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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
235/496

回想~獣人の国~・3

11/6 サブタイトル変更

 この4人の中では一番幼いはずのシターちゃんが、記憶力が良いのだろうと思っているとシターちゃんがワタシに尋ねてきました。


「あの、サリー様。もしかして、シターたちが出会ったボロボロの格好の女性が……」

「多分……師匠だと思います」

「で、順序的に考えると王様への挨拶を終えたアリスが新しい換えの服を探している最中に俺とであって、冒険者ギルドに向かったってわけですよね?」

「あ、そういえば……フォードくんが師匠と初めて会ったんでしたよね?」

「ああ、初めて会ったあいつに、俺は驚かされちまったよ。だって、いきなり魔物溜(モンスタープール)に飛び込むんだぜ?」


 そうフォードくんが言った瞬間、悩んでいた彼らがピタリと動きを止めました。

 ……うん、分かります。ワタシも初めて聞いたときは驚きましたしね……。


「え? あのさ……、今……魔物溜(モンスタープール)に飛び込んだって聞いたんだけど? 気のせいだよね?」

「わ、私にも聞こえたけど……」

「ぼくにも……本当、なのかい?」

「あーうん、その反応……その反応が普通なんだよな……。けど間違いなく本当だぜ……あのとき、俺の目の前から飛び込んだんだからよ」


 彼らの反応に、かつて自分はそうだったと言わんばかりに頷くフォードくんは聞き違いで無いと言うことを言います。

 そして、懐かしむような顔であの時のことを思い出し始めているようでした。


「いやぁ……あのときは本当にびっくりしたんだよな。だってよ、どう見ても新品の冒険者の服だけを着た丸腰の女の子……酷く言えば、ぬくぬくと育ったお嬢様が冒険者ごっこしてるんじゃないのかって思ったぐらいだったってのに、何も考えずに魔物溜に入ったんだぜ? そんなのに遭遇して、死なれたら寝覚めの悪いってもんだろ?

 だから、飛び込もうかどうかって悩んでたところで、いきなり魔物溜の中から凄い音と一緒に何かが飛び出して行ったんだ。で、何が起きたのか分からなかったけど、何かが飛んで行った方向を見るとさ……山に穴が開いてたんだよな……で、魔物溜の中に居たアリスは怖い目に遭ったのかボロボロの格好で呆然としゃがみ込んで居たんだよ……ん? どうかしたのか?」


 フォードくんが懐かしそうにそのことを言い終わったとき、ワタシを含めハスキー叔父さん、ルーナさんが頭を抱えており、シターちゃんは「えっ、ええっ?」と驚きながらキョロキョロとして、ヒカリさんはにわかに信じられないという表情を取って、ライトさんは……唖然としていました。

 そして、何も分かっていないフォードくんにワタシは言うことにしました。


「……フォードくん、それはどう考えても師匠が山に穴を開けた張本人じゃないですか……」

「え? けど、アリスは何も知らないって言ってましたよ?」

「ええ、師匠はかなり抜けているところがあるのは否定しません……けど、その中で一番怪しいのは師匠じゃないですか! ああいう街道沿いに出来る魔物溜なんて、基本的にはスライムとかばかりですし……」

「…………い、言われてみればそうですよね? じゃあ、本当にそのときに【無敵の盾】を倒したのかよ……」


 その一言で、部屋の中が完璧に凍りついたのをワタシは感じました。

 特に、ゆうしゃ一行は信じられない言葉を聞いたと言った表情で固まっていました。

 ワタシとフォードくんはもう知っていましたが、ハスキー叔父さんのほうを見ると、驚いた様子が無いので……多分ボルフ小父さんからの手紙に書かれていたのでしょう。

 そして、逸早く現実に戻ってきたらしいヒカリさんが恐る恐るワタシに訊ねてきました。


「え、えーっと……何か今さ、【無敵の盾】って聞こえたんだけど……気のせいかな?」

「……い、いえ、事実です。一応ワタシとフォードくんも(ギリー)を吐き出すはずの機械が師匠が倒したモンスターリストを吐き出し……そのリストを見たので……」


 ちなみに、ワタシの場合は吐き出した紙をチラリと見ていただけでボルフ小父さんたちについて行くことになって、そのときにモンスターリストを読んで知ったのですけどね……。

 そんな懐かしいけど、三月も経っていない出来事を思い出していると、ヒカリさんは気づいてはいけないことに気がつきました。


「ん……、ちょっと待って。確か、【最強の矛】ハガネが王都に攻め込んできたのって、【無敵の盾】が倒されたから、なんだよね?」

「…………そ、そうですねー……」

「ソウダナー……」


 何時しかじ~っと言う感じに、ヒカリさんとルーナさんに見られながら、ワタシたちは自分がしたわけではないのに罪悪感を感じつつ、目をそっと背けました。

 そして、来るであろう言葉にこっそりと身構えます……。

 はい、さんはい。


「「王都が危なくなった、そもそもの原因はそいつかーーーーっ!!」」

「「は、はい……」」


 大声でそう言われて、ワタシたちは縮こまるようにして頷きました。

 けれど、フォードくんは師匠をこれ以上悪く言わせないようにしようと考えたのか、彼らへと爆弾を落としました。


「け、けど、王都が襲われた原因はアリスだけど、救ったのもアリスだからそれでチャラってことで……」

「「「「え”っ?」」」」


 そのフォードくんの言葉に、ゆうしゃ一行は皆驚きを隠せなかったのか、そんな風に声を漏らしました。

 そして、恐る恐るシターちゃんが小さく手を挙げて質問をしてきました。


「あ、あの……フォード様が言った救ったのもそのアリス様というかたと言うことは……、シターたちが危なくなったときに戦いに介入してきたあのシーツで全身を隠したかたでしょうか……?」

「あと胸がでかいのか分からないけど……、シーツ越しに何故か胸辺りが異様に盛り上がっていたのよね……」

「いや、俺とサリーさんは避難作業していたから良く知らないんだけど……、でもアリスのことだから正体隠すついでに胸にアップでも詰めてたんじゃないのか?」

「フォ、フォードくん……地味にありそうな気がするのでそれは止めて下さい……」


 この国に来て、お風呂に入ったりしていたときに、師匠が恨みがましくワタシの胸を見ていたことを思い出しながら、ワタシは泣きそうになりました。

 ですが、今はそれは置いておきましょう。


「まあ、そんなこんなで、人間の国に居たら師匠は自分がハガネを倒したことが、ばれるかも知れないそう考えて、この国へと向かうことを決意したそうです。ですよね、叔父さん?」

「はい。ですが、この街に来るまでにまだ色々とあったんですよね?」

「はい、色々ありました。初めに、ワタシの住んでいた村の獣人の国に向かう唯一の道に魔物溜が出来て立ち往生をすることになったんです」


 そう言って、ワタシはそのときのことをライトさんたちに話し始めました。

 ちなみにライトさんたちは話に追いつけていないようで、ちょっと頭を落ち着かせるために入れて貰ったお茶に口をつけていました。

……なんか気づいたら、他人から見たアリスな状況の話になってる?

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