表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
308/496

時狂いの家

 戸惑いながらも片手を上げてきた師匠の面影を持つ女性を、ワタシたちは見ます。

 そんな中、その女性の背後から恐る恐る顔を覗かせる人物が居ました。


「だ、だれぇ?」

「え……?」


 舌足らずに喋るその子は、狐系獣人特有の耳と尻尾を持った4歳ほどの金髪碧眼の少女でした。

 そして、その少女もやはり師匠に良く似た面影を持っていました。

 師匠の面影を持つルーナと同じぐらいの年齢の女性と4歳ほどの少女。……えっと、どういうこと。でしょうか?

 ワタシが激しく混乱していると、空気を読まないのかそれとも呼んでいるのか……フィーンが前に出て満面の笑顔を浮かべました。


「わーい、アリスがいっぱいだー♪ おっきいアリスにちっちゃいアリス? どうしたのどうしたの??」

「え、い……いや、人違い……じゃないですかねー?」

「えー? でも、少し違ってるけど全部アリスだよねー?」

「……どういうことだフィーン?」

「良かったら、教えてもらえませんか?」

「うん、いいよー? えっとねー」


 驚きながらはしゃぐフィーンちゃんに、ワタシとティアが説明を求めます。

 すると、フィーンちゃんは説明を始めましたが……良くわかりませんでした。

 何やら、この家の前に来るまでに通った家の中に居た人たちも変わった感じがしていたけれど、今目の前にある家は一番変わっているらしいです。

 何故なら、その家の中に居るのは見える形は違えど全てがアリス……師匠だと、フィーンちゃんは言っているからです。

 どう言うことかと首を傾げていると……、観念をした風に師匠の面影を持った女性が両手を挙げました。


「ああ、もう降参降参。妖精の目を持っているフィーンを連れて来たら駄目じゃない、ワンダーランド」

 ――ブウ?

「あんたねぇ、わかっててやってたでしょ? ……まあ、そうでもしないと現状を打破出来ないってことか」

「え、えっと……?」

「立ち話もなんだから、中に入って話しましょ。中は広いから安心して入ってもいいわよ。サリー、フォード、ティア、フィーン、ロン、タイガ、フェニ、トール」

「あんない、するぅ」

「ああ、転ばないように気をつけなさいよ」

「んぅ……あ、あぅ」


 女性によって中へと招かれ、ワタシたちは家の中へと入りました。

 ……中は外見とまったく違っており、見た目の3倍ほどの広さになっていました。

 しかも、リビングとキッチンが分かれています。

 それに驚いていたワタシですが、舌足らずの声が聞こえ下を見ると……尻尾を振りながら、獣人の少女がふんすふんすと息巻いていました。どうやら案内をするという使命感に燃えているようですね。

 ですが、女性が注意した直後にコロンと転んでしまい、かぼちゃパンツが丸見えとなってしまっていました。

 そしてコロリと転がってボーっとしていると、すんすんと泣き始めました。


「え、えっと?」

「ああもう、しっかりしなさいよね。ほら、抱き上げてあげるから泣き止みなさいよ?」

「にゅぅぅ…………」

「……母だな」

「お母さんね」

「母ちゃんって、ああいう感じなのか?」

「マ、マ?」

「いや、母じゃないから」


 そんなことを口にするロンさんたちに苦笑しながら、女性はリビングへとワタシたちを案内しました。

 ソファーに座ると同時に、何処から現れたのか妖精と思しき存在がワタシたちの前へとお茶を置いて行きました。

 ……チラリとしか見えませんでしたが、それもやっぱり師匠に面影が似ていた様な気が……。

 そう思っていると、少女を側に置いた女性が出されたお茶を飲んで気を取り直したのか、ワタシたちを見て口を開きました。


「改めて、ようこそ時狂いの島こと翼人の島へ」

「え? ここって、翼人の島だったんですか?」


 開口一番放たれた言葉に、ワタシは驚きの声を上げ……同じように何名かが驚いた顔をしているのが見えました。

 無理もありません、この街に来てから度々その名前は聞いていましたし海からは全く行けないと言われている場所なんですから。

 それにしても、時狂いとはなんでしょうか? とりあえず……気になるし聞くべきですよね。


「えっと、時狂いとは?」

「簡単に言うと、時間が狂っているから時狂い。要するにここは……あるはずだった未来、あったかも知れない過去が混ざり合っている島なわけ。まあ、そんな訳だから、世界に絶望した転生ゆうしゃが隠れ住むには打って付けの場所だったりするわよ」

「……なるほど、この家に来るまでに感じた視線は転生ゆうしゃたちだった。と言うことか」

「そうよ。けど、あまり触れないであげてちょうだい。彼ら全員人間不信になってるから」


 そう言って、女性は苦笑しながら少女の頭を撫でていました。

 なるほど、転生ゆうしゃばかりが居るからああいう食べ物や飲み物が作られているんですね。

 そんな風に思っていると、ある疑問が浮かびました。


「あの、それで……貴方がたは?」

「そこまで言ってもわからない。って思わなくても良いわよね?」

「……はい」


 先程、時狂いの説明を女性は言ってくれました。だから、ワタシは理解できています。

 つまり目の前の女性と少女、彼女たちは……師匠がなる可能性があった未来とあったかも知れない過去という訳、ですよね?

 彼女たちに問い掛けるように見ると、女性が頷くのを見ました。


「アタシにとっては久しぶりだけど、貴方たちにとっては初めましてと言えばいいのかしら? 人間として成長していったゆうしゃのアリスよ。それでこっちは獣人に代わった瞬間に産まれた、獣人として生まれていた場合のアリスよ」

「しくぅ?」


 そう言って、2人はワタシたちに頭を下げるのでした。


 ……あの、本物というかこの時代の師匠は?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ