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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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買出し・前編

「んっ……ああ、もう朝ですか……」


 窓から差し込んでくる陽の光に、ワタシは身体を洗いたてのシーツを頭に被りながら身動ぎをします。

 ですが、カーテンなどが無い窓から差し込む陽の光は温かすぎるのか、ワタシはもう一度眠ることが出来ませんでした。


「……カーテンなどを買ったほうが良いですね…………」


 そう呟いてから、ワタシはベッドから起きると……軽く身支度を整えて、部屋から出ました。

 ちなみに話し合った結果、ワタシたちは2階の部屋を使わせてもらうということにして、フォードくんのみを1階にという風になりました。

 少し酷いと思いますが、周辺の治安のことを考えると当たり前だと思います。まあ、襲ってくる人が居たら叩きのめすつもりですけどね。

 そんなことを考えていると、1階に下り終えており……食堂のほうへと近づくと良い香りが漂って来ました。


「うん、良い匂いですよねー」


 そんな風に呟くワタシですが、ブンブンと尻尾が揺れていることに気づいて、周りを見て……誰にも見られていないことを確認してから、ホッと息を吐きました。

 一応、尻尾を少しだけ落ち着かせてから、今度こそワタシは食堂の中へと入りました。


「あら、おはよう。サリー」

「おはようございます、ルーナ。おはようございます、皆さん」

「おはようございます、サリーさん。まだ眠っていても良かったんですよ?」

「いえ、ちょっと陽の光が眩し過ぎて、目が覚めちゃいました」


 そう言いながら、ワタシは空いている席のひとつに座りました。

 ……昨日掃除したお陰で、食堂は凄く綺麗になっているように感じます。

 そんな風に思っていると……、キッチンのほうからシターが顔を出してきました。


「お待たせしました、フォード様。ルーナ様っ! あっ、サリー様おはようございますっ!」

「おはようございます、シター。使い心地はどんな感じですか?」

「はいっ、皆様と掃除したお陰で、良い感じに料理が出来ていますっ!」


 そう言って、シターは有り合わせの材料で作っていたのか、金属製の大皿に乗せられた朝食をテーブルの上に置いて行きました。

 それは日持ちするために用意していたベーコンを炒めた物と、炒めたベーコンの脂を染みこませて軟らかくすると同時に熱が与えられたカットした黒パンという質素なメニューでしたが、とても美味しそうに見えました。


「後は……ヒカリが下りてきたら、良いんだけど……」

「その心配は無いみたいですよ」


 そう呟いているルーナでしたが、ワタシは聞こえた物音に耳をピクッと動かし……ルーナにそう言いました。

 直後、気だるそうな雰囲気を出しながら、ヒカリが扉を開けて入ってきた。


「おふぁよーー……あふぁ……」

「おはようございます、ヒカリ。寝不足ですか?」

「あー……うん。ちょっと寝付けなくてさー……、ルーナ姉ー。水貰えなぃー?」

「ええ、良いわよ。この器に水を注ぎたまえ……《飲水》」


 まだ目覚めきっていないのか、ヒカリはそう言ってルーナへとお願いしました。

 そしてルーナも嫌がる素振りは見せず、短い詠唱と共にルーナの前に置かれたコップに水が注がれていきました。

 コップには水が並々と満たされ、それをヒカリへと差し出すと……彼女はすぐにコップに口をつけて、一気に飲み始めました。


「んぐ……んぐっ……はふぁ~……、生き返ったぁ! 何だか陽の光が暑過ぎて、やばいって思ったよ」

「あ、それはワタシもです。そこで皆さんに相談なんですが……っと、ご飯を食べながらのほうが良いですよね」

「んー、まあ、そうだね。ご飯食べながらのほうが話し易いよね」


 そう言っていると、シターがスープの入った鍋を持って食堂に入ってきたので、ワタシたちは食事を始めました。

 ちなみにスープは、余ったベーコンと余っていた野菜を香草と塩で煮込んだスープでした。

 酸味の効いた黒パンが塩っ辛く脂が乗ったベーコンと程好い味わいを作り出し、あっさりとした塩のスープは口の脂を緩和して行きました。

 そんな朝食を食べながら、ワタシは皆さんに相談の内容を話し始めました。


「「「「買出し?」」」」

「はい、ここの冒険者ギルドのお陰で、こうして拠点が手に入りました。ですが、この拠点には色々と足りない物があるとワタシは思います」

「あー、うん。そうだよね。ボクはカーテンがあれば良いなって思うよ」

「それなら、シターも数日分の食材が欲しいですっ」

「だったら、他にも色々買い込んでおきたいわね」

「一応お金はまだありますし……ね」


 そう呟いて、ワタシは所持金を見ます。……多くもなければ、少なくも無い。ですが、買出しする予算ぐらいはありそうな感じです。

 それから、皆さんの反応を暫く待っていましたが……答えはすぐに出たようでした。


「うん、色々と足りない物が多いし……買出しに行くべき、だよね」

「はいっ、この朝食だと少し足りない物が多かったですし、買出しは必要だと思いますっ」

「それじゃあ、決まり……ね。後は、店の場所も知っていないと厳しいって思うんだけど?」

「あ、そうでしたね。……それじゃあ、ご飯を食べてから、一度冒険者ギルドのほうに行ってみます? 一応、師匠のことを知っていそうな人と会えるのは何時になるかというのも聞いたほうが良いですし」


 と、そんな感じに方針が決まり、ワタシたちは朝食を食べる続きを始めたのでした。

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