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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
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回想~人間の国~・1

 ドスンと馬車が揺れ、ワタシの身体は大きく揺れ、眠っていた意識が浮上してきました。

 ぼんやりとしたまだ完全に起きていない頭で前を見ると、人間の兵士が御者台に座って馬を操るのが見え……その隣に、フォードくんが座っているのに気がつきました。

 そのまま、馬車の中を見回すとライトさんたちもやることが無いからか、眠っているのに気がつきました。


「……寝てたみたいですね。大きく揺れた感じがしましたが……多分、車輪が道の石に乗り上げたんでしょうね」


 呟きながら、後ろから外を見るとワタシの予想は当たっていたらしく、大き目の岩が地面に埋まっているのが見えました。

 表面が大きく出ていますが、きっと中はもっと大きいから出そうにも出せなかった。ということでしょう。

 そんなことを考えながら、ワタシは馬車が通っていった道を見ます。

 何処までも続く果てしない荒野、その荒野に造られた道を馬車は走っており……後ろからも同じようにゆっくりと走る馬車が見えました。

 街を出てから、2日が経過しているため、街はもう見えなくなっており……今ではもう同じように道を走る商人の馬車や馬に乗っていたり歩いていたりする冒険者たちが見えるぐらいでした。

 そう思いながら後ろを見ていると、御者台のフォードくんから声がかかりました。


「あ、サリーさん起きたんですか? 座ったまま眠ってたので、疲れてたみたいですね」

「おはようございます、フォードくん。ええ、ワタシ自身疲れてるって感じはなかったんですけど……座りっぱなしでも体力を使うみたいですね」

「そうですよね……っと、良かったらこっちで一緒に話でもしませんか? こっちも退屈してますし」

「そう、ですね。それでは失礼して……よいしょっと」


 フォードくんの誘いに頷き、ワタシも御者台に座ろうかと思いましたが……2人掛けですし、男性2人に挟まれると言うのも……と考えて、御者台の後ろに近い馬車内に座りました。

 それから他愛も無い、獣人の国での生活やどんな依頼を受けていたかという話をしながら、ゆっくりと馬車が進んで行くのを待っていました。

 しばらくすると、ライトさんたちも目が覚めたらしく……ワタシたちの話を聞きながら、自分たちの見たこの国のイメージを語っていました。

 そして夕暮れになると、馬車は街道から出てこの2日間毎日していたように、野営の準備を始めます。

 用意していた薪を地面に並べ、空気が通り易いようにしてからルーナさんに《種火》を唱えてもらって焚き火に火をつけると兵士のかたとヒカリさん、ルーナさんが晩御飯の用意をし始めました。

 ルーナさんに《飲水》を唱えてもらい、食材の入った鍋に水を溜めてから焚き火で温め始め……塩で味付けをし、燻製にされた肉を直火で炙り数枚重ねにしたマッキーの皮で包み、晩御飯となりました。


「最近は獣人料理ばかりだったから、舌が辛い物に慣れてしまったみたいね……」

「そっ、そうですねっ。でもお店の人も普通のよりも辛さは控えめにしてくれていたみたいですが……」

「けど、美味しかったから良かったじゃん。けど、昨日の晩はかなりやばかったよね……」


 そう言いながら、薄い塩味で味付けされた野菜のスープをルーナさんたち3人は飲んでいます。

 ちなみにそれを言われたワタシはそっと目を逸らして、昨日の出来事を誤魔化そうと頑張ります。……いえ、誤魔化せないと言うのは分かります。分かりますよ?

 けれど、ここ最近はずっと獣人の国で活動をしていたのですから、作る料理といったら基本的に獣人料理になるじゃないですか。

 あの飛び切りすっぱ辛いスープとマッキーという組合せを出して、飲んだ瞬間に咽ていたのを思い出しました……。


「す、すみません……」

「そうだよ、3人とも! サリーさんも反省してるんだから、そんなことを言うのは止めるんだ!」


 謝るワタシを庇うようにライトさんはそう言いますが、正直居た堪れません。

 いえ、悪気が無いのは判っています。そして悪いのはワタシだというのも……。

 そう思いながら、ワタシは人間の国独特の薄い味付けがされた塩スープを飲みました。


 ●


 翌日、ここ2日間と同じように馬車はゆっくりと街道を走り、夕暮れになると街道から離れて野営を行い……それが2日続いた日の昼にさしかかろうとしている頃に、漸く獣人の国と人間の国との国境となっている山が見えてきました。


「あ、見えてきたよ! 漸く国境だねー、本当長かったよ」

「ええ、行くときは途中で拾った人のせいで色々と可笑しくなりそうだったから、気にしないようにしていたけどだいぶ掛かったのねー」

「人間の国に戻ったら、初めにお城に行って王様に報告しないといけませんねっ」

「うん、そうだよね。そのときに、サリーさんとフォードさん、そしてアリスさんのことをも話さないといけないよね」

「お願い……出来ますか?」

「はい、任せてください。お二人は……冒険者ギルドで待っていていただければ良いと思います」


 山道を昇り始める中で、ワタシたちは人間の国の王都に辿り着いてからのことを話しながら馬車が揺られていました。

 そして、山道をある程度進んで行くと岩山だった周囲に緑が見え始めました。

 あ、この場所って……。そう思いながら、フォードくんを見ると同じことを考えていたらしく頷きました。

 ……ここから、始まったんですよね。

 そう思いながら、馬車は緑が生い茂る山道を通っていき……、ワタシは馬車の後ろから見える草花が生い茂る場所を見て、師匠のことを思い出していました。

 その思いを胸に秘めた中、ワタシたちは人間の国へと帰ってきました。

 ……懐かしむのも良いですが、耳と尻尾を隠さないといけませんよね。それを思い出して、顔を赤らめながらワタシはそれらを隠すためにもぞもぞとし始めました。

しばらくは人間の国の回想が始まります。

そして、昨日はポッキーとか多く買いました。

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