回想~獣人の国~・2
11/6 サブタイトル変更
職員のかたが一杯目のお茶を人数分用意し、それぞれの前に置いてからハスキー叔父さんの話は始まりました。
まあ、簡単に言うとすれば……、忘却草を手に入れる依頼をこなした貸しを返してもらうこととして、ゆうしゃ一行が人間の国へと帰る際にワタシたちの同行、そして人間の国でのワタシたち指名手配の撤回といった内容でした。
ゆうしゃ一行はそれを聞き終え、空になったお茶のカップを下ろしてから叔父さんを見ました。
「話は分かりました。ぼくたちに同行してサリーさんたちを人間の国へと連れて行くことは可能です。ですが、今のぼくに王様が耳を貸してくれるとは思えないので、お二人の指名手配を撤回させてもらえるかは……その」
「やはり難しいですか……」
「っていうかさー、何であんたら指名手配になっちゃったんだよ?」
苦い顔で返事をするライトさんに、叔父さんは頷きます。そして、ヒカリさんがそれを言いました。
と言うか、指名手配にはなっている。けれどなった理由は知らされていなかったのですね。
そう思いながら、ワタシはルーナさんに尋ねてみることにしました。
「あの、ルーナさん。人間の国でのワタシたちの指名手配ってどんな罪状になっているのですか?」
「え? そうね、確か………………ああ、思い出した思いだした。『貴族への暴行』『研究の妨害』『王国騎士への暴行及び任務の妨げ』だったはずよ」
「そうですか……。というか、あのデブ……貴族だったんですか」
ルーナさんの口から聞いたワタシたちの罪状を初めて知り、ワタシは顔を下に向けました。ちなみに最後は誰にも聞こえないようにポツリとですよ。
そして、その行動が落ち込んでいるように見えたらしく……ライトさんが詳しい話を聞き始めてきました。
「えっと、サリー……さん。そもそも、どうしてそんな指名手配をされるような真似を?」
「はい、その……実は」
そう言って、ワタシは暴行された貴族と騎士が自分と自分の父親を馬鹿にされたということと、山道を封鎖しようとしていたと言うことを語りました。
それを聞いていたライトさんたちの顔が呆れ顔になって行くのが分かり、それを聞き終えるとヒカリさんが凄く苛立った表情をしているのに気づきました。
「ああ、うん、ボクは親兄弟は居ないはずだから、その気持ちは分からないけど……ライトたちを馬鹿にされたら怒るよ!」
「というか、開通し直された山道を封鎖するって……研究者でもあそこまでの権限が無いわよね、普通……」
「は、はいっ。最高でも、少しだけ道幅を狭めて交通を規制するぐらいが妥当なはずですっ」
「そうなんだね……、うん。これはちょっと王様に言ってみるよ……けど聞いてくれるかは分からないけどね……」
そう言って、ライトさんは落ち込むように項垂れました。信頼を無くされてしまってるのでしょうか……。
そんな風に思っていると、突然ルーナさんが話しかけてきました。
「けど、サリーさんやフォードくん、2人は国の研究者がどういう存在かを理解してるから、殴りつけるなんて馬鹿みたいなことをしないわよね? じゃあ、殴りつけたのは……死んだって言う人間の女の子がやったの?」
ルーナさんがそう言うと、ワタシはどう言うべきかと判断に困って目を泳がせました。
その反応で分かってしまったらしく、ルーナさんがジッと私を見てきました。
「……サリーさんたち、何か隠してるわよね?」
「え? そうなのか、ルーナ。ぼくはそういう風には……いや、こういうのは君のほうが詳しいはずだから、君を信じるよ」
「ありがとう、ライくん。それで……あなたは何を隠しているのかしら? もしかして、その女の子のこと?」
「そ、それは…………」
正直、どう言えば良いのかワタシは悩みました。
だって、彼らの中では死んだ人間の女の子と言うイメージしかないのですから……。ですが、その実体は……。
困ったように、ワタシは助けを求めるように叔父さんを見ました。
その視線に気づいたらしい叔父さんは、考えるように目を閉じ……一分もしないうちに目を開けました。
「……サリー、もう良いと思いますよ。それに彼女……アリスさんの行ったことを言ったほうがこの先問題は起きないと思いますよ」
「叔父さん……いえ、分かりました。お話します……、フォードくんもお願い出来ますか?」
「は、はい……分かりました」
師匠を自分たちが助かるための言い訳にするのが嫌でした。ですが、黙っているわけには行かない状況だと判断して、ワタシは全てを話すことにしました……ですが、実際に目撃したわけではないのでワタシたちの予想が混じっていると思います。
そう確認を取るように言うと、ライトさんたちは不思議そうに首を傾げました。
「えっと、その女の子……アリスさん、でしたっけ? 彼女はいったい……?」
「師匠……アリスさんは、人間の国のゆうしゃの一人です」
「え?! ゆ、ゆうしゃなの!?」
「ライくんと同じゆうしゃの一人だったの……」
「はい、確か……俺が初めて会ったときにゆうしゃとして王様に挨拶に行ったらしいから……あの日だな」
そう言って、フォードくんは驚くゆうしゃ一行へと、思い出すようにそう言います。
すると、シターさんがあっ、と何か思い当たったような声を上げました。
「どうしたんだい、シター?」
「あ、あの、ライト様っ。その日って、シターたちが遠出をして帰ってきて王様に報告をした日ですよね?」
「そうだったかい? ちょっと覚えていなくてさ……いや、でもその日って――そうだっ! ハガネが王都に襲い掛かってきた日じゃないか!?」
「そうですっ、それで……その報告に行ったときに、凄くボロボロの服を着た女性とすれ違いませんでしたか?」
「「「え? 会った……ような、会わなかった……ような……うーん……」」」
そうシターちゃんは言いましたが、他の3人は覚えていないらしく唸っていました。
そして、隣ではフォードくんが「あ、あれだけボロボロの格好で城に行ったのかよ……」と言って呆れていました。