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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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拠点掃除・中編

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。

 光が差し込まれた部屋を改めて見始めましたが、部屋の中には家具が元々置かれていたと考えれば良いのか、それとも冒険者ギルドが用意したのかは分かりませんが……ひとり用のベッドと小さな丸いテーブル、そして着替えなどを入れるためのチェストが置かれていました。

 ……まあ、逢引宿が元々どんな感じの物かは分かりませんが、きっと家具類は全部は入れ替えとなっていたのでしょうね。その……することぐらいしか用途が無いみたいですし。

 そう考えると、ベッドもひとり用になっているのですから元々使われていた物ではないと考えるのが一番です。

 そんな風に考えながら、ワタシはベッドに敷かれていたシーツを取っ払う作業から始めることにしました。

 だってシーツなども埃を被っていて、それで寝たいとは思えませんからね。そう思いながら、部屋から廊下を行き来してヒカリと共に2階のシーツを出し終えると、1階へと持って行きました。

 1階に下りると、ルーナとシターも部屋の窓を開け終えていたらしく、入口のほうへと埃塗れのシーツを持ってきていました。


「あ、サリー様、ヒカリ様っ。……えーっと、2人とももう少し仲良くしないといけないと思いますよ?」

「う……、そ、それは……ヒカリが扉を開けてくれなかったので……」

「はあっ!? サリーが無理矢理開けさせようとしたからじゃない!!」

「……ふ・た・り・と・も・? ちゃんと静かにケンカしないようにって、よく言ってるわよね?」

「「うっ、は……はい」」


 あ、危ないところでした。またヒカリと口論を始めそうになりましたが、ルーナのお陰で酷いことにはなりませんでした。……次の分担はもう少し考え直さないと。

 そんなことを考えながら、換気と汚れたシーツの回収を終えて次の作業へと移り始めました。


「えっと、とりあえず……フォードくん。井戸のほうはどうでしたか?」

「はい、井戸のほうは水が枯れていた感じはないので、特に問題はありませんでした。それに、水が流れるほうも錆びている様子は無いので、錆び水も出ませんでしたよ」

「そうですか。ありがとうございます。じゃあ……部屋と廊下を箒を使って掃くのと、シーツを洗うという分担にしましょうか」


 そう言って、ワタシは先程の間違いを繰り返さないために分担を変えることにしました。

 結果、ワタシはルーナと、ヒカリはシターと組んで掃き掃除を始めることとなりました。ちなみにフォードくんは下ろして来たシーツの洗濯です。


「フォードくん、一応石鹸はあるので出来るだけ綺麗にお願いしますね?」

「頑張ります。けど、洗い終えて、干すときになったら一応ルーナさん、乾かすのをお願いできませんか?」

「ええ、良いわよ」


 ワタシたちは箒を手に取り、フォードくんはシーツを抱えて……掃除は再開されました。

 箒を持って、2階に上がっていくヒカリと一度目が合いましたが……彼女はフンッと鼻息荒く向こうを見ました。

 それを見ながら、時間を置いた結果溜飲を下げることが出来たワタシは苦笑していました。


「まあ、とりあえず……掃除を始めちゃいましょうか」

「そうね。けど、黙々と掃除をするよりも会話を挟んだほうが良いわよね?」

「あー……はい、そう……ですよね」


 これは……お叱り、と考えれば良いのでしょうか?

 そう思いつつ、ワタシは溜息混じりにルーナのあとに続きました。


「それで、またヒカリちゃんとケンカしちゃったの?」

「はい……、その気は無かったのですが、気づけばこう……カーッてなってしまって……」

「まあ、ヒカリちゃんはだいぶ口が悪いし、ズケズケと物を言うときがあるから……それがサリーの心を苛立たせるんでしょうね」

「あー……はい、多分そんな感じだと思います」

「でもそれって、2人は似てるけど少しずれているから……なのよね。っと、そこ埃が溜まっているわ」

「あ、本当ですか? ありがとうございます」


 部屋の掃除を始めてから、しばらくしてからルーナがワタシに話しかけてきました。

 まあ、話の内容はヒカリとの口論が大半ですけどね。

 その話をしながら、ワタシたちは始めに小型の箒でチェストやテーブル、ベッドの上に降り積もった埃を払い落とし、その落とした埃を箒を使って掃いて行きます。

 そして、掃き終えたら濡れたボロ布で窓枠やチェストやテーブルの上を拭いて行き、出来るだけ埃を取り払っていきました。

 掃き終えて溜まった埃は、シャッバさんが用意した木箱に入れて行き、後日処分するそうでした。

 そのまま、一つの部屋を終えると次の部屋へと掃除を行い、ボロ布が汚くなるとフォードくんが汲んで来たバケツの水で洗って、綺麗にしていきます。……埃は溜まっていたらしく、バケツの水が汚くなっていくのが分かりました。

 その色に、微妙な表情を浮かべながら、ワタシたちは部屋の掃除を終わらせました。

 そしてそのまま、廊下に出ると2人で箒を持って、1階廊下端から玄関まで箒で掃いて行くと、想像以上に埃が溜まっていきました。


「うわ、本当に凄いですね……」

「そうねぇ……。まあ、呆気に取られているよりも先に早く取っちゃいましょ」

「そうですね。……っと、2階のほうも終わったみたいですね」


 塵取りで埃を取って、木箱の中に入れ終えたところで階段から軋む音が聞こえたので、ワタシは顔を上げました。

 すると、ほんの少しして階段の踊り場からヒカリとシターが顔を出しました。


「お疲れ様でした、2人とも。とりあえず、部屋の掃除は終わったので好きな部屋を選ぶことが出来る……ってことで良いですね。それと後は……」

「キッチンとリビングですねっ!」

「シターちゃん、凄く気合が入ってるわねー」

「はいっ、久しぶりに掃除をしてシターは楽しいですっ!」


 妙に張り切るシターを見ながらルーナがそう言うと、彼女は元気いっぱいにそう答えた。

 シターって、やっぱりこういう家庭的なことが好きなんですね。そんな風に、シターの新しい一面を見てワタシは笑みを浮かべます。

 そんな彼女を見て、微笑んでいると視線に気づき……視線の先を見ると、ヒカリがこちらを見ていました。ですが、すぐに見ていることに気づかれたと分かったのか顔を背けていました。

 それを見てワタシはワタシで、苦笑するしかありませんでした。

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