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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
289/496

回想~戦争~・31

※ライト視点です。

「はぁ…………、はぁ…………、はぁ……は――――うっ!!」

「ラ、ライくんっ!? しっかり! 大丈夫なのっ!?」

「ライト様っ! い、今回復魔法をかけますからしっかりしてください!!」


 ぼくはぼく自身を包む光が消えて行くのを見ながら、荒く息を吐いていたが……突然襲い掛かってきた虚脱感と込み上げてくる何かに耐えることが出来ずに、その場で膝を突き……口から血を吐いてしまった。

 そんなぼくへとルーナとシターが駆け寄り、心配そうな顔でぼくを見ていた。そして、少しして光がぼくを包み込んで行くのを感じ、少しだけ身体に力が戻るのを感じた。

 回復魔法の光を浴びながら、黒いモンスターを斬ったからか……それともぼくを包み込んでいた光が収まったからなのか……漸くぼくの頭は冷静さを取り戻し始めているのを感じた。

 そして、すぐ目の前に座り込んでいる人物をぼくはルーナに支えられながら見た。


「あの、モンスターの正体は、あなただったんですか……。(元副)団長、でも何故こんなことを……」


 ぼくの言葉で、呆然としていた元副団長はピクリと反応して、ギョロリと憎しみを込めた瞳をぼくに向けてきた。

 その瞳は、先程のモンスターがぼくに向けていたものと同じものであるため、目の前に居る元副団長があのモンスターであるということを改めて自覚出来た。


「何故、だと? お前だ! お前がすべて悪いのだ!! 何故貴様が称えられなければならん! 本当ならば、駒たちを指揮した私こそが回りに称えられるべきなのだ!! なのに、何故貴様が称えられたのだ!!」

「な、何を言ってるんですか……?」

「だから、私は願ったのだ! 大臣から貰った珠を使い、貴様を越える最強の存在になることを!! そして、私は貴様を越えることが出来た! だから、私は貴様を心も身体も完膚なきまでに叩き潰すことを決意し襲い掛かった!! けれど、身体を傷つけられても貴様の心は折れなかった。だから私は別のことを考えたのだ。……分かるか?」


 狂ったように元副団長は叫び、どうしてそんなことを思い始めたのかと疑問にしか思えないことを言っていたが、徐々に何かを思い出し始めているのか、口を歪めながら狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

 そして、分かるか? という言葉の内容を、ぼくは理解出来てしまっていた。


「分かるよなぁ? あんなに必死だったんだ。そんな必死に貴様を助けようとしている存在が、目の前で殺されたらどうなるか考えただけで笑えたよ。だから、私は行った! ああ、傑作だった。傑作だった!! 目の前でゆうしゃ様であろう者が子供みたいに泣き喚いている姿を見るのは本当に楽しかった! ん? 何だその顔は? ああ、一撃で胸を貫いて殺さずに、首を切り落とせば良かったのか? それとも、そこのいやらしい肉体をした者たちを狙えばよかったのか? それとも――ぐぎゃっ!?」

「……黙れ」


 気がつくと、ぼくは拳を握り締めて元副団長を殴り飛ばしていた。

 殴りつけられた元副団長は何が起きたのかわかっていなかったようだが、すぐに殴られたことに気がついて頬に手を当てて痛そうに転がっていた。

 そんな、人間以下の存在へとぼくはふらつきながら近づく。


「……つまり、ヒカリが殺されたのは、自分が称えられなかった原因がぼくだったからだって? ふざけるな!! 自分勝手にヒカリを殺したって言うのか!? お前はそんな簡単に人を殺せるって言うのかっ!!」

「あのような薄汚い盗賊が人だと? ただのネズミではないかっ!! あんな物は駒の一つに過ぎない! そこに居る貴様らだって駒だ! まともな人間とは私や王といった選ばれた者たちだけだ!!」

「ネズミ? 駒? ……人間は人間だ! お前たちこそが一番人間なんかじゃない!!」


 鎮火し始めていたぼくの怒りが、再び轟々と燃え上がり始め……片手に握り締めていたままだった折れた剣を見た。

 根元まで折れたわけじゃないから、斬ろうと思えば斬れる……。そう思いながら、ぼくは元副団長を睨みつけた。

 その視線に、ビクリと震えるのを見ながら、一歩足を前に進めた。


「ラ、ライ……くん? ま、まさか……」

「ライト様……? ――だ、ダメですっ、相手は人、人ですよっ?!」

「な、何をするつもりだ? ま、まさか……殺すのか?! 人間のゆうしゃであるお前が、人間を殺すのか!? お、面白い……! 殺せ! 憎いのだろう? では殺せ!! そうしたら貴様はゆうしゃである前にただの人殺しだ!!」


 恐怖に顔を引きつらせながらも、元副団長はぼくに向けてそう言う。

 同時に、ルーナとシターがぼくを止めようとするが……、ゴメン。ぼくも自分を止めることはもう無理みたいだ。

 そして、ぼくは怒りに身を任せたまま……折れた剣を元副団長に向けて振り下ろした。


「ひっ、ひいいぃぃぃっ!? …………あ、あれ?」


 振り下ろされた剣に恐怖を抱き、年甲斐も無く無様に頭を両腕で抱えた元副団長だったが、何時までも剣が来ないことに疑問に思ったようだった。

 それもそのはずだ。何故ならぼくは……この憎むべき人の形をしたモンスターとも言える存在がしゃがみ込んでいる地面に剣を突き立てているのだから……。

 それを見て、ルーナとシターからホッとする声が聞こえた。ぼくが人を殺さなくて良かったのだろう……。けれど、ぼくの行動に納得が出来ない者はいたようだった。


「き、貴様……っ。何故殺さない! 貴様は私を殺し、人殺しとなるのだ!!」

「いや、ぼくは人殺しにはならない。ぼくは……ゆうしゃだから、人は殺さない」


 そうだよね、ヒカリ……。きっと君も後ろの2人みたいにぼくを止めているだろうし。

 そう心で思いながら、静かに目を瞑ると……地面からピキピキという音が聞こえるのに気がついた。

 いったい何の音かと疑問に思った直後、ぼくらが戦っていた戦場の地面が崩れてきた!!

元副団長はもうだいぶイカレているので、支離滅裂が多いです。

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