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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
299/496

済崩しの騒動

1/6 修正

 《火炎》を《火球》に変更。

 ……何でしょう、泣いている小さい子を前に謝っているフォードくんですが、別の見方からすればフォードくんがその子を泣かせているようにしか見えませんよね。

 そう思っていると、ワタシの予想は当たっていたらしいです。


「てめぇ! なにトールを泣かせてやがるッ!!」

「タ、タイガ……?」


 怒気が込められた声に振り返ると、つい先程ワタシが食べたかった肉を持って行った猫系獣人の少年が立っていました。

 しかも、不用意に動くとすぐに襲い掛かってくるといった感じの様子が見受けられます。

 けれど……そんなことに気づかないのがフォードくんらしく。少年に気づいた彼は振り返り、手を少女のほうへと向けました。


「ああ、良かった。この子の友達か? だったら、この子を――うわっ!?」


 その瞬間、一気に間合いを詰めた少年はフォードくんへと殴りかかってきました。

 そして、フォードくんは運が良いのか悪いのか、その場で足をもつらせて転んでしまい、少年の拳を回避することが出来ました。

 ですが……あの拳、当たればフォードくんはただじゃすまない威力じゃないですか……。


「逃げろ、トール! こいつらは人攫いなんだろ!!」

「ちっ、ちが――」

「大丈夫、心配すんな! こんなやつら、オレに掛かればちょちょいのちょいだ!!」


 少女のほうは何かを言いたそうでしたが、少年がそれを遮るかのように力いっぱいそう言います。

 ちょちょいのちょい。ですか? ちょっと社会というものを教えてあげたほうが良い……ですよね?

 そう思いながら、張り付いたような笑みを浮かべながら、ワタシはフォードくんへと近づくと少年がワタシに気づいたようでした。


「あん? あ! あんたさっきのおばさん! そうかっ、お前も人攫いの仲間だったんだな!?」

「違う、と言っても聞きそうに無いみたいですし、先程の肉の礼もありますので……少し痛い目を見ますか?」

「はんっ! おもしれぇ! だったら、痛い目に遭わせてみろよ!!」


 そう言って、自信満々の笑みを浮かべながら少年はワタシへと殴りかかって来ました。

 対するワタシは、殴りかかって来た拳を後ろに跳ぶことで回避しましたが、やっぱり容赦が無い一撃だと思います。

 そして、バックステップを読んでいたのかワタシが地面に足を付けるよりも先に飛び掛るようにして前へと突き進んできました。ですが、ワタシはその勢いを利用してクルリと回転しました。

 一方で少年のほうは勢いが押し殺しきれなかったのか、テーブルへと飛び込んでしまいました。

 そこでようやく周りの人たちもこの騒ぎに気づきだしたのか、騒ぎ始めました。


『ケンカだケンカー! 張った張った、どっちが勝つと思うよっ!?』

『猫少年に50!』

『犬のおっぱいちゃんに200!!』

『てめぇ、おっぱいで選んだだろっ!?』

『んだよ、悪いか!? いいだろ? いっぱい揺れまくってるんだからよぉ!!』


 向こうから聞こえるそんな喧騒にワタシは微妙そうな表情を浮かべます。

 というか、おっぱいちゃんって何ですかおっぱいちゃんって!

 そんな風に心から思っていると、転んでいた少年が身体を土ぼこりで汚しながら起き上がるのが見えました。


「へっ、やるじゃねぇかよ! だったら、オレも容赦しねぇぜ!! 待ってろよ、トール! 今助けてやっからよー!」

「だ、だから、ちが――っ!」

「喰らいやがれ! <ファングブレ――「タイガ! あんた何してるのよっ!?」――うげ、フェニ……」


 少年からワタシを舐めていた態度が少し無くなり、腰溜めに拳を構え……踏み出そうとした瞬間、少年を叱り付ける声が向こうから響き渡りました。

 振り向くと、ヒラヒラとした飾り布が大量に付けられた黒いドレスを纏ったフェニと呼ばれた鳥系の女性が近づいてくるのが見えました。

 見慣れない服だと思っていたら、何故だかヒカリが「何で、魔法少女衣装の次はゴスロリ……」と頭を痛めていました。……ゴスロリ?

 そう思っていると、フェニ(?)さんは少年ことタイガ(?)くんに近づくと、力いっぱい頭を叩きました。


「いてぇ!? な、何するんだよっ!!」

「あんたねぇ、何いきなり暴れてんのよ! ウチらは余り目立つ気は無いって言ってるでしょ!!」

「け、けどよフェニ……トールが……」


 頭を押さえながら、タイガ(?)くんがこちらを指差すと、フォードくんたちと退避していた少女……何度も名前が出ていますから、トール(?)ちゃんが驚いた様子をしていました。

 そして、フェニ(?)さんもトール(?)ちゃんに気づいたのか、目を見開きました。

 ……普通に連れ帰ってくれることを望むのですが……あ、これ無理そうですね。

 そう思っていると、フェニ(?)さんから揺らめくような紅蓮の炎が燃え上がり始めました。


「そう、分かった。分かったわ、トール。怖かったわよね? だけど待ってて、すぐにウチが助けてあげるから」

「フェ、フェニおねえちゃんっ、ちが――」

「ウチの可愛いトールを攫おうとした報い、死を持って償わせてやるわ!!」


 そう叫んだ直後、フェニ(?)さんは冒険者のカバンから詠唱補助のためであろう杖を取り出し、ワタシたちに向けてそう宣告しました。

 ですが、それよりもワタシはフェニ(?)さんの持つ、杖に目を奪われていました。

 その杖は金属製だと思いますが、見覚えのある赤と金の2種類が巻き付いた杖でした。


「その、杖……。まさか――」

「彼の者を燃やせ! 《火球》!!」


 そして、フェニ(?)さんの言葉と共に杖の先に填められた金属球が、朱金色の輝きを放ち――巨大な火の玉がワタシに向かって飛んできました。


来てくれ、ブレーキ役ぅぅぅぅぅ!!

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