回想~獣人の国~・4
11/6 サブタイトル変更
お茶を飲んで少しだけ落ち着いたゆうしゃ一行を見てから、話そうとしていた話を再開しました。
「ライトさんたちも国境の村を通ったはずですから、山道の……師匠がチビデ――研究者たちを殴り飛ばした場所も知っていますよね?」
「あ、ああ……、確かルーナたち曰く高度の『聖』魔法が使われたという話だったよね? それとたしか……」
「魔物溜があったって話だよね? でも何時の間にか無くなってて、代わりに花畑が出来てたって……」
「ええ、確かそのはずよ? 聞いた話を照らし合せるとだけど……」
そう言うルーナさんの表情には、本当に魔物溜なんてあったのかと心配になる表情が見て取れており、正直な話……あったのかどうなのかは、ワタシには分かりません。
ですが、その反応を聞きながら、ワタシは予想を口にします。
「その『聖』魔法を使ったのも、魔物溜が無くなったのも……多分、師匠の仕業だと思います」
『『…………』』
ワタシの一言に、誰も返事を返すこと無く黙っていました。
多分、驚く気力がもう無いということでしょうか?
そう思っていると、ゆうしゃ一行の代わりにフォードくんが訊ねてきました。
「……その根拠は何ですか、サリーさん?」
「えっとですね……フォードくん、実は黙っていたのですが……足止めでワタシの家に泊まった日の夜に……師匠が眠っている部屋から物音がして、気になったので覗いたんです。ベッドが膨らんでいたから師匠が寝てると思ったんですが、気になって見てみたら……、そこに師匠は居なかったんですよ……」
そう言いながら、ワタシはあの夜を思い出します。
……決して、添い寝をしたくて待っていたわけではありませんよ? ワタシはまだまともだったはずなんですから……って、そう思えるってことは今のワタシはかなり師匠コンってやつなのでしょうか……?
そんな風に思っていると、ワタシの言葉を噛み砕くようにしてからフォードくんが問い掛けてきました。
「つ、つまり……夜の内に、アリスのやつが魔物溜を消したってことですか? まあ、あいつならやりかねないって言うのはわかるけど……」
「それに、夜警をしていた自警団の人が山のほうが光ったような気がしたって、話もあったじゃないですか」
「…………あー、そういえばどうでもいい話と思ってて聞き流してたけど、そんなことがありましたね……」
師匠が寝ているのを確認して、朝に魔物溜がどうなったかを聞きに言ったときに無くなっていたことに騒ぐ村の人たちの会話を思い出します。
確か、正確に言うと……「お、おら見ただーよ! 夜中に山がぴっかり光ってるのをさー!」でしたよね。
そんな風に思い出していると、ルーナさんとシターちゃんがガクガクと震えているのに気がつきました。
どうしたのかと思っていると……、理由を口にしてくれました。
「あ、あの場所から村までの距離ってかなりあるわよね……。それなのに光ってるというのを分からせるほどの『聖』魔法って……」
「シ、シターたち4人の魔力を掻き集めたとしても足りませんっ……!」
「えっと、2人とも。数値で言うと、どれくらいの魔力を使っているってことなんだい?」
「はっ、はい。残留するほどでしたから、軽く見ても……5000以上は使っていますっ」
ライトさんの質問に、興奮しながらシターちゃんが身を乗り出しながら大声を上げます。
ちなみに身を乗り出したためにライトさんに抱きつく形となり、ライトさんは小柄なのに大層な物を持っているシターちゃんに顔を赤らめているようですが……シターちゃんはまったく気づいていません。
……隣を見ると、ヒカリさんが羨ましいのか嫉妬しているのか分からない表情で2人を睨んでいますが……気にしないでおいてあげましょう。ルーナさんも同じく見守ることを選んでいますし。
●
お茶のお代わりの飲み物として、今度は『水』魔法で冷やされたパイナジュースが置かれ……ライトさんに抱きついていたことを誤魔化すかのように顔を真っ赤にしたシターちゃんが一気に飲むのを見ながら、ワタシは続きを話し始めました。
研究者を殴りつけて、逃げ出した先でミスリルマイマイと師匠が戦いを行い、チュー族の村へと案内されたと言うことを。
「そこで、皆さんも会ったと思いますが、ドブさんとハツカさんと出会ったんです。ああ、ちなみにミスリルマイマイは王城よりもでかかったとだけ言っておきます」
「お、王城より大きいなんて……」
「そういう、凄いモンスターが居るんだ……」
「ミスリルマイマイって、話には聞いてたけど……あんなのを倒したわけ?」
「ド、ドブ……がくがくぶるぶる…………」
そんな風に4人の反応はバラバラでしたが、シターちゃんは大丈夫でしょうか? 何だか今にも気絶しそうな感じになっていますよ?
そう思っていると、ヒカリさんとルーナさんの2人がシターちゃんを慰めており、そのお陰で平常心を取り戻しているようでした。いったいどんな目に遭ったのでしょうね……?
そんな風に思いながら、ワタシはチュー族の村の出来事をサラッと言いました……が、温かい泉の話をした瞬間、ヒカリさんが目の色を変えました。
「えっ!? お、温泉があるのっ!!?」
「おんせん? ……そういえば、師匠も何だかおんせんって言っていましたね」
「公衆浴場も好きだったけど、やっぱり温泉って良いよね。こう、日本人の血が騒ぐというか……あれ? え? え……?」
目を輝かせながら手を合わせて温泉を夢見つつ、ヒカリさんは良く分からないことを口にしていましたが……何故自分がこんなことを言ったのかととても不思議そうな顔をしていました。
そんな彼女を心配したようにライトさんが恐る恐る話しかけてきます。
「ヒ、ヒカリ? どうしたんだい、いったい……?」
「あ、ううん……、変だな。どうしてボクこんなこと言ったんだろう? っていうか、にほんじんってなんだろ??」
「ジンって付いてるから、人間の種類……なのかしら? そういえば、変だって言えば、ヒカリちゃんついさっき近づいてきたドブを脚蹴りしたときも「寄るな、このキモオタ!」って言ってたわよね?」
「う、うん……どうしてだろう? ボク自身分からないんだけど……、何だかこう……全身に鳥肌が立って、蹴らないとって思ったんだ」
そう言って、ヒカリさんは腕を組んで不思議そうに首を傾げていました。
とりあえず、ヒカリのほうはまだ謎です。