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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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少し遅めの昼食を

「えっ!? タツオさんって、転生ゆうしゃなんですかっ!?」


 客と対面するように作られた調理場の前に立ち、調理の合間に話をしていたときにタツオさんがそう言い、ワタシたちは驚きを隠せませんでした。

 獣人の国で出会ったドブさんと師匠。それ以降はゆうしゃ自体であったことは無かったので、驚くのは当たり前です。

 そして、タツオさんは驚かれたワタシたちを見て、少しばかり自慢げに白い制服の袖を捲くり、ニカリと笑いました。


「おうよっ! こちとら、ちゃきちゃきの転生っこさあっ! って、おいおい、そんな顔で見てくれんなって」

「す、すみません。ですが……その、転生ゆうしゃはその……」

「? なんでぇなんでぇ、言いにくいことでもあるってのかぁ?」


 ハスキー叔父さんに聞いた転生ゆうしゃの特徴である別世界の魂がこの世界の人の身体を乗っ取るということを思い出し、ワタシはタツオさんにどう言えば良いか悩みつつ反応に困っていました。

 そして、タツオさんはタツオさんで理解出来ないらしく、困った声を出しながら調理を行っています。

 するとそこへシャーグさんが助け舟を出してくれました。


「タツオ、要するにだ。こいつらは、転生ゆうしゃ特有の魂とか肉体とかな話が気になってるってことらしいぞ」

「あっ! なぁ~るほどなぁ!! そういう心配をしていたってことか! 優しいなぁ、お嬢さんたちはよぉ! けど、安心しなせぇ、あっしは心と身体は利害が一致していて、あっしはあっしで、あっしはあっしって風にどちらも自分だって理解できてまさぁ!」


 そう言って、タツオさんは詳しい説明をしてくれましたが……よく分からないので要点だけ纏めると、こんな感じでした。


 ・元々、タツオさんはゆうしゃだったけれど、戦いに向いていなかったため、この店で料理屋をしていたけれど……悲しいことに食材の知識はあるけれど、料理の腕はからっきしだったとのこと。

 ・そして、魂の異世界の住人は料理を専門とする学校というものに通っていたらしく、楽しく料理をする日々だった。そして、何時かは自分の店を持つという夢を持っていたけれど、ある日の夜に普通に寝てたら神様にこの世界に連れてこられた。

 ・初めは見慣れぬ世界でかなり戸惑ったけれど、料理を作るのが好きだった異世界の住人の魂は料理を作ろうとしていたみたいでした。ですが、向こうの世界によく似た食材だけれど本当に同じか分からないために迷っていたところで、元々の身体の持ち主であるタツオさんと話す機会が出来たらしく……話してみると意外と馬が合って、最終的に自分()の料理の腕と自分(身体)が持つ食材の知識を合わせるという方法に思いついた。

 ・その結果、前の世界であった料理をこの世界で作れるようになるようにしながら、美味しい料理を作るという風になった……とのこと。


「で、気がつくとあっしという存在は普通にタツオになっていたってわけでさぁ!」

「そ……そうなのですか……?」


 苦笑しながら、タツオさんの言葉にワタシは頷きながら……ふと、最後に会ったときの師匠の様子が頭を過ぎりました。

 そうです、あのときの師匠は……まるで2人居るように話していました……!

 タツオさんの話が本当ならば、ワタシはあのとき、師匠2人と会話をしていたんですね。

 ……師匠、今何処にいますか? また会いたいですよ……。

 そう思っていると、タツオさんの調理が幾つか終わったらしく、盆に載せられた定食が次々と出されてきました。


「はいよ、お待ち! 先に、お刺身定食からだよっ!!」

「あ、ありがとうございます。……って、これは、マイスですか?」

「おうよっ! ツヤツヤの銀シャリだ! そして、刺身の魚は今日のオススメにさせてもらったぜぇ!! 焼き魚定食お待ちどぉ!」


 土で作られたであろう、見事な皿に盛られた刺身と呼ばれた生魚よりも、今のワタシにはマイスのほうに驚いていました。

 何故なら、基本的には獣人の国はマイスを大量に消費し、このような感じの米料理もあったりしますが……汁っぽくてべちゃっとした感じが少しだけ目立っています。ですが、椀に入れられたマイスはふんわりとしてその一つ一つが輝いて見えました。


「これは、美味しそうですね……」

「そうだろうそうだろう。それじゃあ、後はトンカツだけだなぁっと!」


 そう思っていると、ジュワァ~ッ!! という油で何かが揚げられる音が聞こえ、そこを見ると油が満たされた鍋に、何かを塗した何かが泡を立てて揚げられているのが分かりました。

 しばらくして、裏返されて揚げられ……それが終わるとカラリといい狐色の揚げ物が姿を現しました。

 ……あれ? トンカツって、人間の国の料理のコートレによく似ていますね。ですが、あれって……油がきつすぎるんですよね……、衣も油でベチャベチャで。

 そう思いながら、トンカツ定食を頼んでしまったフォードくんを気の毒な風にワタシは見ます。

 その瞬間、調理場のほうから、小気味良いザクッという音が響き渡りました。

 心地良い音に耳がピクッと動き、音がしたほうを見ると……タツオさんが包丁でトンカツを食べ易く切っているところでした。

 ザクッ、ザクッ、と切られて行き……その音にゴクリと喉が鳴りながらも、ワタシはトンカツの音を振り切るべく……自分が食べるお刺身定食のお刺身を見ました。

 赤、白、透明に近い白、そんな様々な魚が切られて、綺麗に盛り付けられており……芸術と呼ぶべきそれにワタシは見惚れてしまいました。

 ちなみにタツオさん曰く、芸術と呼ぶ言いかたは間違っていないそうです。

 そう思いながら待っていると、最後のフォードくんのトンカツ定食が出され、全員分が揃いました。


「さぁて、それじゃあ……食うか」

「は、はい……! い……いただきます!」


 シャーグさんの言葉にワタシたちは頷き、一斉に定食を食べ始めました。

……おかしいなぁ? 普通に食べる話を書くはずだったのに。

まあ、明日の更新では食べるのを重点に書けばいいかー。

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