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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
海の章
232/496

護衛任務

 新章開始です。

 ※サリー視点です。

 魚人の国。

 そこは、国の面積の8割が()と呼ばれる、水の領域が埋め尽くす国。

 そこに住む種族のほとんどは、海に適応した種族であり……魚の特徴を持った魚人と呼ばれる種族が主立っていた。

 ちなみにそれ以外の種族も居るが、その大半は冒険者としてこの国に訪れた者や行商を行うために訪れた者ばかりであった。

 そして、この国の名産はやはり魚である。それも、海で獲れた魚だ。

 広大な海を自由に泳ぎ、引き締まった魚肉は程好い歯応えを持っており、その鮮度から生で食べても美味しいとさえ言われていた。……ちなみに魚人たちは生魚を食べる習慣はあり、この国に住もうと決心したそれ以外の種族の殆ども生魚の魅力に取り付かれた者ばかりであった。

 そんな魚人の国で一組の冒険者がある依頼を受け、その依頼をこなそうとしているところから、この話は始まった……。


 ◇


 ザアザアと風を切るようにして、ワタシたちが乗る客船が滑るようにして海を渡っていく。

 ワタシはそれを船尾のほうで眺めながら、周囲に気を配っていました。

 ギャアギャアという上空を飛ぶ鳥が泣き声を上げる中、その内の一匹がこちらへと落ちるようにして下りてくるのが見えました。

 そして、それを皮切りに鳥が一気に下りてくるのが見えます。


「一匹……いえ、二匹、船尾へと下りてきます! こちらは任せてください!!」

「了解! 右舷、三匹確認!! 誰か、頼む!!」

「任せて!! 私の魔法で撃ち落としてあげる!!」

「左舷、誰か頼む!!」

「船首のヤツ、余ってたら行ってくれ!」


 風に声が負けないように大きくワタシが叫ぶと、同じように色んなところから声が聞こえてきます。

 そして、撃ち出された矢や火の玉見える中、ワタシはよーよーを手に取ると、急降下してくる鳥目掛けて打ち出しました。

 よーよーの丸いホイールは鋭く赤い軌跡を描いて、鳥の眉間に命中し……頭が砕ける感触を感じ、雄叫びを上げる暇も無いまま鳥は海へと落下して行きました。

 その光景を見たからか、一緒に迫ろうとしていた鳥が空中で急ブレーキを切り即座に上空へと飛び上がって行きます。


「逃がしません。……《サンダー・レイン》!!」


 ワタシがそう叫ぶと、手から神の光……雷が放たれ、飛び上がろうとしていた鳥に命中して、ビクッと震えて煙を上げながら海へと落ちて行きました。

 海に落ちた鳥たちへと群がる魚たちを見てから、ワタシは他の場所は大丈夫かと見回します。

 ですが、心配は要らなかったらしく……、船尾から見える中で海上に落ちて行く鳥が何匹も見えました。

 ……まあ、矢に撃たれたり、火達磨になったりしていますけどね……。

 そして、ひと際大きな鳥が船首のほうに飛んでいくのが見えましたが……船首に行ったのは失敗でしたねと、心で思いました。

 何故なら船首には……。


「でぇぇぇりゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

『KKWWWWWWWWWWWWWWWWAAAAAAAAAAAA!!?』


 船全体に届くかの声量が聞こえたと同時に、鳥の鳴き声が周囲に響き渡りました。

 ただし、それは断末魔として……ですが。

 周囲からの歓声の声が響く中で、鳥が斜めに斬れて行くのが見えました。


「……ボスが倒されたからか、一斉に逃げて行きますね」


 そうワタシが言うように、蜘蛛の子を散らすかのようにして、客船を狙っていた鳥はばらけながら逃げて行きました。

 それを見届けてから、周囲からの襲撃に注意しつつその場で待機して……甲板の上に篝火が焚かれ始める頃、客船は目的地である港町へと到着しました。

 波止場へと客船を付けると、橋が架けられ……客たちが下りて行くのが見えます。

 親子連れ、旅人、行商目的のほろ馬車、貴族の物であろう豪華な馬車そんな様々な客が降りていきます。

 ちなみに客船が大きいのは、乗る客の量も多いためと言いますが、馬車なども積載するためでもあります。

 そして、客の小さい女の子……家族客の娘だと思われる子がワタシに気づいたらしく、楽しそうに手を振っていました。それに対して、ワタシも手を振り返しました。

 手を振り替えされたことが嬉しかったのか、女の子はとても嬉しそうでした。


「お疲れ様、サリーさん。何とか無事に終わりましたね」

「フォードくんも、頑張っていたじゃないですか。お疲れ様です」

「いや、俺なんてまだまだですよ。っと、俺たち全員を依頼人が呼んでいますよ。多分ですけど、報酬の話だと思います」


 そう言ったフォードくんに礼を言ってから、ワタシも彼の後を付いて依頼人である船長の下へと向かうことにしました。

 まあ、呼ばれた理由はフォードくんの言うように報酬支払いと、帰りの船の護衛をまたしてもらえないかというお願いでした。

 ですが、申し訳ないのですがそちらはお断りさせていただきました。


「そうか……けど、気が変わったら何時でも来てくれ! しばらくは此処に居るからよ!」


 報酬を受け取りながら、船長はそう言ってワタシたちを豪快な笑顔で見送ってくれました。

 ……ああいう性格、好きですね。

 そう思っていると、フォードくん以外の同行者が勿体無さそうな風にそれを口にしました。


「あーあ、別に往復ぐらい良いじゃない。真面目なんだよ、サリーはさー」

「そんなことを言ったらダメよ、ヒカリ~? わたしたちのリーダーであるサリーの判断なんだから」

「わかってるってばー。でもさ、ボクら今あまりお金ないじゃん」

「そ、それはそうですが……でも、サリー様が探している人物の手がかりが見つかったなら、行かないわけにもいきませんよっ」


 頬を膨らませるヒカリ、そんな彼女を嗜めるルーナ、ワタシのことを思っているシター……ゆうしゃライト様の従者であるはずの3人。

 そんな3人が何故、ワタシたちと一緒に居るのか……その理由を語るには、3年前に遡ることになります。

 彼女たち3人とワタシたちが何故同行しているのか……、その理由をワタシは思い出し始めました。

 ご意見ご感想お待ちしております。

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