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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~戦争~・22

「そこ! 前足が持ち上がってるから気をつけろ!!」

「分かった! 助かったぜ!!」

「おう! でりゃあ!!」


 向こう側から攻撃を仕掛ける冒険者たちを攻撃するために、巨大モンスターは足を持ち上げて踏み潰そうと動く。しかし、それよりも先に反対側から攻撃を行っている冒険者の声が響き、潰されるのを回避することが出来た。

 そして、片脚を持ち上げた際の動作がまだ残っていると考えながら、冒険者たちは足を攻撃して行く。

 ……あれから軽く20分は経ったが、彼らは未だ巨大モンスターの足を動けなくすることが出来ないでいた。

 何しろ、巨大な上に異常に太い前足へと何度も攻撃するのだが、鱗が硬いということもあり目立った傷が付かないと言う状況だったのだった。

 無意味な攻撃ばかりするだけで、時間が過ぎて行く。そんな風にも見えるが……ある者たちの攻撃によって、巨大モンスターの足はダメージを負っていた。


「はああああぁぁぁぁぁっ!! 今です、小父さん!!」

「てりゃあああぁぁぁぁぁぁっ!! 今だ、ライトさん、ルーナさん!!」

「よっしゃぁぁっ!! 喰らえ!! <ランバークラッシュ>!!」

「分かったよ! はあぁあぁぁぁぁっ!!」

「そのまま燃やすわ! 彼の者を焼き尽くせ、《火炎》!!」


 光り輝く朱金の刀身をしたナイフで足を滑らかに切り裂いて行くサリー。

 同じく光り輝く朱金の刀身をした剣で反対側の足をスパッと斬り裂いていくフォード。

 そこに続くようにして、サリーが切り裂いた傷へとボルフが戦斧を振り被り、力を込めて打ち込んだ!

 一方で、フォードが斬り裂いた傷を更に深く傷つけるようにライトが、黒い剣を傷の口へと突き刺すと身体を動かして切り裂いて行く。しかも、彼が離れた直後にルーナの火属性魔法が撃ち込まれた。


『PHYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――!!』


 そして、流石の巨大モンスターも前足の肉が裂けた上に血を流せば痛いらしく、金切り音に近いが痛みから発せられたと思しき悲鳴を上げていた。

 それを見ながら、即座に一斉攻撃を行おうとしたが……。


「くそっ! 暴れ出した!!」

「おい、一旦距離を取るぞ!! ただし、微妙な距離を取るように!!」

「「了解!!」」


 ズシンズシンと周囲に地響きを上げながら、痛みを訴えるように巨大モンスターは前足で地面を叩きながらその場で暴れ始めた。

 そして、冒険者たちは暴れだしたことに気づくことが出来たらしく、全員巻き込まれるよりも前に距離を取っており潰されるという悲劇は回避できたようであった。

 けれど……、暴れ続けている巨大モンスターだが致命傷を与えているわけではないので、このまま放置していても危険であり、どうにかしなければ行けなかった。


「このまま、暴れているところに魔法を撃ち込み続けて倒すことは……無理だよな?」

「というか、これだけの巨体なんだから燃やすにしても、時間も魔力も掛かるだろうし……その前に、痛みが引いてまた攻撃するんじゃない?」

「だったら、どうする?」

「……もういっそのこと、暴れているうちにトンズラ……は、無理だよな?」

「それもありだろうけど、逃げてる途中で吹き飛ばされるように思えるのは気のせいか?」

「「多分、当たってると思う」」


 そんな風に距離を取った冒険者たちが口々に話し合いながら言うが……、決定打となる攻撃が見つからないのがいけないのだ。

 そんな会話を聞きながら、暴れる巨大モンスターを見つつフォードは近くに立つライトとルーナたち3人に問い掛けた。


「……どうする?」

「どうすると言われましても……」

「それに、シターたちの攻撃は通らないみたいですし……」

「んー……、いっそのことフォードを撃ち出してみる?」

「「「えっ?」」」

「ヒ、ヒカリちゃん? 何だか怖いわよ?」


 口々に悩みながら唸っていたが、ヒカリが平然と恐ろしいことを口にして彼らは固まってしまっていた。

 そして、恐怖しつつもルーナがヒカリへと語りかけた。


「やっ! で、でもさっ、抜けれないってなら、一番有効な攻撃が出来る方法を考えるのが当たり前じゃないかなっ!?」

「まあ、それはそう……なんだけどさ」


 ライトが悩みながら、ヒカリの言葉に頷くのを見て……フォードは果てしなく嫌な予感を感じていた。


「ちょっ!? ま、まさか……冗談……ですよね?」


 フォードが顔を引きつらせる中、ライトは申し訳なさそうにしながら……、ヒカリは優しく頷き……、ルーナは優しく肩をポンと叩き……、シターは何がどうなっているのか分からないみたいにオロオロとしていた……。

 ……どうやら、ゆうしゃ一行の中で何かが決まってしまったようだった。


「大丈夫よ、フォードくん。《突風》でスピードを上げてみせるから」

「飛ぶこと確定になってるっ!?」


 こうして、決まった状況は馬鹿っぽいけれど、フォードにとっての一世一代の大勝負が決まってしまったのだった。

どうして、こうなった。

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