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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
242/496

移動……の前に晩御飯

 用意された拠点に向かう……と言った前に、シャーグさんが「先に何か食べていけ」と言ったところで漸くワタシたちはこの街についてから何も食べていないと言うことを思い出しました。

 すると、フォードくんとシター、ヒカリからお腹の虫が鳴り響き、シターとヒカリは顔を真っ赤にしており、フォードくんは限界が来たのかぐったりと倒れ伏しました。

 それと同時に受付をしていたはずのシャッバさんが酒場のほうから顔を出してきました。


「マスター、とりあえずあり合わせの物で用意してもらいましたが、よろしいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だと思うぜ。ってことで、お前ら、まずは腹ごしらえだ。腹の虫は立ててないだろうけど、サリーとそこの魔法使いさんも腹ぁ減ってるだろ?」

「「……いただきます」」


 腹の虫が鳴らないように頑張っていましたが、シャーグさんにそう言われ……ワタシとルーナは顔を赤くしたのでした。

 シャッバさんに勧められるがままに丸テーブルに設置された椅子に座ると、酒場の料理を出していた調理担当の職員かそれとも雇われコックが作った料理が皿に乗せられてワタシたちの前へと置かれました。

 ……それは、見た目は何の変哲も無いような食材を挟んだパンであるハーガーでした。

 けれど、挟まれている食材……それは、どう見ても魚でした。


「えっと、この挟んである物は……?」

「ん? フィッシュハーガーですけど? ……ああ、こういうハーガーは見たこと無かったのですね」


 キョトンとした顔でシャッバさんがワタシの質問に不思議そうに答えていましたが、すぐに納得していました。

 ちなみにワタシたちが戸惑うのも無理はありません。基本的にハーガーに挟まれている物はクズ肉をミンチにして焼いた物が普通であるというのに、目の前のハーガーは魚でした。

 ……ですが、焼いているわけではないようです。多分、揚げている……のでしょうか?

 そう思いながら、警戒しつつ周りは誰が食べるかをジッと見ていました。

 そんなワタシたちを見て面白そうに笑うと、シャッバさんは声をかけてきました。


「ま、慣れないってのはあるでしょうけど、食べてみろ――じゃなくて、食べてみてくださいよ」

「何だか今、素が……まあ、気にしません。では、いただきます」


 シャッバさんに勧められるままに、ワタシはハーガーを手づかみで取ると口に入れました。

 固めのパンは火で炙られていたらしくパリッとした歯応えが良く、すぐにしゃくりと小気味良い野菜の食感とサクッとした魚のフライを噛んだ瞬間に口の中にジュワッと酸味が広がりました。

 ハーガーは普通こってりとしたコクのあるソースで味付けられているため、この酸味に一瞬驚きましたが……バランスが整えられているらしく、マズいどころか美味く感じられます。

 魚のフライの衣には香辛料を混ぜ込んであるのかピリリと辛く後を引いており、この酸味は揚げ立てのフライをサッとビネガーに通した……といったところでしょうか?


「おっ、美味しいっ!?」

「それに、このフライの魚って……あ、前の町で焼き魚として食べたけど脂っこくて生臭かったものよね?」

「たしか……サーバって魚、でしたよねっ?」

「サバフライを南蛮漬け風にして、ハンバーガーにするなんて……」

「このハーガーも美味いけど、付け合せの揚げポティトもほんのり塩味のサクサクホクホクでうめぇ!」


 ワタシが食べ始めるのを見てから、他の皆さんも食べ始めたらしく……それぞれ味の感想を口にしています。

 何となく毒見役にされたみたいでイラッとしますが、抑えておきましょう……。

 そして、フォードくんが言うように棒状にカットされて揚げられたポティトが程好い感じにホクホクとしており、合間に食べると美味しいですね。

 ちなみにこの国なのか、この店なのかは分かりませんが、ポティトは細く切っているタイプですか……一応ハーガーの付け合せは揚げポティトが鉄則ってなってるんですよね。太く切られてる物や、薄く切られている物とか……。

 そして、飲み物はコーヒーかジュースになっていますが……此処はコーヒーのようですね。

 そう思いつつ、ワタシはグラスに入れられたコーヒーを口にしまし――っ!!?


「ぶっ!? な、何ですかこれはっ!? コ、コーヒーじゃない……!? ジュース? でも、パチパチとして……」

「え? 何言ってるのよ、サリー。どう見てもコーヒーに見えるわよ? ……っっ!?」

「だ、大丈夫ですか、2人とも……?」


 口の中の飲み物を噴出しそうになるのを必死に抑えるワタシとルーナの2人にフォードくんが心配そうに言います。

 ですが、正直な話。口の中がパチパチとしていて喋るに喋れません……。

 そんなワタシたちを見ながら、シャッバさんが悪戯成功といった表情をしているのを見ると……多分、飲み慣れない人には厳しい飲み物なんでしょうね……。

 エールなどによく似た発泡感とは違った初めて味わう感覚でした。


「えっ!? こ、これ……コーラッ!? コーラなのっ!? うわぁ、凄く久しぶりだーっ!!」

『『ヒ、ヒカリ……?』』


 そんな中、驚いた声を上げながらヒカリが、嬉しそうに言いながらワタシたちが咽ていた飲み物を美味しそうにごくごくと飲んでいました。

 その行動にワタシたちだけでなく、シャッバさんたちも驚いた表情で見ていました。

 ……あとで聞いた話だと、この飲み物は炭酸水またはコラーという名前の飲み物で慣れない人には慣れないけれど、慣れればがぶがぶと飲みたくなるという翼人の島で造られている飲み物だそうです。

 飲み慣れないというなら出さなければ良いじゃないかと思いますが、余っている飲み物はこれしかなかったから出したとのことでした。

 それから、それらを食べ終え一息吐いてから……今度こそ、シャーグさんが用意した泊まれる場所へとシャッバさんの案内で移動することになりました。

ご意見ご感想お待ちしております。

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