彼女たちの自己紹介
「ロ、ロン! どう言うことか説明しなさいよ!!」
予想通り、と言いますかタイガ(?)くんの他にも市で会った方々が居ました。
それだけではなく、先程ワタシたちの拠点に現れていた外套を羽織った女性と女の子も居ます。
ちなみに驚いているのはタイガ(?)くんとフェニ(?)さんの2人だけで、他の方々は分かっていたのか、静かでした。
「よう、来たかテメーら。紹介しようと思うんだが……まあ、こいつらに言わせたほうが良いよな?」
「構いませんが……えっと、このまま紹介って出来るのですか?」
「あー、まあ……そうだな」
シャーグさんにそう言われつつも、ワタシはそう言い返しながら彼らを見ます。
……タイガ(?)くんとフェニ(?)さんが青年に向かって口論をし続けていました。
その様子を見ながら、シャーグさんは苦笑いを浮かべつつ頭を掻きます。
けれど、このままでは話が出来ないと判断したのか、パンパンと手を叩き口論する2人を静かにさせました。
「ぎゃーすかぎょーすかは何時だって出来る。だから、一度オメーらで自己紹介をしろ! さもねーと……わかんだろ?」
「「――ッ!! わ、わかった……」」
「……すまない、連れが五月蝿すぎただろう?」
「い、いえ……気にしなくても良いですよ?」
シャーグさんの一撃を貰ったことがあるのか、口論というか暴れていた2人は叫ぶのをピタッと止めて大人しく席へと座りました。
そして、静かになってから青年がワタシたちを見ながら、頭を下げてきましたが……彼は悪いことをしていないはずなので、謝らなくても良いとワタシは感じました。
多分ですが、この青年はかなり性格が真面目なのでしょうか?
そんなことを思っていると、青年がいきなり座っていたソファーから立ち上がり、ワタシ……いえ、ワタシたちに顔を向けました。
「改めて自己紹介をさせてもらおう、自分の名前はロンだ」
「は、はあ……」
「ト、トー……ル……だよ」
青年、ロンさんが自己紹介をしたと思ったら、ちょこんと座っていたトール(?)ちゃんも恥かしそうに立ち上がって自己紹介をしました。
……ナンデショウカ、この愛らしい生物は? 何だか護ってあげたくなるようなオーラを醸し出していますよね。――って、何を考えているんですかワタシは! ワタシには師匠という愛しい存在が……って、落ち着きましょうワタシ!
そんな風に心の中で自重していると、トールちゃんが再びちょこんとソファーの端に座るのを見て……不貞腐れながらフェニ(?)さんが自己紹介を始めました。
「フェニよ。けど、ウチはあんたらと仲良くするつもりなんて無いから!」
「オレも同じ意見だ! それに誰が名乗るもんかよ!!」
「……お前らは……。すまない、とりあえず名乗らなかったこいつの名前はタイガだ」
「えっと、これはご丁寧に……ありがとうございます?」
頬を膨らませてそっぽを向くタイガくんとワタシたちを睨みつけるフェニさん、そんな2人に呆れた様子を見せながら、またもワタシに謝罪するロンさん。
……何ていうか、大変ですね。
「さて、次はあたしたち……だな」
そう思っていると、ソファーではなく椅子に座っていた外套で姿を隠した女性が立ち上がり、頭から被っていた外套をパサリと外した。
その姿を見て、ワタシは驚くと同時に見惚れました。
何故なら、濃い褐色肌をしたエルフなんて初めて見たからです。そして、そのエルフの顔立ちは種族特有の妖精のように儚げな印象を持ちながらも何処と無く凛々しいように見えたからでした。
短く切り揃えた鈍い銀色と黒色の二色を持った斑色の髪を軽く整え、水のように綺麗な蒼色と真っ黒の瞳でワタシたちを見ながら、優雅に笑ってきました。
「あたしの名前は、ティアという。それでこっちは……」
「フィンはフィーンって言うんだよー♪ よろしくねー!」
そう言って、ティアさんは一礼をし、フィーンちゃんは大輪の花のような笑顔をワタシたちに向けながら元気に挨拶をしていました。
とりあえず、そんな彼女たちへとワタシも頭を下げ返しました。
そして、ワタシに続いて、ヒカリ、ルーナ、シター、フォードくんも頭を下げています。
「じゃあ、ワタシたちも自己紹介を――」
「いや、それには及ばない。何故なら、先に調べさせてもらっていたからだ。サリー、フォード、ヒカリ、シター、ルーナ」
「そ、そうですか…………?」
「ちゃんと調べてるのね」
「って言うか、何時の間に……」
「しょ、初対面で呼び捨てにされてますよっ!?」
「やった……。ちゃんと名前を呼んでもらえた……!」
ロンさんがワタシたちの名前を口にしていくと、周りからそんな声が聞こえてきました。
……フォードくん。良かったと言っておきましょうか……?
そんな風に思っていると、シャーグさんに席に座るように促されました。
「何時までも立ち話って言うのもどうかと思うからよ。早く椅子に座れ、オメーら」
断る道理が無い、ワタシたちはシャーグさんの言葉に従って近くの椅子にそれぞれ腰掛けました。
そうして、話しは始まりを迎えました。