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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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定食を食べる。2

お刺身定食を頼んだ2人の状況。

 戸惑うルーナへとタツオさんが言ったことで知った、ミソシルという名前のスープにワタシもスプーンを入れますが、上手く掬うことが出来ません。

 もしかすると、やり方が違っているのでしょうか? そう思いながら、少し考え……だいぶ行儀が悪いと思いますが、持ち上げて飲んでみることにしました。

 ミソシルの椀を持ち上げると、ワタシはそれを口へと近づけて啜るようにして飲みました。

 ミソシルは程好い温かさと塩加減で、何というかホッと安らぐような味でした。


「……このミソシルの味、何だか獣人の国にある調味料と良く似ていますね?」

「おうよっ! この世界に来たときは驚いたぜ、この世界にも味噌に良く似た調味料があったなんてよぉ! まあ、こっちのは正真正銘普通の味噌でい!」


 そう言って、タツオさんはワタシに見えるようにミソが入った容器を出してくれました。

 容器の中には薄茶色のした粒々が入っており、これがミソだとワタシは思いました。ちなみに近づけていたからか味噌のにおいだと思う独特のにおいが鼻を突きました。

 でも、このにおい……やっぱり、獣人の国にある調味料と似ていますね。

 そう思いながら、ワタシはにおいがそっくりだけれど豆がそのまま残った形の獣人の国の調味料を思い返します。

 っと、懐かしがっている場合じゃないですね。このオサシミを食べてみましょう。


「まずは……このお肉みたいに赤い物を食べてみましょうか」


 呟きながら、ワタシはフォークで赤いサシミを突き刺して口に入れました。

 口に入れたサシミはまったりとしており、合間合間にあった白い筋が独特な食感を生み出して焼いた魚と違った味わいと食感が口の中に広がっていきます。

 ですが……なんだか、物足りない気がするのは何故でしょうか?

 そう思いながら首を傾げていると、隣に座るシャーグさんが手馴れた手つきでカウンターに備え付けられた、黒い液体を小皿に注いでいるのに気がつきました。

 黒い液体? あれは、いったい……?

 不思議に思いながらも、ワタシもシャーグさんに倣ってその黒い液体を小皿へと注ぎました。


「真っ黒な液体と思ったけど……、違うんですね」

「おっと、わりぃわりぃ、嬢ちゃんはお刺身を食べるのは初めてだったんだな。お刺身はな、そのまま食べても美味いし、塩をかけても美味い。だけど、一番美味しく食べるには、この醤油に付けて食べるのが良いってもんよ!」

「ショウユ、ですか?」


 初めて聞く調味料の名前に首を捻りながらも、そのショウユをスプーンに少しだけ注いで舐めてみました。

 ……これは…………深い味わいはありますが、かなり塩辛いですね。これだけ飲めとか言われたら拒否したくなりますよ。

 そう思いながら、ワタシはこれに付けると本当にオサシミは美味しくなるのだろうかと不安に思いつつ、赤いサシミをもう一回フォークで突き刺すと、今度はショウユに付けて食べてみました。


「!? こ、これは……美味いっ!!」


 先程の何か物足りないと思った味わいが、ショウユを付けた途端に足りなかった物が補われたかのように味わい深くなりました。

 その味の変化に驚きつつ、今度は半透明のサシミを食べてみることにしました。

 ……フォークに少し硬い感触があり、それが皿に当たった感触ではなくこのオサシミの感触であることに驚きつつも、どんな味なのか気になりつつ……ぐんにゃりと垂れているそれにショウユを付けて食べました。


「ぐ、ぐにゃしゃくっ!?」


 そう、例えるならばそんな感じでした。奥歯ではグニャッとした食感なのに、前歯だとシャクっと簡単に噛み切れる。

 何だか不思議な感じの物です。

 正直言って、初めての体験過ぎて……どう反応したら良いのかまったく分かりません。

 半ば困惑と同時に魅了されながら、ワタシはオサシミを食べつつマイスを食べます。

 何というか、もう……止まりません!


 ●


 まるでマグロ、イカ、タコ、タイみたいだ。

 そんなことを思いながら、ボクは綺麗に皿に盛り付けられたお刺身を見ていた。

 隣ではサリーが、野生の本能丸出しといった感じに美味しそうにお刺身を食べている。

 ……でも、マグロとかって何だろう? そんな名前の魚なんて聞いたことが無いはず。……ううん、多分ボクが知らないだけでこの海に居たりするんだろう。

 でも、何で知らないはずの魚の名前なのにボクは知ってるの?

 あれ? 何で……? 思い出そうとすると、まるで何かに塞き止められているみたいに頭の中がグワングワンとしてくる。


「どうしたんだい、お嬢ちゃん? お刺身、好きじゃなかったのか?」

「えっ!? い、いえ、嫌いじゃないと思います。と、とりあえずいただきます!」


 そう言って、ボクはタツオさんにそう言ってフォークを掴んでお刺身を食べようと……。

 何だろう、これじゃない感は……。そう思いながらボクはフォークを下ろし、カウンターを見回した。

 すると、そこにはボクの心が求めていた物があった。

 それをボクは戸惑うこと無く手に取り、慣れた手付きで握り……醤油を小皿に注ぎ、イカを摘むと醤油に付けて口に入れた。

 噛み締める度にクニクニとした食感がボクの歯に伝わってくる。けれど同時に、イカから出る旨味成分が口いっぱいに広がり、濃厚なイカの旨味と醤油の辛さが美味しく感じられた。

 ここのイカって、少し硬いんだ。そう思いつつゴクンと呑み込むと、神妙な顔つきでタツオさんがボクを見ていた。


「え、えーっと、ボクの顔に何か……?」

「いや、すまねぇな! 余りにも自然な動作で箸を使ってるし、まじまじ見ると顔つきとかどう見ても……いや、何でもねぇ何でもねぇ、気のせいかも知れねぇわな」


 タツオさんはボクにそう謝って、何かを考えるようにして動かなくなった。

 どうしたんだろう? 疑問に思いつつも、分からないことだから今は考えても仕方ないよね。

 そう結論付けて、ボクは食事を続けることにした。

……うん、割り切ろう。

とりあえず、明日の更新はいかにトンカツを美味しく表現できるかを頑張ろう!

あとから揚げも食べさせたい。

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