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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~戦争~・11

「俺たちはこっちで陽動……だな」

「はい、獣人の国側の簡易に造られた壁を壊して、出来るだけモンスターたちをこちら側に集中させるのがぼくたちの役目です」

「で、兵士たちを引き連れた城の騎士様たちが反対側の魚人の国側からグルッと回って手薄になっているであろう壁を破壊して、一気に叩く……だったな」


 そう言いながら、ライトさんとボルフ小父さんは歩きます。

 ……現在、ワタシたち冒険者と一般人は獣人の国側に向かう山の斜面を移動していますが……、ワタシたち冒険者たちならまだしも、こんな山道を登ったことがあるという一般人は少ないのか、後ろのほうからは時折呻き声が聞こえます。

 ちなみにワタシたちの部隊……といえば良いのか判りませんが、まあ部隊と呼びましょうか。その部隊の人数は、冒険者約200名の一般人約1900名の約2100名らしいのですが……まあ、正確な数字は分かりません。

 一般人1900名は王都だけではなく、周囲の村や街からの徴兵も行った結果の人数と言うこともあるのでしょうけどね……。

 そして、城のほうの騎士や兵士は総勢で3080名らしいです。その80名が貴族の騎士たちが主……なんでしょうね。


「サリーさん、大丈夫でしょうか……」

「……ワタシには、何とも言えませんよ。フォードくん……」


 移動だけで徐々に体力が無くなっていき、無理矢理支給された心許ない槍を杖代わりにして歩く一般人に大きく不安を感じつつ、ワタシは山道の先を見ます。

 確かもうすぐ、木の杭を打ちつけただけの簡易的な壁が姿を現すはずです。

 そう思っていると、ワタシの視界に昨晩も見た木の杭を地面に突き刺して作られた壁が入ってきました。

 ワタシに見えたということは他の人たちにももうすぐ見えてくるというわけなので……近くに居た一般人からゴクリと喉から唾を呑む音が聞こえ、ギリリと槍を握り締める音も聞こえました。

 その一方で、魔法が使えるルーナさんを始めとした冒険者たちが周囲に聞こえないように小さく呪文を詠唱し始めていました。しかも、弓を使う冒険者たちは矢を番えてすぐにも放つことが出来るように準備を整えています。

 そして、少しずつ木の杭へと近づいて行くと……見張り台では、二足歩行の豚……オークが生欠伸をして暇そうにしていました。……気が緩んでいるのか、それとも気づいていないのか……どっちでしょうか?

 そう思っていると、ボルフ小父さんを主体とした斧やハンマー持ちの冒険者がジリジリと木の杭に向かって近づいていきました。

 彼らが木の杭の前に近づき、体勢を整えた直後――。


「「<ブレイクラッシュ>!!」」

「「<グランドブレイク>!!」」


 大きな声と共に振り上げた斧やハンマーを力任せに木の杭へと打ち付けました。

 すると、力任せに打ち付けられた木の杭は音を立てて圧し折られたり、砕かれたりして倒れて行きました。

 そしてその穴を広げようと、ルーナさんたちの魔法が放たれました。


「「行く手を阻む木々を燃やし尽くせ! 《火炎》!!」」

「「道を阻むものたちを薙ぎ払え! 《突風》!!」」


 放たれた火の玉が木の杭に命中して燃え始め、衝撃を受けたり燃えて脆くなった木の杭へと突風が吹き抜けて行き、音を立てて崩れて行きました。


『な、何だブー!? 敵襲かブー!? ブギャア!?』


 当然、それだけの大きなことをしたのですからモンスターたちにもワタシたちの存在は認識されましたが、慌てふためくオークの頭へと矢が突き刺さり、地面へと落ちて行くのが見えました。

 ぐしゃりという音が聞こえると同時に、塞いでいた木の杭は完全に取っ払われ……魔族の国の入り口がワタシたちの前に晒されました。


「これは……荒れ果ててますね」

「はい……それに、何だか肌寒いんですけど……」


 遠くに見える魔族の国の感想を口にしながら、ワタシとフォードくんは武器を構えます。

 そして……ライトさんが剣を抜くと、声高々に叫びました。


『全員、突撃ーーっ!!』

『行くぞ、野郎どもっ!!』

『『うおおおおおおぉぉぉっっ!!』』


 ライトさんの声のすぐあとにボルフ小父さんがそう叫ぶと、冒険者たちが気合を入れるように叫び一斉に駆け出して行きました。

 そして、そんな彼らについていこうと一般人たちも駆けて行きます。


「ワタシたちも行きましょうか」

「はい、行きましょう」


 フォードくんにそう言うと、彼は頷き……ワタシたちも木の杭の残骸を抜けて、壁の奥へと入って行きました。

 とりあえず、引き付けるだけ引きつければ良いのですが……、嫌な予感がするのは気のせい……ですよね?

 そう思いつつ、ワタシは不安を拭うようにして、胸元にある輝きを失った師匠の剣の欠片を握り締めました。

とりあえず、戦争が始まりましたが……。

上手く表現できなかったら申し訳ありません。

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