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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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獣人

本日2回目の投稿です。

 いきなりの突拍子もないサリーの言葉に、流石の彼女も驚いたようで目が点になっていたわ。

 でも、普通そうならないのが可笑しいわよ。だっていきなりの弟子入り志願よ。それも、自分よりも年上っぽい女性がよ?

 そんなサリーだったけど、彼女はあることに気がついたわ。……動いていたのよ。頭の上、というよりも髪の下の何かがもぞもぞとね……。しばらくすると、髪から押し上がるようにして動いていた何かが姿を現したわ。

 ちなみに動いてたのはなんだと思う? え、ネズミ? ネズミだったらある意味面白いわね。使い魔的な意味で。でも違ったわ。

 どんなのが姿を現したって? それじゃあ、話すわね。


「これは……犬耳?」

「っ!? マズいっ、サリー出てる! 出てるから、早く隠せ!!」

「え、あ――っ!!」

「へ? え、サ、サリーさんに獣の耳? って、まさか獣人?!」

「獣人?」


 焦るギルドマスター、自分がしたことに気がついて急いで頭を抑えるサリー、驚愕の表情のフォード。そんな3人を見ながら、彼女は聞きなれない言葉に首を傾げたわ。

 獣人が聞きなれないって変? まあ、ここは色んな種族の人がいっぱい居るしね。人に獣人、エルフに妖精。他にもいろいろ居るからあんたには変だって思うわよね。でもね、王都のほう……というよりもその大陸では獣人っていろいろと厄介な存在らしいのよね。

 まあ、自分たちとは違うというのが目に見えて分かるといろいろと接し方が大変になるよね? ……うん、あんたはそう言うと思ったよ。けど、大人って言うのはそんな簡単に考え方が変わらない生物なんだよ。大変だよね……。

 だから、何も知らない彼女のほうは良かったけど、フォードのほうは……。


「は、早く逃げないとっ!? い、いや、早く駆除しな――ぶべっ!?」

「少し……黙ってろフォード。すまないな、アリス。サリーのことは……秘密にしておいてくれ」

「ええ、よく分からないけど……その方が良いみたいね。こいつの反応を見る限り」

「ご、ごめんなさい……ボルフ小父さ――ギルドマスター……」

「いや、こっちもすまんな……フォードが酷いことを言って」


 気絶したフォードをとりあえず暴れないように部屋にあったロープで簀巻きにしてから、彼女はどうしてフォードがサリーが獣人だと分かった途端に怯えて、騒ぎ始めた理由を聞いたわ。

 その話で初めて彼女は知ったんだけど、この世界は大きな丸い形をして、真ん中に巨大な山が聳え立って、それに連なる山脈を隔てていくつかの国に分かれていて……彼女たち『人間』が住む世界、『魔族』たちが住む世界、『エルフ』や『妖精』が住む世界、『獣人』が住む世界、『魚人』が住む世界、『翼人』が住む島があるみたいなの。御伽噺にもあるような世界よね。

 え、ハガネとウーツはなんで人間界に居たかって? んー、多分牽制目的とかだったんでしょうね。

 で、人間の世界はいくつかの国とは貿易などをして交流をしているけど、分かり合えない国同士というのもあるみたいなの。魔族の国は全体的に分かり合えないと言われてるし、人間とエルフはまったく交流がなくて閉鎖的だし、獣人はその国に行ってない人たちからしたら野蛮と思われているみたいなのよ。魚人? 見た人はかなり少ないみたいよ。

 ちなみにそれを聞いた彼女は益々ファンタジー要素が増えたというわけで心の中で小躍りしてたけど、顔には出さなかったわ。


「まあ、要するにフォードはまだ獣人の国に行ってないからかなり偏見を持ってるんだ。ここのギルドにも他人種の冒険者は来ないしな」

「マスターを見てる限りだと、行ったことがあってそんな偏見なんて無いみたいだから、結構良い国みたいね」

「ああ、かなり豪快なやつは多いが、美人も多いし、料理も美味い。ちなみにこいつの父親は鉱石を求めて獣人の国に行ったときに母親と出会ったんだ」


 ギルドマスターがそう言うと、サリーは照れたように笑う。ちなみにフォードが気絶して簀巻きにされているから安心したのか犬耳を出していたわ。

 ちなみにそのとき、サリーの父親の護衛として当時、中級だったギルドマスターが一緒に行ってたみたい。

 え? 出会って、人間の国に行ったっていうのは分かったけど危なくなかったかって? 大丈夫よ、王都のほうはかなり偏見を持ってる人はいっぱい居るけど、獣人の国の近くにある農村だと獣人との交流もあるから偏見はまったく無かったみたいよ。

 それで、サリーも母親が亡くなるまではその村で暮らして、時折帰ってくる父親と楽しい時間を過ごしていたらしいのよ。けれど、母親が無くなってからは王都にある家に住むことになって、いろいろと苦労していたらしいわ。獣人の証である耳と尻尾の隠し方や父親を心配させないという気遣い。

 大変だったみたいだけど、父親だけでなくギルドマスターも手伝ってくれていたから、サリーは不自由が無かったみたいよ。それで、今では平穏に暮らすことが出来ているみたいだけど、かなり興奮するとさっきみたいに隠していた耳や尻尾が出てくるようになるみたいなの。


「とりあえず、わかったけど……見られた片方がお口チャック出来るわけがないから、どうするの?」

「問題はそこなんだよなぁ……。もういっそのこと……いや、そのほうが……」

「何だかとっても嫌な予感がするんだけど……」

「ギ、ギルドマスター……?」


 問題となるフォードを見ながら彼女が問い掛けると、何かを考えるようにしていたギルドマスターは彼女、フォード、サリーを見比べつつぶつぶつと何かを呟き始めたわ。彼女はそこはかとなく嫌な予感を感じたわ。絶対嫌な予感がするってレベルでね。

 そう思っていると、気絶していたフォードが目を覚まして「ここはだれ、おれはどこ?」なんて馬鹿みたいなことを口にしていたわ。馬鹿を見る目で見下していると、ギルドマスターが考えていたことを決めたのか彼女たちのほうを向いたわ。


「よし。おまえら、ちょっと獣人の国に行って来い」

この世界は人間と魔族だけじゃなかったのでした。

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