ。それを見つつも彼女は自分で創り、切れ味を確かめた剣を見る。

 ギルドマスターに用意して貰った鉄鉱石から≪合成≫を使ってそこから余分な物を取り除いて、そこに幾つかの素材を混ぜ合わせて作り出した金属から創り出した剣。一応、クロモリって呼ばれている種類の金属を覚えている限りで真似て作ってみた結果なのよね。

 クロモリって何だって? んー、彼だった世界の金属でね、すっごく硬い金属だったの。まあ、うろ覚えな範囲で作ったから、なんちゃってレベルが酷すぎると思うけどね……。それでも普通の鉄で作った剣よりも遥かに硬いのよ。


「さてと、まだ続きそうだからとっとと倒させてもら――うわっ!?」

『GOOOAAAAAAAAAAAA!!』

「あっ……ぶなかったなぁ。ブレスなんて出来たんだ!?」


 とどめを刺そうと動けないビッグウルフに近づこうとした彼女だったけど、不意をつくようにしてビッグウルフは遠吠えとともに氷を纏った息を前面に吐き出してきたわ。いきなりで驚いたけど、彼女は土壁を作ってブレスから身を守っていたわ。

 けれど、そんな彼女に対して今だ巻き起こるブレスを切り裂くようにして数匹の狼モンスターが姿を現したわ。多分、こいつらは氷耐性でも付いていて、大勢で来た相手にブレスでダメージを与えるとともに確実に仕留めるためにビッグウルフの手下たちが戦場を駆け巡り蹂躙するというスタイルなんだろうね。だけど、相手が悪かったわ。

 牙を光らせ、爪を尖らせ、身動きの取れない彼女を嬲り殺そうと狼たちは飛び掛ってきたわ。だけど、彼女は剣を構えなかったの。そして狼の牙が彼女の柔らかな肉に突き立てられようとした――瞬間、彼女の左手が振るわれたの。

 直後、口を開けていた狼の頭を紅い何かが叩きつけられたの。その狼は何が起きたのか分かる前に頭を潰されて、他の狼も警戒しようとした直後に紅い軌跡がブレスが吹き荒ぶ中を走り抜けたんだけど、それが何かを知る前に軌跡上にいた狼の身体は寸断されたわ。

 自分たちの身体が分かれたことに気が付いていなかった狼たちは少しピクピクと動いてから、絶命したの……と、ごめんごめん。あんたにはちょっと怖かったわね。うん、気をつけるわ。でもどうやって彼女が狼を倒したかって? それはね……。


「強度を調べる目的で創ってたけど……殴りつける以外に糸でも切れるのか。本当に危険なヨーヨーだわ……」


 伸ばしていたヨーヨーを本体の回転で手元に巻き戻しながら、彼女は苦笑したわ。間違ってもこれは人に向けて使って良い道具じゃないと心に誓いながらね。

 そして、手下たちが馬鹿な人間を殺し終えたと思ったビッグウルフはブレスの勢いを徐々に弱め始め……ブレスが止まるとそこで彼なのか彼女なのかは分からないけど、それが見たのは分断された手下たちの死体だったわ。地面を血で濡らしながら、綺麗に切られた肉塊を前にビッグウルフは悲しみと怒りの遠吠えを空に放ったの。

 けれど、その手下が殺された悲しみに嘆くビッグウルフに猶予を与える彼女じゃなかったわ。


「ウォンウォンウォンウォン五月蝿い。とっとと倒れろ!」

『GAAAAAWWWWOOOOOOOOOOOOOO---GA!?』


 彼女は一気に跳び上がると、剣を構えてビッグウルフとの距離を詰めたわ。相手も再びブレスを放とうとしていたみたいだけど、それをする前に彼女は鼻っ面に剣を突き刺すと、ビッグウルフを地面に縫いつけ……体の中に魔力を循環させて、掌に火の属性を纏わせビッグウルフの顔目掛けて解き放ったわ。

 直後、ジュッと赤熱の光球がビッグウルフを包み込み、焼き焦げる音と肉の焦げる臭いが周囲に漂い……ビッグウルフがいた場所には焼け焦げたナニカがあって、それを少し小突くとボロボロと焦げが落ちて骨だけがそこに残っていたわ。

 周囲が静まり返ったことを確認して、一息吐くと彼女は剣を鞘へと納めたの。けれど、魔物溜はまだ消えていなかったわ。

 どうしたら消えるのかと首を傾げていると、寸断された狼の死体と残された骨に周囲に溜まっていた紫色の霧が纏わりつき……グニャグニャとひとつになり始めたわ。


「……何ていうか、アンデッド系と悪魔的なモンスターとかそんな感じ?」


 彼女はポツリと呟きながら、紫に黒を混ぜたような色合いの不定形なモンスターを見ていたわ。もう、テケリ・リとでも言うんじゃないのかしらね……。見たら狂ってしまう感じの……。ああ、気にしないでこっちの話だからね。


 それじゃあ、続きを話すね――。

サクッと連続戦闘開始。


ちなみに彼女が使っている剣は、斬ることに特化しているブレードタイプです。

フォードに創ってあげたのは汎用性が高いロングソードタイプです。

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