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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~戦争~・30

 一瞬、ほんの一瞬だけど光を纏った……いえ、放ったライトさんとすれ違う瞬間、ワタシは彼の顔を見ました。

 怒り、憎しみ、ただそれだけしか感じさせない、負の感情しか持っていない表情でした。そして狂おしいまでに怒りを溜め込んだ瞳にはワタシたちは入っておらず、入ってるのは……。

 それに気づいた瞬間、光はワタシたちを通り過ぎていき、立ち上がった黒いモンスターへとぶつかっていきました。

 突然のことでモンスターは驚いたのか、光の体当たりを防御することが出来なかったようで地面に倒れこんだまま大きく後ろに転がって行くのが見えました。


「うわっ!? い、いったいなんだあれっ!?」

「ライトさんです……」

「え?」

「なんだと? どういうことだ、サリー?」

「今の光は、ライトさんでした。それも……怒りと憎しみの感情に支配された……」


 驚くフォードくんとボルフ小父さんにワタシは呟くように言います。

 正直、見てて辛いです。だって、あれはまるで師匠を失ったときのワタシを見ているようですから……ん? 師匠を、失った……?

 ハッとして後ろを向くと、離れた位置にルーナさんとシターちゃんがこちらに近づいてくるのが見えました。ですが……ヒカリさんは居ません。

 ……いえ、奥のほうでルーナさんが羽織っていたマントを掛けられた状態で眠っているように見えます。


 ……そういう、ことですか…………。


 ワタシはライトさんが怒り狂っている理由に気づき、死んでしまったヒカリさんに祈りを捧げました。

 そうしている間にも、怒り狂ったライトさんはヒカリさんを死に追いやった原因である黒いモンスターへと攻撃を仕掛けていました。


「お前のっ! お前のせいでヒカリは……っ、殺す、殺す殺す殺すっ!!」

『SHIぃぃィィイイNEえええェェェェ!!』

「お前が、死ねっ!!」


 怒りに身を任せた大振りの一撃をモンスターへとライトさんは放っていますが、その攻撃は単調過ぎて読め易いのかモンスターはライトさんの攻撃を回避して行きます。

 そして、お返しとばかりにモンスターは槍状の腕を突き出して、ライトさんを突き殺そうとしましたが、ライトさんが放つ光に近づいて行くと槍状の腕が消滅して行き、それに気づいたモンスターはすぐに手を引いていました。

 あの光は一種の結界、なのでしょうか? そう思いながら、戦いを見ているとルーナさんとシターちゃんが漸くこちらへと辿り着いたらしく、荒い息を吐いていました。

 多分、ワタシと同じ大層な物を持っていますが、身体を鍛えていないから移動速度が遅かったのでしょうね。


「はぁ……はぁ……っ! ラ、ライくんは……?」

「ラ、ライトさまは……っ!?」

「えっと……ふたりとも大丈夫ですか? それとライトさんなら、戦っている最中ですが……」


 そう言って、ワタシはライトさんが戦っている方向を見ましたが、やはりどちらも決め手に欠けているのか一進一退の攻防を行っていました。ですが、どちらも当たればただではすまないでしょうね。

 そう考えながら呼吸を落ち着かせようとしている2人を見ると、息を荒くしていながらもワタシをジッと見ていました。……その瞳は、まるでこの戦いを止めてほしいと言う風にも見えました。

 ですが、正直な話を言わせてください。あの戦いにワタシたちが介入したら邪魔になるだけだと思います。

 むしろ逆にライトさんを窮地に陥れたりする可能性だってあるのですから……。そう思っていた瞬間、ライトさんが戦ってる方向からパキンッという音が聞こえました。


「ああっ! ライくんの剣が……っ!!」

「お、折れてしまいましたっ!?」

「不味いぞ、このままだとライトのやつ、戦う術が無いんじゃないのか!!」

「それに、光が弱まっているように見えるんだけど……」


 先程聞こえた音は、ライトさんが手にしていた剣が折れた音だったようです。……力任せに振り続けて、地面を殴りつけるようにしていたから、折れてしまったのかも知れませんね。

 そして、最悪なことにライトさんが放っている光はライトさん自身の体力も奪っているらしく、ライトさんの顔色が段々と悪くなり始め……光も徐々に弱くなっていくようでした。

 これを好機とばかりにモンスターの勢いは増し始め、ライトさんを追い詰めて行きました。


「これは……マズいですね。フォードくん、行きますか?」

「は、はい。分かりましたサリーさん」


 ライトさんを助けるべく、ワタシはフォードくんに声をかけて、戦いの場へと向かおうと一歩踏み出しました。その瞬間――


「来るなっ!!」


 周囲に響き渡るほどの声でライトさんが叫び、ワタシは踏み止まりました。

 ライトさんを見ると、歯を食い縛りながら目の前のモンスターを睨みつけながら、モンスターの攻撃を避けていました。

 突然の言葉に、ルーナさんとシターちゃんは驚いた様子を見せていました。


「こいつは、ぼくが……ぼくが倒すッ!! ヒカリの、ヒカリの仇だからっ!!」

「そんなっ! ライくん、ダメ。ダメよ!! このままだとライくんもヒカリちゃんみたいに、コイツに……!」

「嫌です、ライト様っ! シターも、シターたちも一緒に戦わせてくださいっ!!」


 ライトさんはそう言って、ルーナさんとシターちゃんの声に耳を貸そうとはしていませんでした。

 一方で、2人はライトさんに来るなと言われたからか、近づこうとしていませんでした。

 そして徐々に弱り始めて行くライトさんを嘲笑うようにモンスターはケラケラと笑い、槍で突撃を行おうとしてるのか槍を引きました。


『死ィィねぇeeeェェェェェええぇぇえぇ!!』

「ぼくは、死なない! ヒカリの仇を取るまでは! 絶対にっ、死ねないッッ!! うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーッッ!!!」


 一気に突き出された槍の突撃を前に、ライトさんは折れた剣の柄を天に構えました。

 ライトさんに迫り来る死にルーナさんとシターちゃんが声を荒げてライトさんを呼びますが、怒りに満ちたライトさんは折れた剣を一気に振り下ろしました。

 ……っ!? いえ、これは……実体の剣は折れていますが、ライトさんが放つ光がまるで剣のようになって、柄から伸びています!!

 それに気づいた瞬間、目の前ではモンスターは真正面から斬られ……その勢いは止まること無く、地面を斬り裂いて行きました。


『あAァアアアアアぁあAaアアアアアあぁあぁっぁあっぁぁぁぁAaaaaAAAAAつッッ!!!?』


 そして、斬られたモンスターの黒い表面に光の剣筋が奔り……、モンスターの絶叫が周囲に響き渡った。

 しばらくして光の奔流が収まると、黒いモンスターが居た場所には虚ろな表情をした……副団長が座り込んでいました。

あと3回ぐらいで、回想は終わります。

うん、長くてごめんなさい! でも、書きたいんだから仕方ないよね!!

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