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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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定食を食べる。1

 皆で手を合わせてから、わたしは注文をした焼き魚定食を食べることにしたわ。

 椀に盛られたマイス、初めて見る類のスープ、酢漬けに似ている見た目の野菜の添え物、そしてメインとなるピンク色をした焼き魚の切身と黄色の固形物。

 いったいどんな味なのか気になりつつ、わたしは初めにスープを呑んでみることにしたわ。

 スプーンを掴むと、そのスープの中にスプーンを入れるとスープの底に沈殿していた中身が浮き上がって、上澄んでいたスープが一気に濁ってしまったの。


「えっ? これって、飲むの……難しくないかしら?」

「そいつぁちげぇぜ、姉ちゃん! こいつは味噌汁っていって、濁っているのが当たり前の飲みものなんでぇ! だから、混ぜたほうが良いってもんよ!」


 多分だけど、この……上澄んだスープを飲むのだと考えながらわたしが呟くと、タツオさんがカカッと笑ったわ。

 うーん、本人はこれが料理人……たしか板前だったわよね? その板前って感じにやっているのだろうけど、ちょっと苦手だわその言い回しは。


「そ、そうなの? それじゃあ……いただくわ」


 とりあえず、そう言うとわたしは言われたとおり、みそしるをスプーンで掻き回してから口を付けたの。

 ……すると、見た目に反してあっさりとしてた独特な辛さとスープ全体に染み込んだ魚介の味わいが口いっぱいに広がってきたわ。

 これは……人間の国や獣人の国で飲んだことがあるスープとは違った味わいね……。っと、スープの具材はどんなのかしら?

 そう思いながら、スープの中に浮いていた白い物体を掬うと、プルプルと震えていて……それによく似たお菓子を思い出したの。

 ……まさか、お菓子を入れるなんて無いわよね?

 不安に思いながら、それを口に入れると……ちゅるんと簡単に入り、淡白な味わいだけれど……濃厚な豆の味わいがしたわ。どうやらこれは……豆で造られた食材なのね。

 そう思いながら、豆で造られた白い物体と海草を口にしてから、野菜の添え物を食べてみようと考え……フォークで突き刺すとそれを口に入れてみた。


「酢漬けじゃない……けど、塩味が程好く効いていて、ピリッとした辛さも美味しさを引き立ててるわね」

「おうよっ、こいつぁ浅漬けと言って、漬物の一種なんだが箸休めをするときにも良い食べ物で、酒の肴にもオススメよぉ!」

「そうなの? じゃあ、近いうちに寄らせてもらうわね」


 そう言ってわたしは食べることに集中することにしたわ。


 ●


「これって、確か……シーマスでしたよねっ?」


 少しだけ興奮しながら、シターは目の前の焼き魚を見ながらそう言います。

 シターが住んでいた山の麓の修道院の近くでは、季節が秋になると海に居たシーマスたちが、川へと戻るために流れる川に逆らって登って行くという光景が圧巻だったことを覚えています。

 ちなみにそのときのシーマスは脂が乗っていて美味しく……、仲間たちとお昼ご飯のために逆らっているシーマスを捕えるということをしていたのが懐かしいです。

 ……皆さん、元気でしょうか…………。

 って、いけませんっ。シターが不安になってたら他の皆さんが心配しますっ!!

 頭をブンブンと振ってから、シターはナイフとフォークを手に取ってシーマスを食べることにしました。

 ナイフとフォークを使って骨を分けてから、シーマスを口に運ぶと……ジュワ~っと口いっぱいに脂が広がり、程好い塩の味が広がってきました。


「おっ、美味しいですっ!!」

「おー、美味いか? よかったな、嬢ちゃん! こっちの卵焼きも美味いから食ってみろよっ」

「はっ、はいっ!」


 程好い塩加減のシーマスを食べて、上機嫌なシターへとタツオさんがそう言ってくださり、シターはそれに頷くと同じ皿に盛られているタマゴヤキをフォークで突き刺して、それを口に入れました。

 タマゴヤキはその名前の通り、卵を使っているらしいのですが、普通に卵を焼いたわけでもなく、人間の国特有の乳を混ぜてフライパンでトロトロに炒めるという作りかたでも無いようでした。

 だって、このタマゴヤキは口の中で解れて行き……、甘辛い味が口いっぱいに広がっていったのでした。

 パリッとしたシーマスの皮、ジュワ~っとしたシーマスの身、甘辛く味付けされてトロトロとした食感が口の中に広がって、何ともいえない味わいでした。

 そして、そんな幸福な状態となった口の中にシターはマイスを入れました。


「――っ!?!?」


 驚きがシターを満たしました! だって、このようなマイスは獣人の国で食べたスープで炊き込むのを食べたことはありました。ですが、今食べたこのマイスは……マイス本来の味がしっかりと出ており、余分な味わいが無かったのです。

 そして、硬さも程好く……水っぽくも無ければ石のように硬くもありません。

 これなら、たっぷりと食べれそうな気がします!

 そう思いながら、シターは美味しく焼き魚定食を食べていました。

……あ、あっるぇ? 1話で全部の料理を語るはずだったのになぁ……。


まあ、疲れていたというのもあるな。うん、そう思おう。

ってことで、明日はお刺身定食をば(ぇ

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