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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
303/496

話を聞きに

「食事を終えましたし……そろそろ行きますか?」

「あ、そう……ですね」

「別に良いんじゃない?」

「うーん、少しだけ休ませて欲しいかしら?」

「シ、シターも洗い物を先に済ませたいですっ!」


 食後、淹れられたお茶を飲みながら、買出しの際に買っていたドライフルーツを食べて口の中に残る苦味を洗い流してひと段落着いてから、ワタシがそう言うと歯切れが悪い口調でフォードくんが頷きました。

 ですが、ヒカリたちはまだ休みたいようでした。……まあ、シターのほうは洗い物を先にしないといけないですよね。

 頭から抜けていた事実を思い出して、ワタシは頷きます。


「はい、分かりました。それでは食後の後片付けを終えてから、行くことにしましょうか」

「わ、わかりましたっ! それじゃあ、急いで洗いますねっ!」

「じゃあ、わたしも手伝うわ」


 シターが急いで立ち上がりキッチンに向かうと、後を追うようにしてルーナも奥へと向かっていきました。

 それを見ながら、ワタシは申し訳ないと思ってそれを口にします。


「いえ、別に急がなくてもいいですよ? ……って、聞こえていませんね」

「……ところでさ、サリー。聞いてもいい?」

「何ですか?」


 苦笑しながら、キッチンに向かっていったシターとルーナを見ていると、不意にヒカリが半目でワタシをジトッと見始めてきました。

 その視線に、ワタシは微笑みながら問いかけを待ちます。


「行く気満々にサリーは言ってるけど、ボクには何か躊躇しているように見えるのは気のせいかな?」

「…………………………………………」


 その言葉に、ワタシは微笑んだまま固まります。

 ……やっぱり、そう見えましたか? そう心から思いながら、ワタシはヒカリを見ます。

 見つめられる視線で彼女もそれが当たっているのだと理解したようで、更にずばずばと物を言い始めました。


「やっぱり、躊躇してたんだ……。見てると何だか空回りっぽく見えたからさ。……アリスに関係あるってこと?」

「……えーっと、その…………。師匠に会いたい、もしくは師匠を知ってる人に話を聞きたいって言いました。ですが……、こうして知る人が現れたって知ると……怖いんです」

「怖い?」

「はい、ワタシが知らない師匠を知るのが、怖いんです……」


 ヒカリの言葉にワタシはそう答えます。だって、師匠と離れ離れになって3年。

 ワタシも成長しましたし、他の皆さんも成長しました。だったら、師匠も成長しているはずです……。どんな風に成長しているのか? もしかしたら、会いたかったのはワタシだけで、師匠はワタシのことを忘れていたりしないだろうか?

 そんな不安がワタシの頭を過ぎり始めて、不安になり始めていることをワタシはヒカリにぽつりぽつりと口にします。

 それを聞いていたヒカリは呆れたように溜息を吐いて……ワタシを見ました。


「はあ……、サリーって行け行けな感じに見えるのに、いざというときに躊躇するよね?」

「そう、ですか?」

「うん、そう見えるね。まあ、基本的に食べ物とか色んなときは大丈夫だろうけど、たまに今みたいなのを見かけた感じがするよ?」


 ヒカリの言葉に、ワタシはそうだったという事実に驚きつつも納得もしました。

 けれど、それがどうしてなのかは理解出来ません。

 そう思っていると、ヒカリが言葉を選びつつもこちらを見ます。


「それで……結局行く? それとも、行かない? 来てくれと言ってたけど、ドタキャンすることも良いと思うけど?」

「…………いえ、行きます。そのために、ワタシはこの街に来たのですから」

「そ。じゃあ、迷うこと無く行こうよ」

「そう……ですね。そう、ですね。はいっ!」


 ヒカリと話したからか、少し心が軽くなりワタシは冒険者ギルドに胸を張って行くことを決意しました。

 そして、洗い物を終えた2人が戻ってくるのを見てから、ワタシたちは冒険者ギルドに向かうことにしました。

 ちなみにフォードくんは何か言いたそうでしたが……、しばらくしてワタシの顔を見てから小さく頷いて行くことに同意していました。……どういう意味でしょうか?


 ●


「あれ? 丁度マスターの指示で呼びに行こうと思っていたところだったんですが、先に来ましたね」


 冒険者ギルドの建物に入ると、丁度シャッバさんが出かけようとしていたところだったらしくワタシたちを見て驚いていました。

 え? あの女性に呼びに来るように頼んでいたのってシャッバさんでもなければ、シャーグさんでもなかったんですか?

 その発言に驚きながら、ワタシたちはシャッバさんに導かれるようにして、奥の部屋へと進んで行きました。

 すると奥のほうから、騒々しい声が聞こえてきました。


『何でオレたちがここに呼ばれなくちゃいけねーんだよ!』

『呼ばれたのだから仕方ないだろう。それに、規約違反などが原因で呼ばれたというわけじゃないんだ。そう怒鳴るな』

『はあ!? ワケがわからねーんだけど!?』

『ガハハ、本当元気だなぁテメーは!!』


 聞こえてくる聞き覚えのある声に、ワタシはシャッバさんを見ます。

 すると、彼女は苦笑しながらワタシたちを見るだけでした。

 ……要するに、良くあること。というわけでしょうか?

 そう思っていると、騒がしい声が聞こえる部屋の入口の前にシャッバさんが立つと、部屋の扉をノックし始めました。


「マスター。サリーさんたちをお連れしました」

『おぅ、はえーな。兎に角中に入って貰え』

「はい、それでは失礼します。……どうぞ」

「えっと、失礼します」


 シャッバさんに導かれるままに、ワタシたちは部屋の中へと入って行きました。

 すると、ワタシたちに気づいた先程から騒がしい声の主は驚いた声を上げました。


「なっ!? て、てめーらは!! 何で、ここに来てんだよっ!?」

「ああ、やっぱり師匠の関係者って彼らでしたか……」


 何となくな予感を感じていたワタシは、ソファーから立ち上がってワタシたちを見て驚きの顔をするタイガ(?)くんを見ながら、そう言いました。

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