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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
238/496

回想~獣人の国~・6

11/6 サブタイトル変更

 3杯目の飲み物として、お茶と共にお茶請けとして甘いバーナを包んだ焼きマッキーが置かれており、ワタシたちはそれを口にしました。

 蒸らされた皮のマッキーとは違ったモチモチとした食感とバーナの自然な甘み、そしてそれらを統一させる芳醇で濃厚なカスリームが疲れた頭を癒してくれて、頭の中が少しずつ整理されていきました。

 この世界以外に別の世界があって、そこの人間が生まれ変わった……いえ、この世界のゆうしゃに入り込んだ存在が転生ゆうしゃ。

 そして、師匠は転生ゆうしゃだった。……つまり、あの凛々しいというか逞しいというか、何でも出来るみたいな感じの俺様オーラを出していた師匠は別の世界の人間のもので、本当の師匠は……あの怖がりだけど、保護欲をくすぐり、なき顔を見たいと思わせる儚げな少女だったのですね……。

 ああ、そうと分かっていたら、もっと色々と甘やかせて、一緒にお風呂入ったりとか一緒のベッドで寝たりとか、もう姉妹の契りを結んで心も身体も姉妹になって……って、ワタシは何を考えているのでしょうか。

 ……いけませんね、何故だか師匠が居なくなってから……師匠のことを想うと我を忘れるというか、ワタシの中の獣が目覚めるといった感じになっています。自重しなければ……。

 そんな風に思っていると、ライトさんがハスキー叔父さんに質問をしました。


「あの、ハスキーさんの言いかたを聞くと、まるで転生ゆうしゃを嫌っているという風に取れるのですが……嫌いなのでしょうか?」

「そう聞こえましたか? まあ、正直なところを言うと……私は転生ゆうしゃという存在は、苦手……ですね」

「え、そうなのですか叔父さん?」


 思いがけない叔父さんの告白にワタシは驚きながら、叔父さんを見ました。

 そんなワタシへと叔父さんが視線を向け、ゆっくりと語りかけてきました。


「サリー、行き過ぎた知識、行き過ぎた力は周りの人間を恐怖に陥れたりするのですよ。

 例えば、あなたはアリスさんの力に魅せられ彼女を師匠と呼んでいますよね? ですが、別の人が見たらその力は魔族以上の脅威となります。

 ティーガやクロウのときは、魔族という明確な敵が居て、私たちが窮地のときに現れて助けてくれました。だから、彼らには神のように見えたでしょう……いえ、事実神と思っていたでしょうね。ですが、もう一度言いますが……それは魔族が居たからですよ?

 その意味、分かりますよね?」

「……つまり、魔族という明確な敵が居るから師匠たち転生ゆうしゃが強くて本当のゆうしゃとして見られている。

 けれど、魔族という存在が居なくなったら、行き過ぎた力や知識を持つ転生ゆうしゃ……彼らは世界から迫害される……そう言いたいのですか?」


 叔父さんの言葉を元に頭の中で組み上げた言葉をワタシは叔父さんに告げます。

 すると当たっていたのか、叔父さんは頷きました。


「ですが、世界は転生ゆうしゃを必要としており……彼らの持つ知識で新しい発明が生まれて行きました。

 今あなたが食べている焼きマッキーの中に使われているカスリームもその一つです。

 ドブさんも何か面白いことを行おうとしているらしいですが……まあ、あっちは気にしないでおくとして……。

 そして、力も魔族と戦うためには必要なものです。

 現にアリスさんはたった一人でハガネ、ウーツ、ティーガ、クロウの四天王全員を倒しました。けれど、それをこの世界の人たちが知った場合、彼女に感謝すると同時に……恐怖するでしょう」


 叔父さんはワタシに対し静かにそう告げます。

 ちなみに四天王の下りで、ゆうしゃ一行が耳を疑っていますが、返事をする余裕がありません。


「転生ゆうしゃの方たちが、前の世界で何があってこの世界の人間の中に入り込んだのかは分かりません。

 ですが、私は利用するだけ利用して、最後は魔族のように彼らを見るこの世界の人たちが嫌なんですよ……。

 そして――それに気づかずに、遊び感覚で知識をばら撒き、力を示す……そんな転生ゆうしゃたちも苦手なんです」


 そう叔父さんは言って、口を閉ざしました。

 そんな叔父さんに、ワタシは何も言えませんでした。

 いえ、あるにはありましたが……きっと、綺麗ごとでしかないのかも知れません。

 けど……けど、これだけは言います。


「叔父さん、たとえこの世界の人たちが師匠に怯えようとも、ワタシは師匠の下から離れるつもりはありません。だから、そのためにもワタシは……絶対に師匠と再会してみせます」

「そうですか……。ライトさん、こんな姪ですが……人間の国への同行をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「ま、まだ頭が追いつきませんが……、指名手配の件は本当に何とかしてみせます。最悪、そのアリスさんが四天王をすべて倒したということを言っても良いでしょうか?」

「……別に構いませんが、くれぐれも注意してくださいね」


 ライトさんに叔父さんはそう言うのでした。

 こうして、ワタシたち2人は、ライトさんたちゆうしゃ一行に同行して、人間の国へと戻ることが決まりました。

思いのたけをつらつらと書いてみたらこうなりました。


ちなみに話の中のカスリームは、略称にしていますがカスタードクリームです。

まあ、本当のカスタードクリームと違って、この世界の材料で作っているので味に微妙な違いがあるという感じになっています。

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