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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
251/496

寝坊しました。

 ――カチリッ、という鍵が開けられる音と共にワタシの意識は目覚め……キィと扉が軋む音を立てた時点で既に何時動いても良いように脚に力を込めました。

 そして、ワタシたちが眠っている待合室の扉が開かれた瞬間、相手が誰かを確認するよりも先に組み伏せることを考えていました。

 けれどそれは起きませんでした。何故なら……。


「おいおい、誰かも確認すること無く襲う気満々かぁ? まあ、こんな場所で寝ることになったらそうなるわなぁ~……」

「――――っ!? ……シャーグさん、でしたか」


 と、扉の入口でそんな声が聞こえました。

 そこで漸く、この家に入ってきたのがこの街のギルドマスターであるシャーグさんであることに気がつきました。

 驚きながらも、部屋の中を見渡すと……他の4人も目が覚めていたらしく、ホッと息を吐いていることに気がつきました。

 一同に開けて良いかと視線で問うと、全員頷くのが見えたので扉を開けることにしました。

 扉の前には、今さっき自分で言ったようにシャーグさんが立っており、苦笑していました。

 とりあえず、どう言えば良いかちょっと困ったので……挨拶をすることにしました。


「えっと、おはよう……ございます?」

「ああ、おはよう……って言ってもいい時間なのかは分からないがな?」

「え?」

「……あー……、その様子で分かった。今の時間が何時か分かっていないってのが分かった」


 ガシガシと頭を掻きながら、シャーグさんは苦笑していました。

 ……なんでしょうか、この嫌な予感は…………。

 そう思っていると、シャーグさんが今の時刻を教えてくれました。


「今は……昼過ぎだ。ちなみにお前たちが来るはずだった時刻を大幅に過ぎてしまっているからな」

「「……す、すみません」」

「いや、大丈夫だ。それに疲れていたんだろう? それに、こんな場所しか用意出来なかったからなぁ。まあ、手出ししないように周りには強く言い聞かせておいたから今晩からは大丈夫なはずだぜ?」


 どうやら疲れ過ぎていた上に、不届き者が居ないかと注意して神経を張り巡らせていたためか……気づけばぐっすりとテーブルに突っ伏して眠っていたようです。

 それに気づき、ワタシたちは素直に謝罪しました。

 けれど、疲れているというのは気づいていたのか、シャーグさんはそう言って豪快に笑いました。……いったい何をしたんでしょうかね? いえ、気づいてはいます。気づいてはいますが……気にしないでおいたほうが良いじゃないですか。

 そう思っていると、寝起きのフォードくんのお腹から腹の虫がグゴーーッと鳴り響きました。

 その音に少しだけギョッとしましたが、年頃の男の子なのですからかお腹が空くのは当たり前ですよねと思いながら、気にしない方向で行くことにしました。


「その前に、まずは飯と行くか? この近くに良い店があるんだ。……行くか?」

「……行きます」


 フォードくんの腹の虫もですが、ワタシたちの腹の虫ももう少ししたら鳴るのではないかと不安に思って、シャーグさんの誘いに乗って、昼ご飯を食べることにしました。

 軽く準備を整えてから、ワタシたちはシャーグさんに連れられて、この拠点から少し離れた場所にある食堂へと連れられていきました。

 連れられては来たのですが……、この食堂は明らかに不思議な感じの店でした。

 まず最初に不思議な点というのは、基本的に扉というものは前に押したり、後ろに引いたりして開けるという物です。ですが、その食堂の扉は2枚の扉の内の1枚を横にずらすことで開くという物でした。


「へらっしぇ!! って、シャーグの旦那じゃないですか? どうしたんですか?」

「ああ、ちょっとこいつらに飯を食べさせようと思ってな。大丈夫か?」

「へい、大丈夫で――って、こいつぁ中々の美人さんばかりじゃないですか!? もしかして、旦那のこれですかい?」


 ガランガランと扉につけられたベルが鳴り、来客を告げる音が店内に響き渡った。

 すると、台所で暇そうにしていたコックさんがシャーグさんに気づき、笑顔を浮かべました。

 そして、シャーグさんを中に招くと共にワタシたちに気づいて、両手を軽く挙げて驚いた仕草を取りました。

 ……けれど、何でしょうか? この、演じている風な印象は……?

 そう思っていると、シャーグさんがすぐにワタシたちの事情をコックさんに語り始めました。


「馬鹿言ってんなって。こいつらは昨日この街に来た冒険者で、うちが買い取ったあの拠点を貸すことにしたんだよ」

「へぇ!? あの場所をですかい!? こりゃあ、色々と興味がありますが……まあ、旦那たちが怖いんであっしは傍観するだけにさせてもらいまさぁ!

 っと、食事でしたね。何にしやしょうか! っと、メニューは上のほうに書いてありやすが、基本的に昼は定食だけなのでご了承のほどをお願いしやす! あと、オススメはお刺身定食でやすよ!!」


 シャーグさんと会話しながら、コックのかたはカカカと楽しそうに笑っていましたが、思い出したようにワタシたちのほうを向きました。

 そして、ワタシたちは上に書かれているというメニューを見ることにしました。

 定食のメニューは4種類ほど書かれており、コックのかたが言ったお刺身定食、焼き魚定食、とんかつ定食、からあげ定食でした。

 ですが、とんかつとからあげとは何でしょうか? 初めて聞く名前にワタシは疑問を抱きながら首を傾げました。

 まあ、とりあえずは……オススメを頼んでみるのも良いですよね。

 そう思いながら、ワタシは注文をします。


「では、ワタシはお刺身定食をお願いします。コックさん」

「おっといけねぇお嬢さん! あっしのことはコックではなく、板前または板長と呼んでくだせぇ! あと、あっしはタツオって言う名前でさぁ! よろしくっ!!」

「は、はあ……」

「板前って…………いや、何だかここって見た目は居酒屋っぽいけどさ……」


 このノリについていけず、ワタシは苦笑するばかりで、隣に座るヒカリさんは呆れるように呟いていました。

 けれど、自分の言った言葉が理解出来無いのか首を傾げていました。


 ちなみに、最終的にワタシたちの注文はお刺身定食が3人、とんかつ定食が1人、焼き魚定食が2人という感じになりました。

ちょっと間を挟んでから、また回想を始めます。

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