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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~戦争~・21

 助けられた兵士の声が周囲に響き渡り、必死に逃げていた兵士たちの動きが止まり始め……視線がライトへと向けられていった。

 それらすべての視線から感じられるものは、自分たちにとっての救いの手としか言いようが無いゆうしゃの登場に対する歓喜と助けを求める視線だった。


「ゆうしゃさまだ……」

「ゆうしゃだ……」

「ライト様だっ」

「ライト様! お助けください!!」


 そして、その視線が意味するように兵士たちから口々に助けを求める声が上がり始めた。

 その言葉にライトは剣を抜き、宣言するように声を上げた。


「安心してください皆さん! ここはぼくが、いえ……ぼくたちが何とかしてみせます!! だから、後ろに下がってください!!」

「あ、ありがとうございます、ゆうしゃさま!!」

「そんな……! 自分たちも共に戦います、ライト様!!」

「いえ、逃げ続けて身体がへとへとになっていますよね? 今はしっかりと休んでください」

「くっ! も、申し訳ありません……!」


 ある者は感謝し、またある者は共に戦うことを口にするが、身体の疲労を見抜かれたのか優しくライトに諭され悔しそうに涙を流しながら後ろへと下がっていった。

 そして、ライトの隣へとボルフが立ち、それに続くようにしてヒカリ、ルーナ、シター、フォード、サリーが並び立った。その後ろには彼らについて来てくれた冒険者たちが居るが……その数は20人ほどであった。

 同時に待っていたかのように、森の国側からズシンズシンと重い足取りでドラゴンのような巨大なモンスターが姿を現した。追いかけていたのがついに追いついてしまったようであった。

 それを見た周りの者たちから息を呑む音が聞こえたが、ライトは巨大なモンスターへと駆け出そうとし始めた。しかし、そんな彼へと兵士が叫んだ。


「気をつけてください、ゆうしゃさま! あのモンスターは、聞きなれない音を出してしばらくしてから直線状に見えない何かを吐き出して、自分たちを吹き飛ばして行きました! ですから、あのモンスターの前に立っていては危険です!!」

「っ!? そ、そうか……ありがとう、助かったよ。皆! あのモンスターの前に立たずに、散開してモンスターのほうへと向かってください!!」

「「分かりました!!」」「「おうっ!!」」


 ライトの言葉に、一同は叫ぶとライトと共に一斉に武器を構えて巨大なモンスターに向けて駆け出して行った。全員、地面を見ず……視線は巨大なモンスターを見ていた。

 そして、金切り音が巨大なモンスターから放たれ始めると、すぐに正面ではなく左右に駆け出すことが出来るようにしながら、モンスターがゆっくりと動かす首を真剣に見る。

 首の位置が止まった瞬間、その直線状に立っていた冒険者は即座にその場から左右へと駆け出して行く。

 直後、巨大なモンスターから吐き出される何かは直線状に放たれるが、兵士たちの言葉を得ていた冒険者たちはすぐに対処出来ていた。


「次の攻撃は……すぐには無理そうだね。皆! 早く近づこう!!」


 ライトの言葉に一同は頷き、足早に進んで行く。……そして唯一の救いは魔族、モンスターが今見えない何かを吐き続けているドラゴンモドキしかいないことだった。

 どうやらこのモンスターが出てきた時点で、他のモンスターは後ろへと下げられたと考えるのが一番かも知れない。

 そして、ライトたちは着実に巨大モンスターへと近づいて行くのだが……それは同時に、巨大モンスターから吐き出される何かを回避するのが難しくなると言うことを意味していた。


「――っ!? しまっ!! うおおっ! 後はたの――ぐげっ」

「くっ! 速く前へ!!」


 避けきれずに、吐き出される何かに巻き込まれた冒険者が何かを言い残そうとしたが、身体が耐え切れずに吹き飛ばされていき、地面に身体を何度も打ち付けて動かなくなるのを見て、ライトは悔しそうに唇を噛み締めながら、前に進むことを告げた。

 そして、そのかいあってかライトたちを除いた冒険者が12人になったが巨大モンスターの足元へとたどり着くことが出来た。


「へへっ! 漸く近づくことが出来たなぁ……! 喰らいやがれっ、<スパイラルバン――ごぼっ!?」

「おいおいおいっ! 足元に近づくと踏み潰しが来るのかよっ!!」

「だったら、逃げ回りながら攻撃しかねぇ!!」


 槍を握り締めた冒険者が、スキルを使用しようとしたようだが……それよりも先に巨大モンスターの前足がその冒険者を蹴り飛ばしていった。蹴り飛ばされた冒険者は山に身体を打ち付けていたが、生きているかどうかの確認する暇は無かった。

 冒険者たちの怒号が飛び交う中、彼らは前足の攻撃を避けつつも時折、自分たちの武器で前足に攻撃を行うが……ダメージが通っていないように見えた。


「くそっ! だったら真正面から攻撃を!!」

「うわっ、馬鹿やめろ!!」

「大丈夫だって、間近なら問題な――ぐあぁぁぁっ!?」

「い、言わんこっちゃない……」


 真正面に立った冒険者も居たが、攻撃するよりも先に巨大モンスターの長い舌に身体を巻き取られ……口の中へと運ばれて行った。

 それを見て一同、何とも言えない表情となっていたが、モンスターに対してか正面に立った冒険者に対してなのかは分からなかった。


「兎に角、顔を狙わないと意味が無いと思うので、前足をどうにかしましょう! 皆さん、注意してくださいっ!!」


 ライトの声に、返事を返して冒険者たちはそれぞれの武器を手にして両前足へと攻撃を仕掛けるのだった。

 現時点で出来る人間は居ないけれど、エアブロカナヘビの簡単な倒し方。

1.空気を吸い込ませる。

2.空気を打ち出そうとする瞬間に、岩なり何なりで口を塞ぐ。

3.体内の吐き出そうする空気に身体が耐え切れずに、爆発。


 ちなみに周囲は血に染まります。(笑

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