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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
307/496

飛ばされた先

「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁあああああああ!!?」

「きゃああああああああああ~~~~!!」

「なっ、何よこれぇぇぇぇぇーーーーっ!!?」

「これって、まさか《異界》?! けど、人を移動させるとか聞いたことないわよっ!?」

「ヒカリさまぁぁぁぁああああぁぁぁぁっ!! ルーーナ紗まぁああぁぁぁぁああぁぁぁっ!!」

「フィーン、しっかり掴まっているんだ!!」

「わー、おもしろーい♪」

「………………………………………………」

「ま、回るぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「気持ち、わる……いかも…………」

「こういうときこそ飛ぶ翼の筈なのに、飛べないってなによーーーーっ!!?」


 ワタシたちが吸い込まれた渦の中、そこは真っ暗な空間で……グルグルと眼が回るような感覚を味わいながら、周囲からフォードくんやヒカリ、ティア、フェニさんの声が聞こえました。

 こ、これっていったいなんですかっ!?


 ――ブウ!


 心の底からそう思っていると、空間全てに響き渡るように先程聞いたワンダーランド……でしたっけ、その鳴き声が響き渡りました。

 直後、下が光ったと感じた瞬間――ワタシたちは外へと投げ出されました。


「あうっ!?」

「はうっ!?」

「ひゃん!?」

「ひゃぅぅ……!」

「「うげっ!?」」


 少し落差があったからか、ワタシを含めて数名の人たちがお尻を強く打ったらしく、ドスンと音が聞こえて痛みに声が洩れているようでした。

 というか、フォードくんとタイガくんの声が重なっていたのはどうしてでしょうか……?

 そんな風に思いながら、いきなり明るい場所に出たためにチカチカとする目を瞬かせて、慣れさせると……漸くどんな状況かわかりました。

 まあ、簡単に言うと……ワタシの下にフォードくんが潰れていたわけです。


「……えーっと、フォードくん? 今ならまだ許しますよ?」

「サ、サリーさん……それは、冤罪です……というか、早く降りてください。おも――ぐえっ!!」

「フォードくん、女性に重いなんて言ったらいけませんよ?」


 失礼なことを口にしようとしたフォードくんの腹を蹴って黙らせると、そろそろどこうと考えワタシは立ち上がります。

 そして、立ち上がって周りを見始めて……漸くここがどんな場所なのか理解出来ました。

 多分、林の中にある集落のような場所です。……えっと、何処の集落でしょうかここ?

 混乱しながら周囲を見ているのですが、気配からして村に居るであろう人物と家の数が合いません。

 どう考えても、空き家が多い……っていう感じでした。


「ここって、何処でしょうか?」

「あいたたた……も、森、ですよね?」

「けど、見覚えが無い樹が多いな? 森の国でも見かけたことは無いぞ」

「面白い樹だねー? ツンツンしてるー♪」

「……松林の中に、ログハウスって異様な光景だよね」


 口々に見たことも無い樹を見ていましたが、時折ヒカリが遠くを見るように何かを呟いています。

 どうしたのでしょうね? そう思っていると、白いもこもことした物体がピョンピョン跳ねて行くのが見えました。

 えっと、ワンダーランド……ですか?


 ――ブウ、ブウ!

「付いて来いって、言ってるよー?」

「そうか……。どうする?」

「えっと……、とりあえずついて行きましょう」

「そう、ね」


 フィーンちゃんの通訳を聞いて、ワタシたちは話し合い……その場で立っているというのも無理だと判断し、ワンダーランドの後に続くことにしました。

 ピョンコピョンコふりふり、そんな感じに丸い尻尾を揺らしながらワンダーランドが前へ前へと進んでいくのをゆっくりと見ながら辿り着いた場所は……集落の一番奥にあった家でした。

 その家には人が居るらしく、パンが焼ける良い香りが漂って来ました。

 香ばしい匂いに尻尾を揺らしていると、ワンダーランドが体当たりするようにして家の扉を叩きました。

 すると、来客に気づいたのか家の中から物音が聞こえ、扉が開かれました。


「はいはーい? って、ワンダーランド? どうして此処に?」

「……え?」

「え? ――うげ」


 扉を開けて現れた女性の面影に、ワタシはつい声を漏らしてしまいました。

 その声でワンダーランド以外にも人が居たことに気づいたらしい女性でしたが、ワタシたちを見て……困った様子を見せました。

 けれど、困った様子を見せてから少しして……軽く手を挙げてきました。


「ハ、ハロー?」


 戸惑った様子を見せながら、女性はワタシたちに挨拶をしたのでした。

 その……師匠の面影を持った女性は。

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