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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~戦争~・16

 風が吹いた瞬間、押し倒されたルーナとシターの元へと飛び出した人物が居た。

 その人物は無力化したヒカリを前にしたドラゴン系魔族の攻撃を弾き、もっとも危険になっている2人の元へと駆けると腕を振るい、2頭のオークたち目掛けて黒い軌跡が走った。

 それをオークたちは観察し始めた。黒い軌跡は黒色の剣で、それを振るっているのは人間で言うところの色男という奴だろう。

 きっと、自分たちが楽しもうとしているおっぱいを毎晩揉み解して楽しんでいる色男に違いない。そう考えた。


『だったら、この色男をぶちのめして、絶望のどん底に落としてやるブヒ!』

『おお、良い名案だブー! どれ、それじゃあおれがこの剣を握り潰してやるブー!』


 色男が振るった剣の速度は速いが目で追えないというわけではないので、何てことは無い攻撃と考えながらオークは自身の肉厚な手でその黒い剣を掴もうとした。

 オークたちの中では、肉厚な手に剣が沈み込んだ瞬間、握り締めてバッキバキに圧し折ろうと考えていたようだった。

 オークの手に黒い剣が吸い込まれた瞬間にオークは自分の手を閉じた。だが、それは出来なかった。

 何故なら、握り締めようとした手の先……指の付け根が黒い剣によって、斬り落とされたからだ。

 ボトリとオークの手が地面に落ち、それを見てから……相方のオークを見て、信じられないといった表情をしているのに気づいた瞬間――。


『ブ、ブウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!? い、痛いブー! 痛いブー! 手がぁ! お、おれの手が斬れたブー!!』

『だ、大丈ブヒか!? な、何だブヒ、この男は!!』

「君たち、ルーナとシターから離れろ……!」


 静かに目の前の人物はそう言うが、その言葉には怒りが込められているのか今にも飛び掛りそうだった。

 それを見て、2頭のオークは押し倒した獲物は惜しいが命の危険は避けられないと感じ、後ろへと下がった。

 ちなみにこの2頭のオーク、ブーフ&フーウ兄弟はある魔族の特殊な調整でティーガの持っていた魔法の無力化に近い能力を手に入れてはいたのだが……接近戦は普通のオークと変わりが無いということを知る由が無かった。

 拘束が解かれて、オークたちがすぐには近づけない距離まで下がったことを確認してから、オークに黒い剣を突きつけた人物……ライトは2人へと近づいた。


「げほっ! げほっ!! ラ、ライ……くん?」

「ひっく、ひっ……ラ、ライト……様?」


 自由になったルーナは、獣臭いオーク臭に顔を歪めながら咽ていたが……潤んだ瞳を屈んだライトへと向けた。

 シターも起き上がると、先ほどのことが怖かったのか子供らしく泣きじゃくりながら、涙を溜めた瞳でライトを見つめた。

 そんな2人に、ライトは優しく微笑んだ。


「うん、遅くなってゴメンね、2人とも。でも……少しだけ間に合わなくて、怖い思いをさせたね」

「ライくん……。ううん、わたしは大丈夫よ? それよりも、シターちゃんのほ――」

「ラ、ライトしゃまぁぁっ! シ、シターは、シターは怖かったですぅぅぅぅっ!!」

「うわっ! シ、シターッ! 落ちつい――てぅえあぇぇぇぇぇっ!?」


 いきなり抱きついたシターをライトは宥めようとしていたが、あることに気づいたのかライトは素っ頓狂な声を上げた。

 それもそのはずだ。シター自身は気づいていないだろうが、彼女の服は現在……オークによって胸元を引き千切られていた。……要するに、でっかいおっぱいが丸見えとなっているのだ。

 しかも、涙を流して子供みたいに怖かったと言って、抱きついているのだから……ライトはおっぱいの海に顔を沈ませている状況となっていた。

 ドブだったなら、きっとグヘヘと嬉しそうにするのだろうが……ライトの場合は顔を真っ赤にしているだけだった。

 その様子をルーナは目をパチクリさせながら見ていたが、すぐにハッとして少し忍びないがシターを引き放すために動き出した。


「シターちゃん、ライくんが恥かしがってるわ。ほら、前を隠して、前を」

「ふぇ? …………。……はわわわわわっ!!? ラ、ライト様、すみません~っ!」

「い、いや……気にしないで、シター……」


 顔を真っ赤にしながら、片手で胸元を隠すシターは頭をブンブンと振って謝っていた。

 そんな彼女に視線を合わせないようにしながら、ライトは口元に手を当ててそう言うのだった。


 ●


 そんな甘い雰囲気を作っている3人を見ていたオークたちだったが、今なら油断をしているのではないかと思い始めていた。


『今なら、いけそうな気がするんだが、どう思うブヒ?』

『は、早く手を治したいけど、復讐するなら今だと思うブー!』

『そうブヒな。だったら……』

『やるブー!』


 復讐を決めた2頭は、甘い雰囲気をぶち壊すために駆け出した。

 そして、それをドラゴン系魔族に拘束されたままのヒカリが気づき、声を上げた。


「ラ、ライト! 後ろーーっ!!」


 早く気づいて欲しいと思いながら、声を掛けるが……間に合いそうに無い。

 まさか、本当に気づいていないのか? そう不安に思いつつ、もう一度叫ぼうとしたヒカリだったが……それを遮るようにドラゴン系魔族がヒカリの前に石槍を突き立てた。


「――っ!? な、何? まさか……殺す気?」

「……いや、余計な手出しは無用。と言いたいだけだ」

「え?」

「あの男、女に現を抜かしているように見えているようだが、しっかりと敵を見ていたぞ」


 そうドラゴン系魔族が口にした瞬間、2頭のオークはライト目掛けて飛び掛っていた。


『『死ぬブヒよ!(ブーよ!)』』

「このまま逃げてくれてたら良かったんだけど……、仕方ない。くらえ! <ヴィクトリースラッシュ!!>」

『『ブ、ブヒィ?』』


 迫り来るオーク2頭に、ライトは振り返ると……黒い剣を抜き、素早く片方のオークを上から袈裟斬りで切り落とすと……返し刀でもう一頭のオークを逆袈裟で斬り落とした。

 そして、2頭のオークは何が起きたのか分からないまま、間抜けな声を上げてその命を終わらせたのだった。

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