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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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拠点掃除・後編

 さて掃除を、そう考えた辺りで入口の扉を開けてフォードくんが顔を現しました。

 顔を出した……ということは。そう考えていたら、予想通りだったようです。


「サリーさん、とりあえずシーツの洗いは終わりましたんで、ルーナさんに乾かすのをお願いしても良いですか?」

「えっと、ルーナ……良いですか?」

「分かったわ。それじゃあ、わたしは離れるけど……3人でちゃんと、仲良く掃除をしなさいね。特にサリーとヒカリちゃん」

「「は、はい……」」


 笑みを浮かべて出て行くルーナを見てから、ワタシはヒカリを見ました。

 けれど彼女の機嫌はやっぱり治っていないらしく……、プイッと顔を背けられました。

 ……あー、本当大丈夫…………でしょうか?

 一抹の不安を抱きながら、ワタシは台所と昨日眠っていたリビング兼食堂となっている部屋の掃除を始めることにしました。

 ちなみに、バケツの水が余りにも汚くなっていたので一度水は交換しました。

 そのときに、物干しにて洗ったシーツたちが掛けられて、ルーナの《微風》によってはためきながら、乾かされていくのを見ましたが……ルーナが頑張るのよ。的な意気込みを告げる視線を向けてきたので、かなり重圧を感じました。


「さて、と……それじゃあ、キッチンと食堂……どちらから掃除を始めますか?」

「えっと、シター的にはキッチンを先に掃除させて欲しいですっ」

「珍しいですね、シターが自分から率先して言うなんて……。ヒカリもそれで良いですか?」

「べっつにぃー……、それにサリーが決めるだけでしょ?」


 ……あー、うん。これはまだ分かり易い拗ねかたですね……。

 そう思いながら、とりあえずヒカリには何も言うべきではないと考えて、キッチンへと向かいました。

 キッチンはワタシが人間の国で暮らしていた村にあるような物ではなく、しかし冒険者ギルドにあるような最新と呼ばれる魔力感知で作動するというタイプの造りでもない……昔ながらの薪を入れて温めて行くという類の竃や石で創られた調理台といったタイプのものでした。


「うわぁーっ、昨日は見れませんでしたが……昔ながらのキッチンですっ!」

「そ、そうですね……でも、何処を掃除したら良いのでしょうか? 下手に触ると碌なことにならない気がします……」

「あー……そう、ですよねっ。じゃあ、シターの言うとおりにお願いできませんか? 幸いにもシターが居た修道院はこれに近いタイプのキッチンでしたっ!」

「そうなの? それじゃあ、指示はシターちゃんに任せます。お願い出来ますか?」

「はいっ、お任せくださいっ!!」


 そう言って、シターちゃんは3年の間にますます大きく成長した胸を叩いて、頷きました。

 ……はい、本当にでかいですよ。3年前は同じぐらいだったはずなのに、今ではワタシを越えていますし……。

 それに恐怖をしながら、ワタシたちは掃除を始めました。


「えっと、まずは天井辺りの煤を落として行きましょうっ。それが終われば、壁を布で拭きますっ!」


 シターちゃんの言葉に従って、ワタシとヒカリはハタキを手に取ると、パタパタと動かして行きます。

 すると、天井辺りに付いていたであろう煤と埃、蜘蛛の巣がハタキに絡め取られて行くのが分かりました。

 ああ、なるほど……コンロの上に蜘蛛の巣とかがあったら、燃えますよね。

 そんな風に思いながら、ワタシはハタキでドンドンと掃除を行っていきました。……ですが、問題というのはいきなり起きる物でした。


「「あ……」」


 ワタシの持つハタキとヒカリの持つハタキがぶつかり合った瞬間、ヒカリがあからさまな舌打ちをしたのでした。

 ……はい、そこから先は言わなくても分かるでしょうが言います。

 ケンカの始まりでした!

 大人気ないですか? 大人気なくても良いじゃないですか! だって、ワタシも言い過ぎたって思ってたんですよ!? それなのに、舌打ちですよ舌打ち!

 謝りたいなーって、思ってるんだろうなーって思ってたらの舌打ちです! だったら、怒るじゃないですか!!

 そんな感じに、ギャーギャーと騒いでいたら、距離を取ろうとしたワタシとヒカリの間にメイスが振り下ろされました。

 しかも、かなりの威力で……喰らったら一溜まりも無い威力の……です。


「お二人とも、そろそろ……そろそろシターも怒りますよっ!! いい加減にしてください! 似た物同士だからって何でそんなにケンカをするんですか!?」

「え、えっと……あの……」

「シ、シター、落ち着いて? ね?」

「落ち着けるわけが無いじゃないですか!! お二人が仲良くしてくれていないと、シター……シター……泣きますよぉっ!!」


 プンプンと可愛らしく怒鳴るシターですが……、これは本当に怒っていると分かります……!

 その一番の理由が……、瞳を涙で潤ませていたからです。


「わっ!? シ、シター!! す、すみません、ケンカしません! ケンカしませんからっ!!」

「ご、ごめんねシター! ちゃんと掃除するから、ケンカせずに掃除するから泣き止んでー!」

「ぐすっ、ぐすっ……ふぇぇぇ……!」


 それから暫く、シターを宥めるのに時間を費やし……漸く泣き止んだのを見てホッと一息を吐き……ワタシもヒカリも互いに干渉しないようにしながら、黙々とキッチンの掃除を行いました。

 そのお陰か、キッチンはシターが地面に打ち込んだメイス跡以外は綺麗になり、問題は無くなった。

 それをシターはウットリと見つめ、それを見ながらバケツの水を替えるためにバケツを持つと……もう一つをヒカリが持ってくれていた。


「……一緒に、汲むの手伝うよ」

「あ……はい」


 話し辛い雰囲気のまま、バケツの水を汲み直し……食堂のほうまで持って行き、ハタキを使って灯りに付いた埃を落としてから、ワタシとヒカリは静かにテーブルを両端から拭き始めました。

 黙々と掃除するようになって効率は良くなりました。……ですが、何というか……重いですね。

 そんな風に思っていると……。


「サリー……その、さっきからゴメン」

「え?」

「ボク、3年前から良くサリーに突っ掛かってるけど、今日はかなり酷いよね……。何だか、あの時のことを思い出して、その……凄く気が立ってたみたいなんだ……」


 そう言って、ヒカリはどんよりと落ち込みながらワタシに頭を下げてきました。

 なるほど……まあ、知らない間に全てが終わっていたなんて知ったりすると、思い出しただけでも苛立ちますよね。


「シターにも悪いことしちゃったな……」

「……だったら、ちゃんと謝らないといけませんね」

「え?」

「ワタシには謝ってくれましたし、苛立ってた理由も教えてくれました。ですが、シターやルーナにもちゃんと謝って、すっきりしましょう?」

「あ……。う、うん……」


 ワタシがそう言うと、ヒカリは恥かしそうに頷きます。

 そんな彼女を見ながら、ワタシは少し気が楽になりました。


 ……こうして、ワタシたちの拠点の掃除は終わり、少しだけヒカリのことを微笑ましく思いました。

うーん、31日に仕上げれば良かったな……残念。

執筆力が足りていないのか、それとも情熱が足りないのか……ううむ。

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