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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~戦争~・15

「ルーナ様! 大丈夫ですか!?」

「え……? え、ええ……大丈夫よ。心配しないで」


 追いかけるオークから未だ逃げ続けるルーナとシターだったが、数度目かの詠唱の際に一瞬意識が飛びかけてしまっていたようだ。

 シターの心配する声で、飛びかけていた意識が戻ったのだけれど……正直な話、危険としか言いようが無かった。

 魔力切れで、下手をしたら何時糸が切れた人形のように意識が途切れても可笑しくない状況だった。

 けれど、止まったりしたら自分のみならずシターにも目の前のオークたちの魔の手は伸びる。その想いが必死に彼女の意識を繋げていた。

 チラリ……と、ルーナはヒカリを見たが、敵対している相手が自分たちの力量を遥かに超えているのか、こちらにこれそうに無かった。


「ヒカリちゃんも手一杯……か。だったら、わたしが頑張らないと」


 そう呟いて、ルーナは空っぽになりかけている魔力を出来る限り集めて、魔法を使うための量を集めようとしていく。

 それを心配そうにシターは見ていたが……何かに気づいて、すぐにルーナへと顔を向けた。


「ルーナさ――っ!! 後ろですっ!」

「え? ――――ひゅ、がっ!?」


 シターの声に振り返ろうとしたルーナだったが、彼女の目の前には毛むくじゃらの手が見えただけだった。そして、直後襲い掛かる背中を豪快に地面に打ち付けたであろう激しい痛み。

 いったい何が起きたのか? 混乱する頭の中で必死に現状を見ようとするが……見えるのは自分に覆い被さるオークだけだった。


『ブヒヒ、何とかなるって思ってたみたいで、ガンガン魔法使ってたみたいだけど、どれもこれも無駄ブヒよ? 何せ、おれたちは魔法を弾く毛を供えているブヒからね』


 獣臭い息を吐きながら、ルーナを押し倒しているオークがそう言うが……朦朧としているルーナの頭にはその言葉が入ってこない。

 そして、そんな彼女からオークを引き剥がすべく……シターは瞳に涙を浮かべながら、杖を構えてオークの背中を殴りつけていた。


「ル、ルーナ様を放してください! このっ、このぉ……!」

『ブヒィィ、あ~……そこそこ、気持ちいいブヒよぉ~』


 けれど、格闘戦などをするための力がまったくないシターの杖の攻撃は、オークにとってはマッサージ程度にしかならなかった。

 そんなシターの背後へともう一頭のオークが近づいてくるが、彼女はそれに気づいていないようだった。


「このっ、この――きゃっ!?」

『ブヒャヒャ、捕まえたブー。お前はそっちってことだから、おれはこっちを貰うことにするブー』

『オッケーブヒよ。おれ的にも、こっちのほうが好みブヒから』


 そう言ってオークたちは醜悪な笑みを浮かべる。……とても、醜く気持ちが悪い笑みだ。

 そして、杖を振り上げようとした手を掴まれて身動きが出来ないシターは必死に拘束を剥がそうと身体を捩じらせるが、まったく効果は無いようだった。


「は、放してくださいっ! ルーナさまっ、ルーナさ――ひぐっ?!」

『ブヒャッ、見れば見るほど良いおっぱいだブー。これは揉みがいがあるおっぱいだブー!』


 押し倒されてますます身動きが出来なくなったシターへと、オークはシターを拘束していない手をワキワキさせながら、胸元に近づけて行く。

 その気配に……シターは激しく嫌な予感を覚えた。逃げたい、すぐにでも逃げたい! 心からそう思い、身体を動かし拘束を解こうとするが、力の差がありすぎて……彼女の力では解けそうにも無かった。

 そして、オークの手がシターの服の胸元を掴んだ瞬間――、一気に引き裂いた。


「っ!? あ……ああ…………」

『うひょーっ! 服越しから分かってたけど、本当にこれは良いおっぱいだブー! ブヒャヒャ、漲ってきたブー!!』


 臭い息と共に粘つく涎をだらだらと零しながら、オークは白日の下へと晒されたシターの小柄な身体に似合わぬほどの双丘に視線を釘付けにする。

 一方、シターは何が起きたのかということも理解出来ず、身体が硬直し……動かそうにも恐怖で身体が竦み身じろぎすることも出来なくなっていた。

 そして、目の前のオークは今度こそそのワキワキさせた手で……シターのその双丘を欲望の限り揉まんとしていた。

 近づいてくる毛むくじゃらの手に、ガクガクと身体が震え……カチカチと歯が鳴るのが分かる。


「や、やだ……やだ……。たす、たすけ……助けて……、かみさま……たすけ……」

『神頼みなんて、すぐに必要が無くなるくらいに天国に連れて行ってやるブー。そして、おれもお前で天国に行くんだブー!』


 震えながら助けを求めるシターの言葉に、オークは笑いながら欲望を満たそうとしていた。


 ●


 シターが恐怖に歯を鳴らしている頃、首を絞められ朦朧としていたルーナは……何処か夢の中にいるような気分だった。

 その夢の中では、ルーナはベッドに寝そべっており……今か今かと、これから行われることに期待していた。

 何故ならば、今から行われる行為は好きな人へと初めてを捧げるというものなのだから。

 どんな風にしてくれるのだろうか? まずは優しくキス? それとも自分がリードするのかな?

 そんな風に夢を見ていると、自身の好きな人であるライトがルーナへと覆い被さってきた。


「え? ライくんってば……大胆ね」


 恥かしそうにそう言っていると、ライトはルーナの胸に手を乗せると荒々しく触り始めた。

 その行為に、ルーナは少なからず興奮を覚え……、そしてそのままもう一方の手が下半身に向けられるのを感じ、ライトだから受け入れようとしていた。

 だが、ルーナの顔へと獣臭い息が掛かり、ライトの顔が徐々に潰れ歪み始め……醜いオークへと変わった。

 そう……意識が現実に戻ったのだ。そして、意識が現実に戻ったが行われていた行為は夢と同じ物だった。


「え? ……え?」

『ブヒ? 起きたブヒね? このまま夢を見ていたら良かっただろうけど、おれは現実見て悲鳴を上げるほうが好きブヒよ』


 そう言いながら、オークはルーナの服の下に手を突っ込み……彼女の穿いていた下着を引き千切った。

 引き千切られた下着を咀嚼する様子を見て、ルーナは漸く理解した。

 自分たちの貞操の危機に……!

 その瞬間、滅多なことで動じないはずの彼女の口から悲鳴が洩れた。


「い、いやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『ブヒヒ、良い悲鳴ブヒ! その悲鳴をアンアン言わせてやるブヒよー!』


 ネットリとした視線を悲鳴を上げるルーナに向けて、オークは自らの欲望に忠実になろうとした。

 迫り来る恐怖に、彼女は叫んだ。

 弟のようであり、頼もしくもあり、そして愛する存在を。


「た――助けて! ライくぅぅぅぅぅぅんっ!!」


 そして、その叫びがシターの耳にも聞こえ、神に祈っていた彼女の口から……兄のような存在である、自分のゆうしゃさまの名前が出た。


「助けて……、助けてください! ライトしゃまああぁぁぁぁぁっ!!」


 その叫びで助けが来たら、本当にヒーローだろうがそれは物語の話だけだ。

 けれど、2人が助けを求めた存在、それは……ゆうしゃだった。


 その瞬間、2人の元へと……風が吹いた。

R-15タグが付いたら、この話だな。

まあ、付かないようにしてるつもりですが……。

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