回想~戦争~・23
……どうも、フォードです。
何故か一人であの暴れ狂っている巨大なドラゴンみたいなモンスターへと力いっぱい投げ付けられることが決まってしまったフォードです。
……うん、どうしてこうなったんだ!? いや、普通に何か良い方法とかあったりしたよね!? なのに、何で投げ飛ばしてそれで一気に貫くって考えになってるんだよっ!?
しかも、その話し合いがライトたちだけではなく、周りの冒険者を巻き込んでるしよぉっ!!
「けどライトよ、フォードを投げ飛ばすことは決まってるにしても、早くしないと血が止まって同じことを繰り返すことになる気がするぞ?」
「そう、ですよね……すみません、フォードさん。速めにしますから待っていてくださいね」
「いや、そこはさぁ、中止にしましょうって言うところじゃないかっ!?」
おやっさんの言葉に悩んだライトだったが、すぐに決心したらしく俺へと謝ってきていた。
うん、そこは諦めて欲しかったよ……。
そして、そんな俺の傷付いた心を誰か癒してください……。
そう思っていると、俺の隣に近づく気配があり……振り向くとサリーさんだった。
「フォードくん、大丈夫ですか? 怖くないですか?」
「サ、サリーさん……お、俺……正直やりたくないですよ……」
「……そうですよね。フォードくんにはやっぱり荷が重いですよね? だったら、ワタシが行くしかないですね……、フォードくんはやりたくないって言いますし……」
俺が泣き言を言うと、サリーさんは凄く悲しそうな顔をしながら顔を俯かせてそう言う。
儚げな印象を浮かべながら言ってるんですが……ナンデショウカ、この果てしなく嫌な予感は。
……って、サリーさん、今何を言った? 俺の変わりに……自分が行くだって?!
「む、無茶ですよ! あんな巨大なモンスターにサリーさんが飛び込むだなんて!」
「ですが、フォードくんは無理なんですよね? 怖くてやりたくないから行けないんですよね?」
だったら自分が、みたいな雰囲気をサリーさんは出しているけれど、なんだろう……この俺が行かないのが原因で自分が行きますっていう風に見えるのは?
ここは言ってはいけない。いけないはずなんだ。けど……けれど……!!
俺は拳を握り締め、不安そうにするサリーさんに告げた。
「サ、サリーさんにそんな危険なことをさせるわけが無いじゃないですか! それなら俺が行きますよ!!」
「え? そうですか? だったらお願いしますね」
決意を込めて叫んだ俺に対して、サリーさんは笑顔で即座にきっぱりと返事を返してくれました。
って、アルェー? 何だか凄く迷うこと無くはっきりと言ってくれませんでしたか!?
そこで漸く俺は理解した。俺は、俺は……。
「頑張ってください、フォードくん♪」
「よ、よろこんでぇぇぇぇぇっ!!」
はめられたのだった。
もう笑うしかないよな……。
●
そして、俺は今まさに屈強な……筋肉質の力がある数名の冒険者に抱えられていた。
その先頭にはおやっさん。……そ、そうだ。一度、もう一度だけ止めないかって言ってみるべきだ!
「あ、あの、おやっさん……」
「フォード、確かにサリーを護れる男になれって言ったけど、これはかなり無謀じゃねぇのか?」
「だ……だったら、止めるように言って……」
「あー、聞こえないなぁ? お前が断ったらサリーが本当に行くだろうから、このまま聞こえないフリをしてお前に全てを任す。後は生きろ!」
「お、おやっさぁぁぁぁんっ!!?」
情けない声を上げる俺に対して、おやっさんは豪快ながら優しく微笑んだ。
まるで生きて帰って来れない者への手向けと言わんばかりに……やっぱり死ぬこと確定なのかっ!?
驚愕の表情で顔を固めながら、おやっさんを見ていると分かってると言わんばかりに頷いてくれたけど……絶対分かってねぇ!! 気づいて欲しいことぜんっぜん分かってねぇ!!
「ってことで、フォード……頑張れよっ!! 行くぞお前ら!!」
「「おうよっ!! どっせーーーーいっ!!」」
おやっさんの掛け声と共に俺の身体は前から来る空気を感じ始め……力強く巨大なモンスターに向けて投げ付けられてしまった。
数人がかりでの投擲って威力半端ねぇだろっ!? そして、更に後ろからルーナさんの詠唱が聞こえた。
「風よ! 彼の者を押し飛ばせ!! 《突風》!!」
「うっ、うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
直後、猛烈な風が後ろから吹き、俺の身体は一気に暴れ狂っている巨大なモンスターへと突っ込んで行った。
って、距離がヤバイ距離があっ!? しかも、向こうにも俺の存在が気づかれたみたいだし!!
「くそっ! こうなりゃもう自棄だ!! <スピード=チャージ>!!」
スキルを叫ぶと同時に、俺は握り締めた剣を前へと突き出し……そのまま風に身を任せた。
すると、それが良かったのか身体は風に乗って空中を滑るように巨大モンスターへと進んでいった。
それに対して巨大モンスターも俺に威嚇するように身体を曲げて、巨大な口をこちらに向けてきた。
……うん、怖い。超怖い! つーか、マジ逃げたいけど、やるしかねーよ!!
『PPPPPPHHHHHHHHYYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAA!!』
けたたましい鳴き声が耳元に近づいてくる中で、俺の握る剣は巨大モンスターの胴体へと突き刺さり――その勢いのまま身体を貫通していった。
……え?
あかん、フォードの立ち位置がギャグ枠になりつつある!