表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
297/496

買出し・後編

 準備を整えて、拠点から出たワタシたちは鍵を掛けると冒険者ギルドに向かって歩き出しました。

 少し慣れない道のりですが……、掃除道具を取りに昨日も通った道なので分からないということはないと思います。

 そして……運が良かったのか、記憶力が良かったのか、ワタシたちは冒険者ギルドの前へと辿り着くことが出来ました。


「改めて来ましたが……、朝はこんなに人が多いのですね」

「うん、人間の国の冒険者ギルドを思い出すよ」

「そう、ですね……っと、しんみりしている場合じゃないですよね! 兎に角、中へと入りましょうか!」


 静まり返った考えを振り払いながら、ワタシはそう言って冒険者ギルドの中へと入りました。

 ギルドの中は魚人だけでなく、人間、獣人、それにエルフと様々な種族が居ました。そんな様子を見ながら、ワタシは改めて思いましたが……ここのギルドは昼よりも朝が凄い賑わいみたいですね。

 そんな風に思いながら、ギルドホールを歩き、受付に並んでいると視線を感じ……そこを向くと、初めて此処に来たときにぶっ飛ばしてしまった冒険者のパーティーが居ました。

 ワタシたちを見ていたことに気づかれたのか、彼らはすぐに目を反らしました。

 そんな彼らを見ながら、何も起きなければ良いと思いながら受付の順番が来たので前に出ると……シャッバさんとは違う受付の人でした。

 とりあえず、受付の人全員に伝わっているだろうと考えながら、ワタシは聞いてみると……。


「申し訳ありません。それはシャッバか、ギルドマスターのどちらかに聞かないと分からないと思われます」

「あ、そ……そうですか。えっと……、じゃあついでに……商業区って何処にありますか?」

「商業区ですか? それでしたら……」


 そうして、ワタシたちは商業区までの行きかたを教えて貰い、冒険者ギルドを後にしました。

 ですが……シャーグさん、出来れば教えておくようにしておいてくださいよ……。


 ●


「獲れ立ての魚はいらねぇか!? 今ならなんと――」

「――その店よりも、こっちのほうが安いぜー!」

「んだとこらぁ!!」


「いらっしゃいいらっしゃい、森の国の港から手に入れた果物だよー!」

「わー、良い香りー♪」

「面白い色をしてるけど、どんな味だろう?」


「おっ、お目が高いねー。こいつぁ、そんじょそこらの……」

「この壷は良い物ですぜ、旦那ぁ」

「珍しい宝石だなぁ!」

「これは翼人の島からの仕入れたもんだよー!」


「す、凄い活気……ですね」

「はっ、はいっ、それに……前の魚人の町じゃ見たことも無い物も多く見かけますっ」

「それに……商業区って言うよりも、朝市って感じに見えるね」

「おっ、美味しそうな匂いがするぜ……!」


 様々な声が聞こえる露天が並んだ通りを見ながら、ワタシたちは目を点にしながら目の前の光景を見て驚いていました。

 何故なら、商業区のはずの場所にあるのは……露店、露店、露店と全て露店だったからです。

 ですが、置かれている商品の殆どはちゃんとした物である上に値段も良心的に思えました。

 そんな感じに色んな露店を見ながら歩いていると、色んな店があるのが分かりました。

 周辺の国の果物や野菜を売る店、国の自慢である獲れ立て新鮮な魚を売る店、獲れた魚を日干しして干物にした物を売る店、量産品などを売る武具屋、冒険者の服を基本的に取り扱う服屋、森の国から仕入れたという奇抜な服を取り扱う服屋、翼人の島から仕入れたという商品を売る胡散臭い店。

 ちなみに向こうには食べ物系の店があるのか、良い香りが漂ってきていました。

 そんな様々な店を見ながら、ワタシたちは歩き……、目的の店である布を売る店を見つけました。


「カーテンですか? 一応、倉庫のほうにはあると思いますが……」

「ありますか? でしたら、歓楽街の今から言う場所に夕方に届けてもらえませんか?」


 そう言って、ワタシが店の場所を口にすると、何故か店員は顔を赤らめ……って!

 もしかして、その店が冒険者ギルドの拠点になってるって知らないんじゃないんですか!?

 そう思いながら、問い質すと……その予想は当たっていたらしく、顔を赤くしながらワタシたちは説明を行いました。

 と言うより、説明していなかったらワタシたちはこの手のお仕事の人って思われたってことですよね? ……あ、危なかった。

 カーテンの代金を支払いながら、ワタシは心からそう思いました。


「それじゃあ、次は……必要な物の買出し、ですね」

「は、はいっ。シターが欲しいのは……」


 それからワタシたちは、シターが購入したいと言った足りない香辛料や食材を買い込んでいき、それを終えてから休憩を兼ねて食べ物が売られている区画へと足を向けました。

 その区画に近づくに連れて、ワタシの鼻には美味しいにおいがいっぱい漂ってきて、知らず知らずの内にブンブンと尻尾が揺れていました。

 ですが、そのことにワタシは気づいておらず……他の方々に生暖かい瞳を向けられているのにも気づきませんでした。

 そしてその区画に辿り着くと、とりあえずワタシたちは好きな物を買って来るという話になり……散り散りに分かれました。


「とりあえず、肉と飲み物……ですね」


 爛々と目を輝かせながら、ワタシは美味い肉が売られている屋台を探すために鼻をひくつかせます。

 そして、そのお陰で……ワタシは周辺の屋台の中で一番美味しそうな匂いがする肉の屋台を見つけることが出来ました。

 なので、ワタシはすぐにそこで購入することにしました。


「すみません、ひとつ下さい」「おっちゃん、肉くれ、肉!」

「え?」「ん?」


 同時に声を上げていたことに気づき、横を向くと……白と黒、2種類の髪をした猫系の獣人の少年が立っていました。

次回、肉☆争奪戦……かな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ